第750話 合同授業開始!ゼフィルス上級装備お披露目!




 合同授業とは、つまるところ実技だ。

 一緒に体育をやります、というのに少し近いかもしれない。


 迷宮学園の授業なのでもちろんダンジョンに行きます!

 しかし、今回はその前段階、ダンジョンへ行くにしても即興でパーティ組んで何の準備もしないままダンジョンに突入なんて真似はしない。


 まずは交流会を兼ねた模擬戦から始めて相手を理解する。これは将来、見ず知らずの人物とダンジョンに潜ることなどを想定している授業だ。

 また、お互いのクラスの人たちと交流を深めてもらうというのもこの合同授業の趣旨だな。


 補足すると、1組から3組までの90名は今後も学園の顔になる可能性が高く、こういった交流が後々社会に出た後に重宝することもある。

 みんな積極的に他のクラスとの交流が推奨されていた。


 場所は〈戦闘3号館〉の練習場。

 そこに、装備を装着した学生たち90人が集っている。

 おおう、なんて壮観な眺めだ。

 実際に装備を着ている人たちが多く集まっている光景は、うん、とてもテンションが上がるな!


 そんな俺だったが、実は校舎を出る段階からかなり注目されていたりする。


「お、おいアレは……」


「ああ。1年トップのゼフィルス、だが、いつもの装備じゃない!?」


「新調したのか!? あれほどの良装備を!?」


「確か、元着ていたものは上級装備に近い装備だったはずだが、それを変えるということは、まさか……」


「え、ちょっと待って。それより前の装備ってどうなったの? ひょっとして売りに出されてたり!?」


「何!? それはすぐに確保しなければ! ――しかし授業が、くっ」


「何あれ、ゼフィルス君がかっこいいんだけど!」


「な、なんだか豪華! え? 練習用の装備じゃないよね? もしかして実戦用だったり?」


「私たちが見たこと無い装備で勇者君が来場。至急調査されたし、繰り返す――」


 うむ。もしかしなくてもこの〈勇銀装備〉のことだろう。

 俺の装備はダンジョン週間前と比べ、アクセサリー以外の全ての装備が一新されているからな。

 そして、実は昨日完成したため、お披露目するのは初めてだったりする。

 それはギルドメンバーでも変わらず。


 案の定、みんな揃って出てきたギルドメンバーズが俺の装備を見て驚嘆していた。

 いち早く我に返ったのは我らが王女であるラナだ。


「ちょ、ちょっとゼフィルス何よその装備、かっこいいじゃない!」


 ラナはいつも俺の欲しいセリフを言ってくれる。

 俺はそんな言葉に応えるため少し映えるポーズをキメて答えてやるんだ。


「だろ? 上級ダンジョンに行くために用意したんだ。昨日完成した出来立てほやほやだぜ」


 ざわざわ、ざわざわ。

 俺が答えると周りのざわめきがさらに高まった。


「上級ダンジョン、上級ダンジョンって言ったか今!?」


「ええ!? まさか〈キングアブソリュート〉と合同で挑むのか!?」


「バカ、そうじゃないだろ。きっと〈エデン〉単体で上級ダンジョンに入ダンするって意味だよ」


「1年生ギルドが上級ダンジョンに入ダンする宣言!? あの勇者君装備をチェンジしてまで!? え、本当に本気!?」


「え? 待って、ええ? 勇者君はもうそこまで足を進めていたの!? ということはあの装備ってまさか、上級装備!?」


「調査班調査班、至急調べてほしいことがあります。あの勇者君の装備について知っている情報をはよっ、うおおお、文字を打つ手が震える!!」


「勇者君が上級ダンジョンに入ダンするとメンバーと相談中! 準備を進行している様子!」


 なんだか注目を集めてしまったな。中には〈学生手帳〉をものすごい勢いでポチッている人もチラホラいる。

 これだから勇者って辛いぜ。ははははは!


