第521話 作戦タイム! 拠点の位置を決めて送っ信!




 ――第一ブロック。

〈1年1組〉〈1年2組〉〈1年15組〉〈1年24組〉

〈1年45組〉〈1年58組〉〈1年99組〉〈1年116組〉


 表示されたスクリーンを見て周囲からどよめきが上がる。


「おい、あれ見ろよ」


「〈1組〉と〈2組〉の対決だと!? こんな序盤に!?」


「それだけじゃねぇ、高位職のクラスが5クラスも入ってる!」


「ということは、高位職だけで150人が参加!? どえらいことじゃねぇか!?」


「ああ。しかし、しょっぱなからすんごいのが来たな。例年では見られないド迫力な〈拠点落とし〉になるぞ。高位職が多すぎて〈1組〉や〈2組〉でも危ない」


「例年では中位職クラスが同盟組んで高位職クラスを落とすこともあったからな。高位職クラスが5クラスも参加とか、マジどうなっちまうのか想像もつかねぇ」


「〈1組〉と〈2組〉は例年なら決勝戦で当たるような組み合わせだ。当然最高のクラス、1位と2位の最有力候補だな」


「となると、他のクラスは是が非でも〈1組〉と〈2組〉を落とそうとするわけか?」


「下手をすれば〈1組〉と〈2組〉VS全クラスもありえるぞこれ」


「となると、〈1組〉〈2組〉にとって長期戦は不利になるのか?」


「ああ。時間が経てば経つほど〈1組〉と〈2組〉以外のクラスが同盟を組むと思われる。実際にはどうなるかわからんが」


「〈1組〉と〈2組〉は同盟を組まれる前に勝利を掴む必要があるわけか?」


「……同盟組んでも関係なかったらどうする?」


「ん? どういうことだ?」


「いや、今年の〈1組〉はとんでもないのがいるじゃないか」


「三強」


「ああ! 〈エデン〉、〈マッチョーズ〉、〈天下一大星〉か!」


「あれらが〈1組〉に集合している。たとえば〈2組〉を除いた他の6クラスで同盟を組んだとしても、もしかしたら……」


「ば、ばっきゃろー、そんなわけあるかよ!? 無いよな? 誰か無いと言ってくれ!?」


「う、うむむ。まさか、いやしかし……」


「ありえそうで恐ろしい。というか対抗するために〈1組〉と〈2組〉が組んだらどうするんだ?」


「そ、その可能性もあるか……」


「〈1組〉も〈2組〉も、他のクラスは同盟を組むと予想しているとすれば、わざわざ敵を屠ってくれる相手を攻めることはしない」


「敵の敵は利用せよってやつだな」


「〈1組〉と〈2組〉は多分こう思ってる。『最初は同盟組まれる前に速攻で決める。決められなければ〈1組〉ないし〈2組〉と組んで蹴散らせばいい』と」


「うわ。他のクラスを歯牙にもかけてないセリフ……〈2組〉も?」


「有効な手段ではあるな。実行できるかは……〈1組〉なら出来そうで怖い。これは戦略図が見えたな」


「同盟クラスが勝つ可能性もあるけどな」


唯一ただひとつ思うんだが……、迷い込んだ低位職のクラスがすごく可哀想だ……」


「それな……」



 ◇ ◇ ◇



 第一ブロックは第五アリーナで行なわれる。


 まず行なうのはフィールドの構築だ。

 これは事前に通知がされない。つまり会場がどんなフィールドになっているのか事前に知ることが出来ないのだ。

 学生退出後、ムカイ先生が適当にぽちぽちっと操作すると会場のフィールドが変わっていき、岩山や大きな池が出来ていく。巨城、小城は無く、〈拠点落とし〉のフィールドであることが分かる。


 地図が俺たちの〈学生手帳〉に送信され、見れるようになった。

 俺たち出場者はすでに各クラス別の控え室に集まっており、〈1組〉全員で一斉にその地図を確認する。


「うーん。こりゃなんとも言えんな」


「どうするのだゼフィルス」


 俺が地図を見て唸るとサターンが聞いてきた。

 この問いは、どこの場所に〈1組〉の拠点を設けるか、というものだ。


〈拠点落とし〉ではまず地図に自軍の拠点の場所を決めることが出来る。〈城取り〉のように最初から場所が決まっているわけではなく、好きな場所を確保することが出来る。

 この拠点の位置はかなり重要なファクターで、攻められやすい広場なんかに拠点を築こうものなら四方八方から攻められて防衛が間に合わなくなり即終了負けする。


 理想なのは、崖山や池に囲まれていて進行される方向が限定されている位置だな。

 まあ、切り立った崖山を駆けたり、水の上を歩行できるスキルもあるので一概には言えないが、そういうスキルを持っている職業ジョブの方が少数派なので攻められることは少ない。警戒だけしておけば問題ない。


