第637話 ダンジョン爆走! 目指せ中級上位の最奥!
木曜日。
あの円卓の会議の翌日の放課後、俺はリーナと約束したとおり、中級中位ダンジョンの一つ、〈足水の平地ダンジョン〉に来ていた。
「今日も皆よろしくな」
「はい。よろしくお願いいたします!」
リーナの返事が良い。
ダンジョンの中に入ったところでもう一度挨拶。これ、ゲーマーの基本。
「ここはすいぶんと、大きな水たまりがあるのですね」
リーナが改めてダンジョンを見渡して圧倒されたように言う。
「というより所々冠水しているよね。水たまりの規模じゃない所が結構あるよ」
リーナの表現は可愛いとばかりに言い直したのは、どこか眠たそうなニーコだ。
どうも疲れが抜けきっていないように見える。勉強疲れかな?
「勇者君が何を考えているのか知らないけどね、それは大きく的を外していると思うのだよ」
ニーコが俺の思考を読んできた。うん、知ってた。
ニーコはギルドメンバーから大人気なのだ。お察しである。
「まあまあ、今日を入れて5日間、どうしてもニーコの手を借りたいんだ。頼むよ」
「……頼られるのは悪い気はしないんだけどね。問題は〈エデン〉のメンバーが皆ハードモード過ぎる所なのだよ。もう少し手加減してくれても良いのだよ?」
「それは約束できないな」
「だよね~。知ってたよ」
まあ、ニーコには後で何かしらのお礼をしたいと思う。最近特に引っ張りだこだからな。
ニーコは少しだけ遠い目をしていた。
そして四人目、五人目のメンバーだが。
我らが王女様ラナと、エステルに来ていただいている。
エステルは〈馬車〉の関係で確定として、最後のメンバーをラナかシエラで迷ったのだが、シエラは色々やることがあって来られなかったので自然とラナに決まった形だ。
「ちょっと寒いわねこのダンジョン。水たまりにモンスターが居るのかしら?」
「ラナ様、今馬車をお出しします。水たまりには入らないように気をつけてください」
皆このダンジョンは初めてなので興味津々のようだ。
「今回のダンジョンだが、見ての通り所々が水没しているダンジョンだ。深さは足首程度だが、足が濡れるだけで体力が奪われるらしい。天然の罠だな」
人間、足を濡らしていると普段とは別次元で体力を持っていかれるというのは聞いたことがあったが、体力オバケとなったリアル〈ダン活〉でもそれは適用されるらしい。
足が濡れているととても疲れやすくなるのだとか。スタミナデバフみたいなものらしい。
ゲーム時代は別になんともなく、攻略難度的に
しかし、根本的に攻略難易度は低いダンジョンなので水たまりに入らなければまったく問題無い。問題は、道が全部水没していたりして進むためには絶対に水たまりに入らなければいけないところだが、今回はエステルがいる。
深さは大したこと無いので〈馬車〉で十分通過可能だ。
「よし、じゃあ出発しよう。今日中にここをクリアしたい」
「ゼフィルスさんと一緒にダンジョン攻略するのは久しぶりですわ。張り切って参りますわよ!」
リーナのやる気が凄い所恐縮なのだが、今日はいつも通り馬車で最下層まで直行です。
放課後で時間も無いので一気に行きます。ごめんねリーナ。
そうして道中、やる気満々だったリーナは、結局ニーコとラナと一緒に馬車でおしゃべりやちょっとしたトランプなどで楽しく過ごしたのだった。
やはり
ちなみに水たまりは全部無視。他の学生が迂回しているのをスルーして全力横断してやった。学生たちがポカーンと口を開けて見送ってたのが印象的だったよ。
最奥のボスモンスターは巨大なカエル型で、武器を使う配下カエルまで登場させる〈王様ガエル〉だ。〈笛〉を使ってレアボスを狙ったのだが、今回は失敗した。残念だ。
このボス部屋は特殊で、全て水たまりなので強制的に足が濡れてしまうのだが、今日はニーコの攻略者の証が目的で周回するつもりも無いので問題無い。そんなすぐに体力が底を突くわけではないしな。
今回、メンバー的に俺がタンクを務め、リーナとニーコ、ラナが遠距離でガンガン攻撃していった。馬車の上から。水たまり全力回避だな!
ちなみにエステルは〈蒼き歯車〉を装備すると足が完全防備されて浸水しなくなるらしく、馬車をラナたちの足場として置いておき、エステル本人は自由に水たまりの中を走行していたよ。まるで水上を駆けるみたいでなんかむちゃくちゃカッコよかった。エステル、ちょっと羨ましいぞ!
俺は残念ながら水たまりに入りながら蛙たちに群がられつつ全部切り捨て御免してやったよ。後で〈スッキリン〉すれば問題無し。あれ脱水も出来るから。
そうしてカエルボスはなんだか良い所無しで倒され、俺たちは転移陣で帰還した。ちなみに宝箱は〈木箱〉だった。
大丈夫、今はまだ運を貯めているだけだ。次の中級上位ダンジョンこそが本番だ!
「このまま中級上位ダンジョンに入るぞ。今日中に20層までは行っておきたい」
「中級上位ダンジョンというところがどういう場所なのかじっくり見たかったのですが、仕方ありませんわね」
「すまんなリーナ。また今度ゆっくり見る機会を設けるから今はこっちを優先させてくれ」
「タバサ先輩という方のため、ですわね。ちょっと妬けてしまいます」
「そうよゼフィルス、今度私にもお礼をしなさい。その、11月には学園祭というものがあるらしいのだけど……そこで」
リーナを収めていたらラナまで便乗してきた。
俺は、とりあえず「はいはい」と流して、続いて〈
内容はユミキ先輩からで、例の〈決闘戦〉で出場する〈テンプルセイバー〉の予想メンバーが書かれていた。お礼の返信を送り、あとで熟読しようと思う。
そうしてその日はエステルの〈馬車〉で
明日からはいよいよ、中級上位ダンジョンの初めての最奥ボスに挑む予定だ。
腕が鳴るぜ。
おっとその前に明日はあれがあったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます