第680話 驚愕の事実に震え。この世界の幼女は成長する。




 さて、なんだか紆余曲折あったようななかったような、色々あったようでそうでもなかった濃い時間が終わり、とうとう〈天魔のぬいぐるみ〉を手に入れることができた。


 とりあえず、これで二つ目ゲットだ!


 ついに【天使】と【悪魔】を降臨させるときが来たのだ。

 目下の問題は、ではそれを誰にするかである。


 そこでミサトの出番だ。


 俺とセレスタンはあの後「一緒にスペシャル訓練コースに参加しないか?」「引き締まった良い筋肉に仕上がるぞ」「見ろ、この筋肉を、こうなるんだ」と熱心に誘ってくる筋肉たちに丁重に断りを入れて脱出し、ミサトに連絡、とあるラウンジの個室に入り合流して今に到る。


「うーん。【天使】系と【悪魔】系、やっぱり職業ジョブの情報が全然ないし、今高位職に内定している子は厳しいかも」


「そうだな」


 ミサトが面接に来た子たちの一覧表を見ながらペンを走らせる。

 高位職に内定している子を弾いているのだ。

 さすがに人生設計を崩してまで【天使】と【悪魔】に就いてくれ、となると頷いてくれる人はいないと思われるのでこれは仕方ない。


「狙いは高位職になりたいけれど高位職が発現していない人たちだね。そして将来のSランクギルドに応募してくるような熱意とやる気と実力がある子で、高位職の希望を踏まえると」


 さらにミサトがペンを走らせ、該当しない子を弾いていく。

 そうして残ったのは6人の男女だった。


「140人いたのに、たったこれだけか~」


 ちなみに面接の応募はこの5倍あったのだが、選抜されたのが140人だった。

 その中から【天使】と【悪魔】に就いてでも〈エデン〉に加入したいと意気込み、そして〈エデン〉というギルドでやっていけそうな人物となると6人まで数が減ってしまったのである。


〈51組〉のメンバーは軒並み高位職を発現させてしまっているのでもちろん全員が対象外だ。

 それに貴族系にヒーラーは少ないので、今回欲しいと思える人材がいないのがネック。

 タンクはもう十分なので、ヒーラーが欲しい。ヒーラーが足りない!


〈51組〉のゼフィルス先生を担当したとき、面接を宣言してからやるべきだった。順番をミスった。おかげで〈51組〉にはヒーラーが1人もいないという残念な事態となっている。

 一応面接を宣言した後、ギルドメンバーにはいいヒーラーがいたら紹介してほしいと言っておいたが、ほとんどの反応は悪かったんだよな。シェリアだけが心当たりがあるので聞いてみますと言っていたが、はてさて。


「140人も面接に来て、なんでヒーラーってこんなにいないんだろうな」


「ダンジョンで活動するヒーラーは元々数が少ないってのもあるけど、ヒーラーはギルドで大切にされるからね。不満が少ないから抜けてまで〈エデン〉に移籍しようとする子は少数なんだよ」


「あ~、なるほど。ミサトが言うと、説得力があるな」


 ミサトもヒーラーである。そして色々とギルド関連で振り回された実績があるのだ。

 ミサトの言葉にはなんか説得力を感じた。

 しかし、言われて頷く。ダンジョンで活動するヒーラーの不足か。これは意外と深刻かもしれない。


 思えばヒーラーになりたいって〈エデン〉に来た人材はラナを除けばいなかった。

 そのラナも【聖女】になりたいって言っていただけでヒーラーになりたいとは言っていなかったしな。

 ヒーラーというポジションは人気がないのか、それとも他の理由か。とにかくヒーラーという人材自体がこの世界では貴重だというのはわかった。


 ならば、いないのなら育ててしまえばいいのだよ!

 ということで、話は【天使】系、【悪魔】系を提案する6人の話に戻る。


「とりあえず個別に連絡とってみたいけど、あとセレスタンさんにも意見を聞かないとね」


 セレスタン調べに不備はない。

 メルトの時もそうだったが、一応〈エデン〉も貴族や王族がたくさん在籍するギルドなのでなんやかんやあるのだ。セレスタンからも『合格』をもらえない子は〈エデン〉には入れない。ちなみに【闇錬金術師】のセルマ先輩を始め、俺が検討していた子が何人か弾かれていたりする。


 セルマ先輩はなんで弾かれたのだろう?


「というわけでセレスタン、この6人なんだが、どうだろうか?」


 そう言ってミサトが渡してくれた一覧表に書かれた6人のプロフィールを、そのままサッとセレスタンに渡す。すると、セレスタンの目が鋭く光る。


「そうですね。こちらの方とこちらの方はやめておいたほうがよろしいかと、ギルドに不和を呼んだことがあるとのことです」


 なるほど。ギルド内が険悪になるのは俺も避けたいところだ。ではこの男子たちは弾いておこう。本当に、セレスタンはどうやってその情報を入手したのだろうか。そして今ミサトが選んで初めて見た人だったのだが、セレスタンは全員分のプロフィールが入っているのだろうか?


「それからこちらの方とこちらの方は、その、勉学の成績がよろしくありません。1学期では赤点を取り、補習になったはずです」


「うーん、赤点取っちゃうのは問題だねー。〈エデン〉は勉強会もしているけれど、成績上げることが出来る子たちかな?」


「今の所、合格の基準には届きませんね。この面接ではご縁が無かったということでよろしいかと」


 おい、候補から一気に4人消えたぞ?

 え? やばいぞこの流れ。もし候補が全滅なんてことになったら苦労して手に入れた〈天魔のぬいぐるみ〉がルルのお友達になってしまう。あれ? それもいい気がしてきたぞ? い、いやダメだ。気をしっかり持つんだ俺!