 今回のフィールドは、様々な位置に切り立った岩山や池がまばらに配置されていた。

 型にはまらないフィールドだな。フィールドに適当に障害物を置いただけの地形にも見える。


 俺はその中でも、壁を背にし、防衛の進路方向を二面以下に限定する位置を選び、クラスメイトに提案する。


「北西に、山や丘が連なった山脈のような地形の場所がある、この山脈を背にしたこの位置に拠点を立てようと思う。この位置ならフィールドの端でもあるし、進行する道が限られているから防衛ラインを引くことも可能だ」


 リバーシなんかで言う角っちょだな。角っちょは攻められにくい場所として鉄板だ。実際には本当の角ではなく山脈を背にしているのだが、考え方は一緒。


「なるほど。理にかなっているな」


「ふふ。攻められるとすれば南からか、東側のみ。ルートは南に一箇所、東が一箇所。合計二箇所に防衛ラインを引けば拠点までの時間は稼げますね」


 俺の提案にサターンが頷きジーロンが解説する。


「俺は構わん。その代わり攻めさせてくれ。俺の筋肉と斧が叫ぶんだ。活躍させろと」


「俺様を忘れてもらっては困るぜ。攻めにも守りは必要だ。両方こなせる俺様がいれば安心だろ?」


 トマとヘルクがキメ顔で提案してくる。ちょっとうっとおしい。

 とりあえず、拠点の位置に関して異論はなさそうだ。

 俺は〈学生手帳〉を弄り、拠点の位置を決めたことを報告する。


 この拠点決めは俺たち〈1組〉が最初に決めていい。他のクラスは組数が若い順に自分の希望する拠点の位置を決めていく形だ。俺の報告はムカイ先生と〈2組〉に送った形だな。〈2組〉も入力し終われば次は〈15組〉へと送る。


 後半に拠点を決める組は、俺たちが最初に決めた組と被らないようにするため、拠点の位置が見えている。そのため俺たちの拠点の位置を見て決めることが出来る。

 そして、最初に拠点の位置を決めることができる〈1組〉はそれを見ることは出来ない。

 一長一短だな。


 さて、他のクラスが拠点の位置を決めている間に俺たちは打ち合わせだ。


「〈2組〉に〈1組〉の所在がばれているのは問題だな」


「別に構わないだろ。〈2組〉は他のクラスが減るまで〈1組〉には仕掛けて来ないだろうしな」


 俺が送った拠点の位置データを今頃〈2組〉は見ているはずなのでサターンが懸念を示すが、俺は特に問題ないと考えている。勝ち抜きの枠は2つあるからだ。

 わざわざ危険を冒してまで〈1組〉へ仕掛けてくるとは考えづらい。しないよな?

 俺はその理由と作戦を述べていく。


「あと気になるのは、他のクラスが同盟を組むのか否か、だな。これは組むと仮定しておこうか。同盟を組んで複数で攻めてくるだろう。そうなると最初に〈1組〉と〈2組〉がぶつかればお互いが激しく損耗し、この同盟に対応できない、――かもしれない。故に〈2組〉からの進攻は最後まで無いと考えていい。同盟のほうは素早く解体する必要があるな」


「速攻、電撃戦か」


「複数の拠点が相手のバトルロイヤルでも最初のスピード、初動が命だからな。じゃあ役割分担を確認していこう。最初の攻めは〈天下一大星〉〈マッチョーズ〉全員と〈エデン〉の半数、残りは防衛、予定通り行こう。ミューはシズと協力して侵入してくる相手をスナイプしてほしいが、この地形で出来るか?」


「無論」


「よし。次に防衛の詳しい配置と分担だが、まず東側に―――」


 初めてのクラス対抗戦。〈拠点落とし〉。

 その開始時間まで俺はクラス全員で打ち合わせと再度確認を行なう。


 そうして打ち合わせが終わるころ、ラダベナ先生の大きな声がアリーナに響き渡った。




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 後書き失礼します。

 イメージ図を作製し近況ノートに貼り付けいたしました!

 こちらのリンクからどうぞ↓

 https://kakuyomu.jp/users/432301/news/16816927860110045954

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