第627話 エデンへ入りたい? よしダンジョンに行こう!
大変です。
元〈白の玉座〉使用者だったタバサ先輩が〈エデン〉に入りたいと言ってきました。
しかも明らかに〈白の玉座〉も求めています。身体から使わせてオーラがばんばん出ています。どうしますか?
「タバサ先輩に確認しておきたいのだけど、移籍に〈エデン〉を選んだ理由は?」
シエラの問いにタバサ先輩が冷静に答える。
「〈白の玉座〉が〈エデン〉にあるから、というのが一番大きな理由。私が欲しいのはたった一つ、〈白の玉座〉だけだから。それが一番手に入りそうなギルドが〈エデン〉だった」
単純にして明解。タバサ先輩は元いたギルドを離れてでも〈白の玉座〉を諦めないと言うのか。
俺はその理由にとてもグッときた。
自分の装備を追いかけて単身、一番手に入る確率が高いであろう選択肢を選んだのか。ヤバいな。俺は今、タバサ先輩がとても気に入ったぞ。
そして偶然に強いと豪語したタバサ先輩、「〈白の玉座〉が手に入りそう」という意味では〈エデン〉は間違いないだろう。
現在、〈エデン〉は〈白の玉座〉を借りている状態だが、正式に手に入れる予定だし、その交渉も済んでいる。
さらにはもう一つ〈白の玉座〉がドロップする可能性もある。
それが狙えて確率が一番高いのは〈公式裏技戦術ボス周回〉が使える〈エデン〉だけだ。タバサ先輩が言っていたのはおそらく前者だけの意味だったであろうが、事実ドロップでも〈白の玉座〉が一番手に入りやすいギルドはこの〈エデン〉である。
タバサ先輩の引き率がすごい。
これは、心情的にも加入させてあげたい。
〈エデン〉はヒーラーが不足しているしな。
それにタバサ先輩の境遇は、とても心配だ。
出来るなら受け入れを前向きに検討したい。
しかし、問題はいくつかある。タバサ先輩が3年生というのもその一つだ。
3年生という事は、後半年ほどで卒業を迎えてしまう。受け入れたとして半年でさらばになってしまうのだ。これは大きな問題だぞ。
「そうだ、その前にタバサ先輩の
もし微妙な
「わたし、【メサイア】」
「【メサイア】!?」
「ちょっとゼフィルス、声が大きい」
「お、おおう悪い」
完全防音とはいえ室内で大声を出すのはマナー違反。
しかし待ってほしい。思わずビックリしてしまったのだ。
マジか。予想の上というか、いやAランクギルドをたった一人で支え続けたヒーラーだ、そもそも弱いはずが無かった。
―――【メサイア】。
上級職、高の上に位置する強力なヒーラー職だ。
貴人のカテゴリー系統な為に貴族であれば誰でも就けるのが魅力な
俺もゲーム〈ダン活〉時代は大変お世話になった。
〈白の玉座〉を使っていたということは、ギルドバトル系のビルドになってそうだな。【メサイア】は【大聖女】と違った方法でマス越えの遠距離攻撃が可能なんだ。
【大聖女】を選ばなかったとき、〈白の玉座〉と最も相性良いのが【メサイア】だった。
なるほどなぁ。
文句なんてあるはずも無い。
というかタバサ先輩と【メサイア】是非ギルドに欲しい!
さっき3年生だから問題だと言ったな?
ちょっと考え直そうか。
ふう。
【メサイア】は強い。〈転職〉はまったく必要ないな。
学園は3年生で卒業、卒業しちゃうのか……。
しかし、一から育てたキャラではなく、途中加入のキャラと考えれば途中で抜けるにしてもそういうものだと納得できるような気もする。
「もし私を加入させてくれるなら、私が今まで経験してきたこと、全部ギルドの子たちに教える」
「それは、とても魅力的だな!」
ここはリアル、最上級生で元Aランクギルドに所属していた人材となれば、その経験はとても貴重だ。〈エデン〉のためになることは間違いない。俺も教えてほしい!
あと大きな問題は〈テンプルセイバー〉か。
話を統合するに、〈テンプルセイバー〉がこのまま引き下がるということは無いだろう。あの果たし状がその証拠だ。
ここは一計を案じても良いのではないか? と思うしだい。
シエラは難しそうな顔をしている。新しいメンバーを加入させるか否かについては結構デリケートな話題だ。しかし決心がついたのか、俺と目が合うと、俺に任せる、というアイコンタクトを送ってきたので頷いた。
「よし、話は分かったタバサ先輩。ならこうしよう」
「?」
ちょうど〈エデン〉も新しいメンバーの募集をしようというところだったし、〈エデン〉としては悪くない話なんだ。ということで、俺は方針を決めた。
「タバサ先輩、とりあえず俺たちとダンジョン行こうぜ」
さて、これから忙しくなるな。
あ、そうだ。あの人にも連絡しておこう。まずは色々と調べないとな。
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