第十一章 〈ダン活〉クラス対抗戦!!

第520話 クラス対抗戦ブロック決め。第一ブロック。




 ――クラス対抗戦。

 本来の学習計画通りに進んでいれば10月に行なわれ、入学から半年が経った一年生がどれほどの実力者になっているかを確認する場でもある行事。

 スポーツテストや体育祭にも似た、学年別のお祭り的な感じのイベントだ。


〈戦闘課〉ならアリーナで。

〈採集課〉〈調査課〉〈罠外わなはずし課〉ならダンジョンでそれぞれの課を競わせる各競技。

 生産職は組数が一桁どころか1組しかないという課も珍しくはないため、チーム対抗戦にして、より良い作品を作りコンテスト的な勝負が行なわれる。


〈生産専攻〉であるハンナやアルル、〈支援課〉であるニーコやカイリとは別行動になるが、アドバイスだけ送っておく。


〈戦闘課〉のクラス対抗戦はトーナメント方式だ。

 一年生〈戦闘課〉全127組がクジを引き、まず16のブロックに8クラスが入る。


 期間は5日間、学年別で行なわれ、三年生は第一アリーナから第三アリーナを使用。二年生は第三アリーナから第五アリーナまで使用。一年生は第五アリーナから第七アリーナまで使用し開催される。

 アリーナが一部被っているが、人数の関係でスケジュールに穴が空くこともあるため、その穴を別の学年に使わせる考えだ。

 午後1時までは二年生が使うが、それ以降は使わないため一年生に使わせる、といった感じだな。


〈戦闘課〉で行なわれるのは、――〈拠点落とし〉。

 今までのギルドバトルでアリーナ競技の〈城取り〉はやってきたが、リアル〈拠点落とし〉は初めてだ。ワクワクするぜ。


 たまにギルドバトルでも行なわれることがある〈拠点落とし〉は、複数の集団がバトルするバトルロイヤル形式だ。

 複数のクラスが参戦し、たった一つの生き残りクラスを決めるための対抗戦である。


 ギルドバトルの時はCランク以上のギルドに空席が出来たとき、複数のギルドがその席を取り合うときに採用されるな。最上級生が卒業し、ギルド解散が多い4月によく行なわれる。


 ―――〈拠点落とし〉のルール。

 名前のとおり、相手の拠点を落として勝ちに行く競技だ。

 その都合上、〈城取り〉よりも対人戦の要素が強い。


 今までやってきた〈城取り〉は1対1がルールだが、今度は複数、今回で言えば八クラスが選ばれ戦うことになる。

 制限時間は4時間。フィールドはランダムで、障害物が山や池という形で配置されている。


 最初にアリーナ内で拠点の場所を決める。

 ランダムで選ばれたフィールドの地図を見ながら好きな場所に拠点を置いていい、その代わり一度決めた位置からは変えることはできない。

 これは数字が若いクラスから順に決めていく。〈1組〉ならトップバッターだな。また、これはハンディでもある。


 選んだ場所がどの組の拠点なのか、というのは公開されないが、その場所に拠点があるというのは後半に選ぶ他のクラスに全て筒抜けとなっている。そして〈1組〉でトップバッターである俺らは後から決めた組の拠点の場所は分からない。自分たちで探すしかない、と言う感じだ。

 その代わり、数字が若いクラスは自分に都合の良い陣地を先に選ぶことができるんだけどな。


 拠点を落とされたチームは敗北し退場する。落とすやり方は〈城取り〉と同じだ。

〈城取り〉で言う本拠地が、拠点という名称になっただけという話。拠点を攻撃しHPがゼロになったら陥落だ。

 落とされた場合、〈城取り〉だと2分間の保護期間の後仕切り直しだが、〈拠点落とし〉の場合は拠点が落とされた瞬間クラスメイト全てが退場となる。

 そして退場したクラスから最下位が埋まっていく感じだな。最初に退場すれば最下位。2番目に退場すれば7位、という感じに。


 しかし、それ以外にもポイント制も採用されており、拠点を防衛しているモンスターを倒せば、そのモンスターの強さに応じてポイントが加算されるしくみだ(ジェネラルブルオークなら70点)。もちろん相手拠点を落としたら膨大なポイントも加算される。


 具体的に言えば、『300ポイント+退場したクラスの持ち点』を獲得することができる。拠点自体のポイントは300点だ。

〈1組〉が150点を所持していた時に落とされれば、450点が相手チームに加算される仕組みだな。また、〈拠点落とし〉も総取りがルールなので、複数のクラスで組んで一つのクラスを落としたとしても、ラストアタックしたクラスが全てを持っていくので注意だぞ。


 最終的に、全ての拠点を落として一クラス残るか、タイムアップでポイントを一番多く持っているクラスが勝者1位だな。

 制限時間がある都合上、拠点が残り一つになることがあまりないとも言えるので、最終的にポイントを競うことになる〈判定〉がよくなされているらしい。

 ちなみに勝者の枠が二つの場合などは残り二クラスになった時点で終了。ポイント数によって順位決定が加わる形となる。



 また最初に決めておくことで重要なところがもう一点ある。

〈拠点落とし〉では、自分拠点の防衛モンスターをどれほどの数配置し、どのくらいの強さのモンスターを配置するかは拠点の主であるクラスが決めていいことになっている。そして配置するために必要なのが〈召喚盤〉だ。


 ここが〈拠点落とし〉のかなり重要な部分で、強いモンスターをたくさんの数置けば防衛は容易くなるが、その分モンスターを倒されたときのポイントが大量に持っていかれてしまう。逆にそれを嫌い、クラスの人員だけにして、モンスターは最低限しか配置せず挑めば相手の攻撃が全て拠点に集中し、拠点が落とされるリスクが増し、攻勢に出ることも難しくなる。

