第669話 シャロン加入承認と、第二回大面接が開催決定!




「ゼフィルス君、メルト君、ミサトちゃん、本当にありがとね」


「気にしなくていい」


 教室に戻るまでぽーっとしていたシャロンだったが、教室でシャロンも無事高位職が発現していたことを報告してクラスメイトたちから賛辞の拍手をもらうと目が覚めたように俺たちに礼を言った。

 しかしメルトよ、その返しはダメだぞ。シャロンには是非気にしてもらって〈エデン〉に入ってもらわなければならないのだから。


「どうだ? 〈エデン〉、なんなら下部組織ギルドである〈アークアルカディア〉にお試しで入ってみるのは?」


「ええっと、その、でも私下手かもしれないよ?」


「そういうのは初心者って言うんだ、一度お試しでいいから来てみなって、俺が一から教えてやる」


「そうだよシャロンちゃん。全部ゼフィルス君に任せておけば解決だよ」


「ミサトちゃん……」


 シャロンの勧誘をミサトも手伝う。

 元々シャロンを見つけたのはミサトだった。さすがは我がエデンいちのスカウトマンだ。

 しかしその時はあまり良い返事を貰えなかったため、まずは仲良くなる事から始めたわけだな。同じ「伯爵」のメルトに協力してもらい、イッツ友達プロジェクトを発足したのだ。


 そうしてメルトと打ち解けたシャロン、だいぶ良い感じにぐらついている。あとほんの少し押せば行けるだろう。


 シャロンが縋るような視線でメルトを見る。

 やはり最後の一押しはメルトからしてもらわないとな。

 俺はメルトにアイコンタクトで行けと指示を出す。

 メルトはあまり変わらない表情だが、色々考察している様子だ。そして口を開いた。


「シャロン。〈エデン〉には俺もいる。職業ジョブの練習だって付き合おう。俺たちはシャロンを歓迎する。どうするかはシャロンの自由だが、俺はできればシャロンに来てほしいと思っている」


「!」


 おお! メルトが良い事言ったぞ! これは刺さったのではなかろうか?

 横にいたミサトが「う、メル君がゼフィルス君に染まってきてる……」となぜか危機感を抱いているようなことを言っていたのが少しだけ気になった。

 そんな俺とミサトがいつの間にか一歩下がって傍観する中、じぃっとメルトを見つめていたシャロンが口を開いた。


「その、本当に練習にも付き合ってくれる?」


「安心しろ。いくらでも付き合うさ」


「本当? 本当に本当?」


「ああ」


「……わかったよ。まだまだ未熟ではありますが、私をギルドへ入れてください」


「「おおー!」」


 とうとうシャロンが落ちたぞ! じゃなくて仲間になったぞ!


 ミサトと二人で思わずと言った調子で声を出してしまった。

 まずは拍手で歓迎する。


「ようこそ〈エデン〉へ! シャロン、歓迎するぜ!」


「わ~、どうなることかと思ったけど、入ってくれて良かったよ~、歓迎するね」


 シャロンは少し鳩が豆鉄砲食らったようなきょとん顔をしていたが、次第にはにかんでこう言った。


「うん。ゼフィルス君、ミサトちゃん、迷惑掛けちゃうかもだけど、これからよろしくね」


 無事、友達プロジェクトは成功。

「伯爵」カテゴリーは3人目の加入となる。この成果は大きい。

 これはリアルならカテゴリーの上限が無いという証左でもある。ある程度予想が付いていたけれど、やはりだったか! ますますテンションが上がる!


 こうしてシャロンが新しく〈エデン〉の仲間になったのだった。


 ―――しかし、


「ちょーっと待ってよ!」


「はい。その話、まだ空きはあるのかしら」


「わ、私たちも立候補したいのだけど!」


 ここが〈51組〉の教室であると忘れていたな。

 話が一段落したところを見計らい、手伝いを買って出てくれたフラーミナさん、カタリナさん、ロゼッタさんが立候補した。


 おお! カテゴリー持ちがさらに3人も!

 これはいいぞ! 〈51組〉へ教えに来た効果が早速現れたか!?


