第590話 挟撃に警戒。〈3組〉迎撃と本命の作戦進行中。
「ゼフィルス、どうする? 2分で要塞が消えるぞ」
そう言って声を掛けてきたのはレグラムだった。
実は今メルトでは無く、レグラムが〈8組〉の指揮を執っている。
問題は2分後、侵攻するのか後退するのか、だ。
まさかサターンのやつ、アレ使うとか。爆発した瞬間強制退場させられるというのに、
さて、要塞、落ちちゃったなぁ。俺が破壊するつもりだったのに。サターンめ、美味しく散りやがって、ちょっと羨ましいじゃないか。
いや違う、そうじゃない。なぜ要塞を破壊したのに後退の選択肢があるのかという話だ、これは〈3組〉11名が南から回り込んできているからだな。カルアの黒猫により把握済みだ。
このまま〈3組〉が南下し、〈1組〉〈8組〉拠点方向へ向かおうものなら俺たちは追いかけて、拠点を攻撃している〈3組〉の後ろを取って撃破してやれば良い。
しかし、レグラムの話では〈3組〉は連合に加わった可能性が高いのだそうだ。
そうなると連合の援軍という事になる。俺たちの後ろを取って挟撃してくるはずだ。
それはちょっと遠慮したいな。
要塞崩落により敵味方の手が止まっている今のうちに状況を整理し、新たな作戦を考えなくてはならない。
そう考えた所で小さい影がシュパッとどこからともなく登場した。カルアだ。
「ん、ゼフィルス」
「カルア、良い所に来た!」
カルアには黒猫による情報連絡後、リーナの目を逸らし注目を集めるよう指示していた。
リーナは真っ先にカルアを狙った、ちゃんと〈エデン〉のウィークポイントが何かわかってる。だからこそそんなカルアが目の前に登場したら釣られずにはいられないだろう。
とはいえカルアが討ち取られても困るので、ほどほど目立ってかき乱したら戻ってこいと伝えていた形だ。
「ん、報告、連合側、リーナ生きてる。爆発、リーナに届いてない」
「了解だ。戦力の把握がしたい。今連合と俺たち、何人残ってるか調べてくれ」
「ちょっと数えてくる」
「サンクス」
現在の戦力把握は大事だ。あの爆発により相当数の転移陣が見えた。10人近くがあの爆発で退場したハズなんだ(サターンも含む)。
これを把握するのはとても大事。カルアは再びシュパっと消えて手頃な山の上に登っていった。
「……ゼフィルス、どう動く? 攻めるか、戻るのか?」
レグラムが急かす。まあ、どちらにするかと言えば決まっている。
「俺たちの本隊は下げるぞ。〈3組〉を迎撃しつつ南へと下る。目標の要塞破壊は完了したからな」
「確かにそうだ。このまま進めば連合の拠点がある、相手は決死の覚悟で迎え撃って来るはずだ。後ろに〈3組〉がいる現状、挟撃を受けるのは必至か」
「そういうことだ。レグラム、〈8組〉を指揮して〈3組〉を食い破ってくれ。俺らは連合の主力を相手にしつつ後退する」
「了解した!」
うん。目標の要塞破壊は十分楽しめ――、じゃなくて達成した。ならば一度出直してもいいだろう。本命の作戦も進行中なので、〈3組〉を倒してから悠々と進撃するとしよう!
俺は〈1組〉全員を指揮しつつ少しずつ後退し始めると、連合側はリーナを中心に集まり始めた。陣形を整えたということは、予想通り攻めに出て来るつもりだな。
牽制のためか散発的に攻撃してきたため、シエラに防御してもらいメンバーに魔法などで反撃してもらいながら少しずつ下がっていく。
そこへメイド服装備に身を包んだシズが帰ってきた。
「ゼフィルス殿、ただいま戻りました」
「お、シズ! よくカルアを救出してきてくれたな!」
「はい。ちょっと難しいかと思いましたが何とかなりました」
「それは良かった。いったい何が起こっていたん――」
「ん、ただいま」
「――おっとカルア、お疲れ様だ」
「ん、報告する」
シズにカルアの状況を聞こうとしたら本人が戻ってきた。
そうだった、今はそんな話を聞いている場合では無い。
その話は後にしよう。カルアの報告に耳を傾ける。
「ん、連合は、20人くらい。あと崩れた要塞の向こうにドワーフが5人いた。味方は〈8組〉がレグラム、ノエル、ラクリッテ入れて10人だった。〈3組〉は11人だと思う」
「よく調べてきてくれた」
カルアの頭と猫耳を撫でながら褒めた。これで作戦を組み立てられるな。
情報整理。
現在〈1組〉は俺、シエラ、カルア、リカ、シズ、パメラ、ミサト、サチ、エミ、ユウカ、それとクラスメイト女子2名の計12人。
〈8組〉はレグラム、ノエル、ラクリッテ、他7名で10人がここに居て、戦力は22人だ。
対し連合は主力が20人くらい、援軍〈3組〉が11人。ドワーフが5人。
やはり〈3組〉を打ち破るのが勝利への道だな。
「カルア、先ほど引きつけていた〈12組〉のリーダーたちはどうしたのですか?」
「ん、途中要塞が破壊されて、リーナの名前を叫びながら慌てて戻っていった」
どうやらタイミング悪く要塞が陥落したせいで上手く釣れなかったようだ。それで深追いはせず、俺のところに戻ってきたらしい。
「あと、大変。ラナとエステルとメルトがいない」
「ああ、それは安心してくださいカルア。ラナ様、エステル、メルトは別の作戦中なのです」
「別の作戦?」
「というよりこっちが本命の作戦だな。ここの要塞も崩せたし、連合の戦力もここに集中させた。エステルにはな、南側から〈サンダージャベリン号〉を使って東へと回り込み、別の要塞を破壊して、〈12組〉拠点を狙うようお願いしてあるんだ。メルトと〈8組〉にも手伝ってもらってな」
そう俺が作戦内容を告げると、カルアはキョトンと首を傾げた。
これが俺の大本命。チェックの一手だ。
―――――――――――――
後書き失礼します。
近況ノートに添付で図を貼り付けました。
現状とゼフィルスの一手が一目で分かります。こちらからどうぞ↓
https://kakuyomu.jp/users/432301/news/16816927862295657979
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