 つまりは防衛モンスターは絶妙な按配あんばいが求められるのだ。これが結構面白い。


 防衛モンスターは〈召喚盤〉を使い、拠点にある端末からでポップできるみたいだ。登録したモンスター以外出すことは出来ないため、先読みの勘と情報が求められるな。ちなみに防衛モンスターは3種類で計10体まで召喚可能、ポイントとコストで制限があるが、これはまた後で説明する。

 一度倒されると防衛モンスターのリポップには20分の時間を要するため、どのタイミングで戦力を投入させるべきかは結構重要なところだな。


 また〈召喚盤〉など、アイテム持ち込みのルールがあるために〈拠点落とし〉では〈城取り〉とは違い、〈空間収納鞄アイテムバッグ(容量:小)〉までの持ち込みが認められている。

 今回はクラス対抗戦のため、1クラス10個まで持ち込むことができる。




 ◇ ◇ ◇



 ここは学園長の住まう城〈ダンジョン公爵城〉通称〈中城なかじろ〉。

 みな忙しく駆け回っている中、一人のご老公が城の高い位置にしつらえられた一室で待機していた。この城の主、ヴァンダムド学園長である。


「学園長、お時間です」

 

「うむ」


 スーツのようなきっちりとした服装の男性が呼びに来ると、ヴァンダムドは鷹揚おうように頷き、その足をバルコニーへと向かわせた。

 そこにはマイクスタンドのようなものが備え付けられている。


 それは今日が特別な日であるため取り付けられたものだ。決していつも学園長がバルコニーでカラオケを披露しているのではない。


 本日から5日間、学園全体クラス対抗戦が行なわれる。

 ここ〈国立ダンジョン探索支援学園・本校〉にとっても重大な行事だ。

 当然、その開会式は学園長による宣言にて開催される。


 ただ、あまりにも校舎が数多く広いために、こうして全域放送にて開催を宣言する必要があるのだ。


 学園長がマイクスタンドの前に立つ。


「では始める。――『学園放送』!」


 学園長のスキルが発動しマイクにスキルエフェクトが灯る。

 これで学園全域に放送が流れるようになった。

 続いて学園長からのありがたいお話が流れる。


「学生諸君、今日は絶好のクラス対抗戦日和じゃ。これより、開会式を始め―――」


 わぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――!!!!


 瞬間、学園中から歓声が轟いた!


 学園長がまだ話している途中なのに。


 こうしてクラス対抗戦は開催された。



 ◇ ◇ ◇



 場所は第五アリーナ。


「学園の教員の皆様! 我々はスポーツマンシップに則り―――」


 一年生〈戦闘課〉3810人はそこに集まり、学園長のありがたいお言葉を受け取った高いテンションのまま、選手宣誓を行なった。

 なんだか放送がまだ流れているように聞こえなくもないが、歓声のせいで聞こえない。教員の方々以外気にしている者はいないし問題は無し。

 つまりはみんな早くやりたくて仕方が無いのだ。


 選手宣誓が終わる頃には放送も終わっていたため、続いてブロック分けという一種のイベントに移行する。

 ちなみにブロック分けはリーダーである俺が代表でクジを引くことになっていた。


「ゼフィルス! 良いの引いてきなさい! 任せたわよ!」


「良いのってなんだし。だが、まあ任せろ!」


 ラナの送り出しに親指グーで返し、クラス代表として用意されたステージへと上る。

 クジ引きに関してラナが引くのではと思っていたのだが「バトルと言えばゼフィルスの右に出る者はいないから」と言ってクラスメイトを納得させ、送り出してくれた。

 サターンたちはガリ勉スタイルで一つ頷いただけだ。その姿はちょっと面白かった。


「さて、良いのか、良いのね……。良いのってなんだろう?」


 ラナの期待ではあるがクジはどう頑張ったところでどうもこうも出来ない。

 俺は〈幸猫様〉に祈るだけだ。


 ビリヤード玉のような、数字が書かれた玉がたくさん入っていて腕だけ中に入れる穴の開いたボックスが目の前にある。なんて言うんだっけこれ? まあいいか。

 俺はそっと目を瞑った。

〈幸猫様〉、お願いします!


 そうして俺は最初に手がついた物を掴み引っ張り出す。

 書かれていた数字は、――①。

〈1組〉にとって素晴らしい数字だ。これぞ〈幸猫様〉のお力よ!


 すぐに管理委員の人が確認すると、ムカイ先生がタブレットに何かを入力し、巨大スクリーンに映し出された第一ブロックに〈1組〉の名前が載った。

 やっべ、なんだこれすごく良いんだけど! テンション上がってきたー!


 そこから次々とクラス代表者がクジを引いていき、計16ブロックの出場組が決まった。

 ここから上位2位まで勝ち抜いた32クラスが準決勝進出。

 また8クラス4ブロックに分かれて準決勝戦の〈拠点落とし〉を行ない、さらに上位2位の8クラスに絞られる。


 そうして最後は決勝戦、この〈拠点落とし〉で1位になったクラスが優勝だ。

 勝ち残れば最高で三回〈拠点落とし〉をすることになるな。



 さて俺たち〈1組〉が入った第一ブロック、8クラスの詳細をご紹介しようか。

 それがこちら。


 ――第一ブロック。

〈1年1組〉〈1年2組〉〈1年15組〉〈1年24組〉

〈1年45組〉〈1年58組〉〈1年99組〉〈1年116組〉


 ちなみに1年1組~50組までが高位職クラス。

 1年51組~115組までが中位職クラス。

 1年116組~127組までが低位職クラス。

 と分かれている。


 第一ブロックは、高位職クラスが5クラスも競合している激戦区だった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る