「よしよし、まずは話を聞こうじゃないか!」


「お、おいゼフィルス」


 俺が3人に歓迎の意思を籠めてウェルカムすると、メルトのやや焦った声と共に〈51組〉が震撼した。


「な、ま、マジかよ! 〈エデン〉に入れるのか!?」


「な、なんだと! ぜ、ゼフィルス先生、是非俺も入れてくれ!」


「ちょ、お前ずるいぞ!? お、俺ならこいつより役立てる、どうだ?」


「この俺を倒した勇者の配下になる事、認めよう」


「待ちなさいあなたたち! 〈エデン〉の席は私たちがいただくわ」


「いいえ、いただかせません! ここはわたくしの出番ですわ! みなさん落ち着きなさってください!」


「ぴゃ! ヘカテリーナしゃん!?」


〈51組〉学生たちが一気に詰め寄ってきたのだ。

 おお、ちょっとビックリした。

 入学したての頃の勧誘合戦をちょっと思い出したぜ。

 しかし、クラスリーダーのリーナが止めたことで我先にと俺に詰め寄ろうとしていた学生たちがピタリと止まる。


 リーナ、すげぇ。


「わたくしも〈エデン〉の一員として口を出させていただきますが、そんな詰め寄っても良い結果になりませんわ。それに安心してください。ゼフィルスさんも皆さんの思いをちゃんとんでくださいます。――ゼフィルスさん、ここで立候補された方は〈エデン〉の加入を検討していただけるのでしょうか?」


 なるほど、リーナは俺の意思を〈51組〉のみんなに伝える場を用意してくれたんだな。

 確かにわーっと来られても、ちょっと困る。ギルドの加入は誰でも良いわけではないし人数に上限もあるからな。


 現在〈エデン〉加入者は19人、枠は1つ。これはシャロンが入る。

 そして下部組織ギルドの〈アークアルカディア〉は現在7人、枠は8つだ。


〈エデン〉もCランクになった。次のBランクを見越して今のうちにメンバーをスカウトしたいところだ。

 募集できるのは8人までだな。


 そこまで考えて俺がリーナの質問に回答しようというところで、今度は隣のミサトが待ったを掛けた。


「ちょーっと待ったー!」


「おおう。どうしたミサト?」


「どうした、じゃないんだよゼフィルス君! 第二回大面接をしようって話忘れたの!?」


「…………おう、ちゃんと覚えているぞ?」


「それにしては少し間があったよね?」


 それは夏休みの前の話だ。

 Dランクギルドにランクアップした当時の〈エデン〉は、上限が上がって空きが出来た枠の募集に再び大面接をしようか、という話になってミサトを動かしていた。

 しかし、間が悪く、その後テストとか、夏休みとか、クラス対抗戦とかイベントが目白押しですっかりタイミングを逃してしまっていたんだ。

 別に忘れていたわけでは無い。


「ダンジョン週間が明けたらクラス替え用の臨時テスト週間が始まるし、その次はまたクラス替えでバタバタだよ? 第一回に参加出来なかったみんなが大面接を待ってるんだよゼフィルス君! これまでずっと引き延ばしていたんだし大面接はしないわけにはいかないんだよ!」


 そう、勢いよく説くミサトの言葉になるほどと頷く。

 もうすぐ〈転職制度〉が始まる。それのせいで夏休み明けにしようと予定していた大面接が延期になった。


 できれば制度が始まる前に自分好みのカテゴリーを見繕い、〈転職〉させて高位職を量産したいところと〈51組〉に来たが、大面接も忘れてはいけない。

 上級生にも〈転職制度〉を受けたいという人は多いだろうからだ。


 そうだった。〈51組〉だけで枠を埋めてしまうのはちょっと待っただったな。

 俺とした事がうっかりしていたぜ。

 それと同時に今の時期に大面接をするのは悪くはないと考え直す。


 よし、決めたぞ。


「そうだな。ミサト、その大面接ってもう始められるのか?」


「え? そりゃあ準備は終わっているから後は告知するだけだけど」


「それはいいな。さすがはミサトだ」


「おいゼフィルス」


「ゼフィルスさん?」


 俺の発言に、察しが付いたのだろう。メルトとリーナが俺を見る。

 なーに問題無い。ちょっと勧誘の規模が大きくなるだけだ。

 それに〈51組〉のクラスメイトは全員高位職が発現した。シャロンで最後だったしな。これで俺の仕事も終わりだ。


 ということで手が空いたため次の仕事に取りかかろう。


「大面接を開催しよう! ミサトすぐに告知を出してくれ!」


 こうして俺は、今まで遅れに遅れた第二回、〈エデン〉大面接の開催を宣言したのだった。



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