第708話 ギルドハウスの改装相談! 生産職集合!
「やっぱここに鍛冶場を造って、こっちには錬金工房をやな――」
「それですと大広間を削らないといけません。〈エデン〉は戦闘職がメインなので――」
「ああそっかぁ、失念しとったわ、ならこうして――」
「――すると店の内装はこんな感じやな」
「いやマリー姉、武器やアイテム様々な種類を売るんならこうした方がええんとちゃう?」
現在マリー先輩、ハンナ、アルルでギルドハウスの内装会議中。
〈エデン〉は戦闘職がメインのギルドだ。
しかし、その活動はダンジョンが中心なので、ギルドハウスの店の運営は生産職に任せても良いとギルドメンバーから多数決で可決されている。
とはいえ完全に生産職ギルドのような内装ではいけない。ちゃんとみんなのギルドハウスであり、みんなが帰るべきギルドの家であるべき、というのがハンナの主張だ。
生産職の特化内装へ舵を切りそうになるマリー先輩を制止して、ちゃんと希望を伝えていた。
その辺、ハンナは他の生産職と感覚が違うよな。
ハンナは当初から戦闘職の俺たちに混ざって生産そっちのけでダンジョンに潜っていた経緯がある。おかげで戦闘職の欲しがっている物や、戦闘職の気持ちが分かるようなのだ。
アルルは完全に生産思考なのでハンナがいい舵取りになっているな。
マリー先輩はアドバイザーとしての立ち位置で色々アドバイスをしてくれている。
「戦闘職が欲しがる物を置くとしたら、内装はこんな感じでしょうか?」
「うーん、そこはマリアはんの意見が必要やな。うちはもうわからんわぁ」
「アルル、ギブアップするには早いで。ええ勉強になるから考えな」
ただ、ハンナはアイテム生産職。いや厳密に言えば結構幅広く色々作れるのだが、メインはアイテムだ。故に、店に装備棚を置いたりする内装は経験が乏しく判断が付かないようだな。
それにハンナとアルルのメインは生産だ。店の営業は【マーチャント】のマリアたちにも任せようと思っている。ハンナのパーティメンバーも働く予定だ。
内装なんかは大まかに決めてしまい、実際にやってみてからその都度微調整するでも有りだと思う。
アルルは生産しかしてこなかったので販売や売子に関してはお手上げの様子だ。
しかし、そのために現役のプロを呼んだのだ。
「ほんならこうしてみてはどうや? 基本的に消耗品言うんは店によって大体質が決まってんねん。信用と同じでなぁ。せやから見本のポーションなんかを1本だけ飾っておき、購入するときは売子はんに注文してもらうんや。そしたら売子はんは注文通りにアイテムを用意してお客はんに渡せばええ。店内のスペースも確保出来るしその分装備を多く置けるで。ついでにお客はんを並ばせず番号札を渡しておけば列の解消にも繋がるわ」
「あ、なるほど~!」
マリー先輩の提案にハンナが唸る。
確かにポーションは同じ商品を店内に並べておくとスペースをすんごく取るんだよな。
注文票みたいなのに書いてもらってその都度商品を〈
さらにはレジ待ちの列も問題視されていた。何しろ夏祭りにあの列をハンナは経験しているからな。それも番号札という方法で、お客さんが持って来た注文票と引き換えに数字が書かれた番号札を渡し、準備が出来次第お客さんを呼ぶ。
そうすることで列の解消も狙えるとマリー先輩のアドバイスだ。
さすがマリー先輩。あの見た目でも上級生!