 そんなことを考えていると、続々とギルドメンバーがやってきて俺を囲ってしまう。

 そしてシエラが代表して問うてきた。


「ゼフィルス、それが例の〈勇銀装備シリーズ〉?」


「おう。マリー先輩たちがついにやってくれたぜ。どうだこの装備、良くないか? 〈勇銀装備〉を俺に合わせて色と装飾を整えてくれたんだ」


 その辺さすがは〈ワッペンシールステッカー〉ギルド。〈デザインペイント変更〉はお手の物で、仕上げる際、俺個人に合わせてその辺も作りこんでくれたのだ。


「そう、ね。とてもその、かっこいいと思うわ」


 シエラが面と向かい、下から上まで視線を巡らせて、最後に俺の目を見つめて言っていた。

 少し照れるな~。

 その後もどんどんギルドメンバーからの賛辞が届く。


「はい。ゼフィルス殿のかっこよさが一段と増した気がします」


「んんん、これ、強い」


「ついに完成したのだな。うむ、凛々しいと思うぞ」


「ゼフィルスお兄様すごくかっこよくなっているのです! それにパワーアップした感じがするのです!」


「実際凄まじい性能なのでしょうね。あの〈天空装備〉もまだまだ現役で使えたはずですのに変更するほどの性能のようですし」


「それでゼフィルス殿は例の〈天空装備〉はどうしたのですか? 誰かに使ってもらいますか?」


「し、シズ!? それはダメなのデス。なんだか不穏な感じがするのデスよ!?」


「そ、そうですシズさん。ゼフィルスさんが着た装備を使いまわすなんて、破廉恥ですわ!」


 エステル、カルア、リカ、ルル、シェリアが装備についてとても褒めてくれた。

 うむうむ。俺もな、見た目からパワーアップした気がするんだ。〈天空装備〉のバージョンアップ品と言われても頷きそうな見た目だしな。

 しかし、シズの一言で一部がざわめく。パメラとリーナがちょっと待ったをしていた。


「はいはい。ゼフィルス君装備を売るときはこのミサトを通してね、とんでもない利益をお約束するよ!」


「ゼフィルス君の装備がもらえると聞いて!」


「ちょっと気になるよね、お値段はいかほどなの?」


「身内価格でどうか一つ御一考いただけないだろうか?」


〈天空装備〉が狙われている! ミサト、仲良し三人娘のサチ、エミ、ユウカがなんか言っているが、アレは目が本気じゃないか? 今は俺の装備を見て? ねえ、これどうよ?

 あと〈天空装備〉はドロップしない限定品なので売らないよ?


「ラクリッテちゃん、ゼフィルス君かっこいいね。確か昨日も一緒にダンジョンだったんでしょ? その時はまだ〈天空装備〉だったんだよね?」


「は、はい。なのでノエルちゃんを差し置いて黙っていたわけでは無いんですよ!? わ、私も初めて見ました。そのかっこいいです」


「これは勇者ファンとしては垂涎だよねぇ。ああ同じ組でよかった! 同じギルドでよかった! 私、一足先にゼフィルス君の新装備を拝見しています! マリアちゃんごめんね」


 ノエル、ラクリッテ、トモヨはなんだかやり取りに熱が入っている気がするな。

 でもその目は俺の装備を見て逸らさない。

 うむうむ、これくらい熱心に見てもらえると嬉しい!


 そんな感じで新装備をお披露目していると、フィリス先生他6人の教員の方が来たことで、授業が行なわれることになった。


「あら、ゼフィルス君装備を新調したの? かっこいいわね~」


「ありがとうございますフィリス先生!」


 フィリス先生からも褒められてしまった!

 とても嬉しい!


 一つ咳払いしたラダベナ先生が代表で前に出て、これからのことを説明していく。


「今回の授業は模擬戦だよ。まずは個人戦、続いて団体戦を予定している。保健医の【ドクター】シトラス先生にも来てもらっているから安心して戦闘不能になってきな」


 戦闘不能になるのはいやだ!

 ふふ、負けなければいいのだよ。


 そんなアホなことを考えながら話を聞いていく。後ろの白衣を着た先生が保健医の人だろう。若い女性の先生だ。


 丁寧で優しい治療で毎日100人の戦闘不能者を復活させているという話から、ボディブローの一撃で死ぬ寸前の患者の命を救った話まで、数々の逸話を持った優秀な保健医さんとのこと。なお若い女医さんでもあり、治療を受けて心絆こころほだされた貴族の学生からアプローチを受けまくっているという、学園でも寮母さんに続く貴族男子に人気の先生でもある。


 学生、特に男子たちのテンションが盛り上がった。


 俺は保健医には掛かったことは無いので初めて会ったが、ハンナは何度かお世話になったことがあるらしいので噂だけは聞きかじっていたんだよな。


「まずは2組と3組から始めようか。呼ばれたらフィリス先生のところに来な。まずは2組のアディと3組のナイヴス」


 む? 「熊人」同士の模擬戦だと?




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る