「それでセレスタン、残りの2人は?」


 俺はドキドキしながらセレスタンの言葉を待った。


「そうですね。この方々に目立った問題点は無かったはずです、合格でよろしいかと」


 出た! セレスタンの合格出た!

 セーーフ!!


「じゃあまず、この子たちに打診してみようか」


「そうだな、それがいい。〈転職〉した暁には俺がいっぱしになるまで鍛えてやる」


「たはは~、お手柔らかにね?」


 何とか2人合格を得た。とりあえずは良かった。

 なんだか感慨深いぞ。


「それで、どんな子だ?」


 俺は改めてプロフィールを見てみる。するとそこには、以前、ゼフィルス先生二学期の初講座の時にぶつかった、あの姉妹のことが書かれていた。


「! この子たちは、子爵姫か!!」


 プロフィールに書かれていたのは「人種」カテゴリー「子爵」、そして「姫」を持つ、現三年生の双子姉妹だった。

 いや、ちょっと待ってくれ「子爵」「姫」のカテゴリー持ちを天使と悪魔にするのはちょっともったいない。しかし、候補が他にいない。時間も無い。え? マジか?


 というか双子だと!? 双子なんているのか!?(混乱中)


 ゲーム〈ダン活〉、実はそこに双子なんてキャラは存在しない。

 全部キャラクターメイキングで作るのだ。色違いキャラも出来たし、見た目そっくりという子を49人量産して〈アンドロイド部隊〉、なんてギルド名にしていた人も居たが、設定上は双子や三つ子なんて存在しないのだ。ちなみに〈アンドロイド部隊〉は主人公が司令官っぽくて完成度の高いスクショで、〈ダン活〉プレイヤーたちは唸ったものだ。懐かしいぜ。


 おっと脱線した。

 えっと、なんの話だったっけ?


「ほらゼフィルス君、あの2組目にいた金髪姉妹のあの子だよ」


「ああ、よく覚えている。というか俺の授業の生徒だぞ」


 俺は大きく頷いた。

 なんか同じ見た目の姉妹だなくらいにしか思っていなかったが。

 そうか、双子だったのか。この世界双子って存在するんだ!

 これもリアル補正か!?


 しかも「子爵」である。確かに〈幼子化〉のシンボルと言えばそうだとわかるほど小さかった。

 しかし、ルルほど幼い感じではないため面接でプロフィールを見て初めて「子爵」だと知ったんだよ。最初は姉妹の見た目そっくりさんの方が記憶に残っているくらいだ。


「あの子たち子爵だったんだよな。でも10歳くらいの見た目だったぞ?」


 俺が「子爵」だって気付かなかった理由だ。結構成長していて、正直「子爵」でなくてもロリキャラと言えば通りそうな見た目だったんだよ。

 そんな俺の苦悩をミサトが容易く踏み潰した。


「だって三年生だもん。そりゃ成長するよ」


「成長するの!?」


 今度こそ目が飛び出さんばかりに驚いた。

 へ? 幼女って成長するんだっけ? 俺の知っている幼女と違う。

 俺の知っているゲーム〈ダン活〉ではキャラは成長なんてしなかったぞ! 三年間背も見た目も同じだ!


 マジか……。成長? え? じゃああの天使のように可愛いルルも成長するの?

 一生あのままじゃないのか? 後で知ったのだが、実は「子爵」は16歳まで幼児のような見た目だが、そこから成長期に突入し、最終的に大体12歳~18歳くらいの見た目になって大人の仲間入りを果たすのだそうだ。マジファンタジーなのですが?


 ちなみに【ロリータ】系や【ショタ】系の職業ジョブに就いているとシンボルの影響を受けやすく、成長が抑制されて大人になっても幼いままの見た目になってしまうというデータが取られているとも聞いた。マジかよ。そんな職業ジョブ補正が存在する、だと……?

 じゃあ【ロリータヒーロー】のルルはどんなに成長しても12歳までしか大きくならないんだ。俺の平和は守られた。(錯乱中)


「知らなかったんだゼフィルス君……。常識だと、ってそういえばシエラちゃんがゼフィルス君は一部常識がないとか言っていたけれど、これのことだったんだ」


 シエラが俺のことを常識がないと言っていたとか聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。


 少し放心気味の俺にミサトが俺の耳元に口を近づけて言う。


「まあ、とりあえず、双子ちゃんに連絡とってみるね」


 俺はその言葉に頷き、ミサトに任せたのだった。



――――――――――――

後書き失礼いたします。


以前後書きにてお知らせさせていただきました「好きラノ」の結果が昨日発表されました!

〈ダン活〉は総合部門で

 1巻が『21位』!(165票) 

 2巻が『38位』!(113票)

さらには新作部門では『第2位』でした!

新作部門では例年なら1位でもおかしくはない票をいただけていました!


ありがとうございますありがとうございます。

とっても嬉しいです! 

〈ダン活〉に票を入れてくださった方々に最大の感謝を!

とっても自信が付きました!


次はいよいよ「このライトノベルがすごい」が待っています!

これで上位を獲得出来れば〈ダン活〉はさらに盛り上がる事間違いありません!

どこの本屋さんにも〈ダン活〉が並ぶでしょう!

「このライトノベルがすごい」は書籍に投票するのではなく、作品に投票する形になります。

もしよろしければ、「このライトノベルがすごい」が始まったらこちらにも投票いただけると大変嬉しいです!


作者、これからも張り切って頑張ります!

今後も〈ダン活〉をよろしくお願いいたします!


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