「なら、店の規模はこれくらい、ですか?」
「うーん、せやったらやっぱ鍛冶場をギルドハウスに造るんはやめておいた方がええんとちゃう?」
「スペースだけ考えたらそうや、だがこれは兄さんの希望なんや」
「ゼフィルス君の?」
そこで3人の視線が俺の方へと向く。
そう、俺は現在〈アークアルカディア〉所属のアルルの鍛冶場を、このギルドハウスに造ろうとしていた。その理由がだ、
「ギルド部屋よりギルドハウスに設置出来る工房の方が質がいいんだよ。これからアルルが上級職になるにあたって鍛冶場もグレードアップしなくちゃいけない。だがギルド部屋では設備的な限界があるんだ」
「あ~そうだよね。私も良い物作るために3年生の錬金工房を使わせて貰ってるから分かる!」
俺の理由にハンナが納得したようにフンスした。
マリー先輩も頷いている。
そう、実はギルド部屋には施設や設備のグレードに限界があるのだ。これがDランク以下とCランク以上の格差。ギルドハウスではこの設備の限界を引き延ばして、より良い設備を造る事が可能になるわけだ。マンションと一戸建て、どちらが改装に向いているかという話だな。
故に俺はアルルの鍛冶場をどうしてもギルドハウスに設置したい。
だって上級職の鍛治師ってリアル〈ダン活〉にいないんだもん。外注出来ないから自分で全部用意しなくちゃいけない。
「ゼフィルス兄さん、そんなにもうちのことを考えてくれていたんか!」
「ま、まあな」
アルルがキラキラした目で感銘を受けていた。
アルルのためではなく、全ては上級装備のため、とはとても言えない。
いや、アルルのためと言えばアルルのためだけどな。のびのびと鍛冶をしてください。
「ほな、意見も出揃ったことやし、内装決めんで、これから外装も決めなアカンのやからな。テキパキいくで」
「はいー」
「マリー姉よろしゅう~」
それからマリー先輩が主導して内装を決めていった。
1階は大部屋、店、鍛冶場、シャワー室を造り、2階は錬金工房、調理部屋、倉庫などを設置。
〈エデン〉は戦闘職のギルドなので素材の買い取りはほんの一部だけと縮小し、その分店に棚を多く
マリー先輩のギルド〈ワッペンシールステッカー〉のように買い取り用の個室なんかは無いが、その分生産設備を一番良い物にした。
ハンナもアルルも喜んでいたよ。
ちなみに調理部屋も
「こんな所やなぁ。ほんとに寝泊まりするための部屋なんかはいらんのかいな?」
「いらないだろ。いらないよなハンナ、アルル?」
「うん。着替えくらいで十分かな。今までと変わりませんから」
「鍛冶はむっちゃ汗かくからシャワー設備の設置は助かるで、それだけあれば十分や」
「じゃあ、仮眠室は無しでええな。これが新生ギルドの価値観か~。加入したときからギルドハウスのありがたみに蝕まれたうちらじゃ考えられへんなぁ~」
なんだかマリー先輩が何かを堪えるかのような顔をしている。
そういえばマリー先輩のところではギルドハウスで寝泊まりもしているらしいからな。眠たげな先輩、メイリー先輩とか超寝てるし。
どうやら価値観の違いにおののいているようだ。
それからマリー先輩が大体の内装を考えて図面を描いてくれ、アドバイスまでしてくれた。マリー先輩には感謝しか無い。
「改装自体は申請したら2日くらいで出来るかんな~」
「おおきにマリー姉~」
「助かりました、マリー先輩」
アルルとハンナがお礼を言ってマリー先輩が先輩らしく片手をあげて礼を受けていた。
この姿を見るとマリー先輩も先輩なんだなぁと実感する。
おかげでギルドハウスの叩き台が出来た。あとはギルドメンバーに相談し細かい箇所を詰めて学園に申請すれば良いだろう。主にギルドハウスの店構えなどだな。
「さて兄さん、例の物、もらおうか?」
さて、続いてはマリー先輩に渡す上級装備のレシピだな。
ふっふっふ、マリー先輩の度肝を抜いてやる!
知っているかマリー先輩。
上級レシピで作製するにはな、上級職にならなくちゃいけないんだぜ?
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