第690話 新1組! 男子のコミュニティが急がれる!




 サターンたちを見送り、新しい〈1組〉に移動した俺たちは教室に入室する。

 すると、すでにほとんどのギルドメンバーが集まっていた。


「おはようみんな、今日からよろしくな!」


 挨拶は基本。


 教室中の視線が俺一点に集中したのを感じる。


「やっと来たわね、遅いじゃない! おはようゼフィルス」


 真っ先に挨拶してくれたのはラナだ。大体の場合ラナが最初に挨拶を返してくれる、そんなお約束ごとみたいな感じが出来ていたが、新クラスになっても健在らしい。


「おはようゼフィルス、今回も同じクラスね。またよろしくね」


 続いて挨拶してくれたのはシエラ。

 なんとなくニュアンスから俺と同じクラスで嬉しい雰囲気が伝わってきた。俺もシエラとまた同じクラスで嬉しいぞ。「こちらこそ、またよろしくなシエラ」と返しておく。


 その後も元〈1組〉のメンバーを中心に続々と挨拶がされたため返していった。

 特にギルドメンバーは真っ先に挨拶に来てくれるため中々教室の入口から中に入れない。

 しかし、俺たちの後ろから筋肉の大男が現れたためその足止め(?)も終わる。


「おお、リーダーセレスタン、そしてグランドマスターゼフィルスよ。聞いてほしい、筋肉たちとバラバラになってしまったんだ」


 そしてちょっと悲しそうにそう言ったのは、この〈1組〉で唯一の中位職【筋肉戦士】のアランだ。何気にアランが〈1組〉に選ばれていた事に驚きを隠せない。

 ってちょっと待て、なんだグランドマスターって。


「アランもおはよう、グランドマスターってなんだ?」


「俺たちのリーダーセレスタンの主だからな、グランドマスターと呼ぶのが筋だろう?」


 筋だろう? ではない。

 よく分からないぞその理屈。しかし、まあいいか。別に悪い名前じゃないし。


「アラン、おはようございます」


「セレスタン、おはよう。早速だが聞いてくれ、筋肉が、筋肉がなぁ――!」


 セレスタンがアランに捕まってしまった。

 クラス対抗戦からアランはセレスタンと仲が良いからな。

 しかし、アラン以外の筋肉4人は残念ながら〈1組〉に残れなかった。アランはそれが悲しいのだろう。


 ちなみにだが、つい先日アランたちのギルド〈マッチョーズ〉は解散、いや〈筋肉は最強だ〉ギルドに吸収合併され、今は無事Bランクギルドに加入したらしい。これで【筋肉戦士】30人が加入しているギルドが出来上がってしまった。超ヤバい。

 しかし本人たちは至って楽しそうだったので皆何も言わない。暑すぎて近づけないとも言うらしいが。


 俺はセレスタンとアランを見送り、ギルドメンバーの女子にトモヨを連れて行き、仲良くしてほしいと紹介していると、今度は男子から話しかけられた。


「ゼフィルス」


「おおメルト。……どうしたんだその状況?」


「あんはんがメルトはんとミサトはんのマスターですかぁ?」


 声に反応して振り向いた先にあったのは、なぜか左にメルトの腕を、右にミサトの腕をギュっと抱きしめた狐人の女子がいた。

 すげぇ仲良し感が伝わってくる。両手に花? いや片方はメルトだが。


「ちょっと聞いてよゼフィルス君、このハクがメルト様を掴んで離さないの! なんか言ってやって! というか腕、離して」


 おお、ミサトがいつになく強い口調だ。なんだか念っぽいものを感じるぞ。


「つれないこと言わんといてやミサトはん。うちはこんなにメルトはんもミサトはんも大好きやのに」


「ちょ、くっつきすぎ! ウサ耳にすりすりしないで! 離してー」


 ハクがミサトの腕を引き寄せてさらにくっついた。ミサトは耳をぴょこぴょこ動かして抵抗するが、ハクのスキンシップは留まることをしらない。でも仲は悪く無さそうだ。多分。


「はあ」


「なんだか大変そうだなメルト」


「一応ゼフィルスは初対面だと思ってな、紹介しておくとこいつはハク、【百炎狐】に就く1年生でも指折りの実力者だ」


「ほっほう~! 例のメルトがギリギリで倒したっていうあの〈百炎〉か!」


「それ以来、何かとこうして付きまとわれている」


「仲良くしたいだけじゃないか? 戦いの後、友情が芽生えるなんて話も良くあるし」


 ハクを改めて見ると、ミサトとメルトに懐いているオーラが全開だ。

 あとで聞いたところ、どうやらハクは自分より強い同級生の魔法使いが大層気に入ったとのことだ。ミサトとメルトはあのクラス対抗戦でハクを追い詰めたらしいからな。

 まあ、仲がいいことは良いことだ。


 続いて話しかけてきたのはレグラムだった。

 ただ後ろに3人の男子を連れていた。


「ゼフィルス、おはよう」


「レグラム、同じクラスになれて良かったな」


「ああ、これからよろしく頼む。それと、数少ない男子を紹介しておこうと思ってな」


「それは助かる」


 今回の新〈1組〉は男子がさらに少なくなっている。

 あの〈天下一大星〉や筋肉メンバーでも貴重な男子だった。それがアラン以外するっといなくなってしまったからな。8人も抜けてしまった。

 その代わり入ってきたのがメルト、レグラム、ラムダ、セーダン、キール、の5人。

 俺、セレスタン、アランを合わせても、男子は8人となってしまった。

 男子のコミュニティの形成が急がれる。


「ゼフィルス、おはよう。あの後大変だったみたいだな」


「ラムダ、おはよう。そういえば〈中上ダン〉で会って以来か、一緒のクラスになれて嬉しいぜ」


 ラムダとグッと握手を交わす。ラムダは上級職だからな。実力も高いので〈1組〉は納得の理由だ。


「ちゃんと話すのは初めてになるか、俺はセーダンだ。クラスメイトとして今後ともよろしく頼む」


「クラス対抗戦の時は慌ただしかったしな。ゼフィルスだ、こちらこそよろしく頼む」


 続いてセーダンとも握手を交わす。元〈2組〉のリーダーだったセーダンだが、クラス対抗戦で初戦敗退、しかも最下位という結果を出したにもかかわらず〈1組〉に入れるほどの実力者だ。おそらく授賞式で表彰されたのが大きかったのだろうと思う。クラスメイトになれて俺も嬉しい。


「僕はキールという。決勝ではすぐにやられてしまったから初めましてになると思うが、よろしく頼むよ」


「よろしく、キールと呼んで構わないか? 俺のこともゼフィルスと呼んでくれ」


「ではゼフィルス君と呼ばせてもらうね」


 最後はキールというぐるぐるメガネの男子と握手を交わす。そのメガネ、いくつかの状態異常の付着率を高める〈惑わしのメガネ〉じゃん。こんな見た目だが激レアアイテムである。

 ゲーム〈ダン活〉時代は面白がってぐるぐるメガネをそのまま使う人も多かったが、女の子に付けるなら〈デザインペイント変更屋〉を利用する人も多かった。ちなみに俺は両方やっていた。


 ちなみにキールはクラス対抗戦でレグラムにやられ、その縁でレグラムとは仲が良いらしい。


 とりあえずこれで男子とは一通り話し終えた。

 仲良くなれると嬉しい。



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