第510話 クラスで連携の練習! 1組全員のジョブ発覚!
クラス対抗戦の準備は着々と進められた。
みんなも初めての〈拠点落とし〉だ。練習は欠かせない。
他のクラスにバレないよう、初級上位ダンジョンの一つ〈孤島の花畑ダンジョン〉の第3層で密かにクラス合同訓練を行なったりしていた。
ちなみに俺たち上級職組の上級スキルはちゃんと伏せているぞ。下級職の〈スキル〉〈魔法〉のみを使っている。
アレのお披露目は本番なのだ。ふふふ、楽しみだ。
ラナもそれを想像してニヤニヤしそうな口を押さえて――、いや若干押さえ切れてないな。ちょっと漏れてるぞ。それを見守るエステルはほっこりして楽しそうだけど。
シエラはいつものクール顔だ。カルアは眠たげな眼なのでいつもと同じように見える。
そして俺はテンションがいくら上がっても問題にならない。なぜかそういうものだと思われている模様だ。
そのため遠慮無く声高に指示を出していく。
「防御班! そろそろ攻撃班に引き連れられた敵が防衛ラインに侵入する、準備はいいか! シェリア、指揮権を譲渡する。頼むぞ」
「はい、任されました! ――これより防衛ラインへ侵入してきた敵の排除を開始します! 配置に付いてください!」
このダンジョンは孤島なので、ゴツゴツした岩がそこら中に伸びている。その一部を使って防衛ラインとし、防御担当のクラスメイトを配置して訓練している。
シェリアの指示に岩陰に隠れた防御班がいつでもいけるとハンドサインをしている。
防御班の副官はシェリア。おそらく本番では俺は拠点を離れ前線に向かうことが多くなると予想されるので、シェリアには指揮をしっかり出来るよう、現在連携等の訓練を積んでもらっている。
当初は防御の副官をシエラが務めるという話もあったのだが、シエラは前衛で味方をかばうポジションだ。とても指揮まで手が回らないし、シエラの力を指揮官に回すのは勿体ないという理由から後衛メンバーが副官を務めるという話になった。
そこで白羽の矢が立ったのがシェリアだ。
シェリアは、いつもルルに夢中であまりそうは見えないが、深い知識を持つエルフだ。これでもメルト並に頭が切れる他、対モンスター戦ではピンチに陥ったことが皆無な実力を持っている。普段の言動がアレだが非常に強いのだシェリアは。〈エデン〉
戦闘方法もユニークスキルの大精霊。大精霊はシェリアの指示に従い自立行動が出来るので戦闘と指揮を両立することが出来る。要はいつも大精霊に指示しているのでシェリアは指示する立場に慣れているのだ。
そんな理由も加わり、防御の副官はシェリアに決まることとなった。
「見えてきました。――慌てずに、十分引きつけるまで待機――」
モンスターが見えてきたことでシェリアがさらに指示を出す。
今回想定しているのは、攻撃班が敗北、ないし撤退に追い込まれ、敵が逆侵攻してきた場合の対処だ。
攻撃班にはタンク担当がモンスターのヘイトを集め、トレインして防衛ラインまで釣りをしてもらう手筈となっている。
トレインとは、敵モンスターの集団を引き連れる行為で、本来とても危険な行為ではある。故意にトレインを引き起こし、無関係の者に被害を合わせた場合は学園から非常に厳しい処罰が与えられるほどだ。しかし、身内で対応できるならそれは釣りと言って立派な作戦である。
わざわざ探しに行くより、大量に釣ってきたモンスターを有利な環境で待ち伏せして、一網打尽にした方が効率的な事もあるからだ。
それは〈拠点落とし〉や〈城取り〉にも応用できる。
クラスメイトたちにとっても良い経験になるだろう。
そうして有利な待ち伏せをして待機していると、サターンやヘルクが先頭になって大量の植物モンスターを引き連れて現れた。真っ直ぐ防衛ラインへと向かっている。
よし、作戦通りだな。サターンたちも後が無いため素直に俺の言うことを聞いているというのが大きい。
「―――――。今、放てー!!」
「『オーブフレアロンド』!」
「『アイステンペスト』!」
「『スパイラルスローランス』!」
「『ハンマー投げ』!」
「『シャドーウェイブ』!」
十分引きつけ、サターンとヘルクが防衛ラインを抜けた瞬間、シェリアの指示と共にクラスメイトたちの魔法とスキルがモンスターに殺到した。
【オーブメイジ】の女の子の手から火炎の渦が発射され、【ウィザード】の女の子の杖から吹雪の竜巻が放たれ、【大槍士】の女の子からは回転する槍が投擲され、【大撃槌士】の女の子は遠心力を加えながらハンマーを投げ、【シャドウ】の女の子からは無数の影が津波となってモンスターへ流れ込んだ。
「「「ツルツルテン―――!!!!」」」
追い立てていたモンスターたちは一斉攻撃を奇襲で食らって大ダメージを受けた。
行進も止められ、後ろから次々現れていたモンスターたちもダウンやノックバックしたモンスターが邪魔で進むことが出来ず、団子になっている。
大成功、大チャンスだな!
「今です! 接近戦組は突撃してください! 遠距離組は援護を!」
その声に隠れていた防御班のうち、接近戦を得意とする者たちが飛び出していく。
「私も行きます。『大精霊降臨』! ――『テネブレア』! テネブレア様、援護してください」
「――――」
俺の隣にいたシェリアが闇の大精霊テネブレアを降臨させた。
現れたのは漆黒の髪と紫の瞳を持ち、へそや肩が出ていていろんな所の肌面積が広い服装をした少女と女性の中間のような姿の精霊だ。左手に闇を思わせる球体を浮かべ、右手に赤黒い魔道書を浮かべている。
これが闇の大精霊『テネブレア』だ。主に敵へのデバフと〈闇属性〉の魔法攻撃を行なってくれる。
今回の〈拠点落とし〉では、おそらくメインで使う事になるだろう大精霊だ。
シェリアの指示の通り、敵のいるエリアにデバフ魔法が放たれ、そこに固まっていた敵モンスターは一斉にデバフに掛かった。
「『魔本・パワーブースト』! 『魔本・ディフェンスブースト』! 『魔本・マジックブースト』! 『魔本・スピードブースト』!」
そこにエミからのバフが届き、援護し、味方に強化を施していく。
「ありがとうエミ。続くよ、『魔弓・パワーショット』! 『魔弓・ブラインドアロー』! 『魔弓・光の四矢』! 『魔弓・狙撃』!」
「大チャンスだね! 行くよー『魔剣・ロングエッジ』! 『魔剣・サードストライク』! 大技の――『魔剣・光剣』!」
この夏休み期間でコンビネーションが磨かれたユウカが、エリアから脱出しようとするモンスターを優先的に攻撃し、サチが集団に突っ込んで大技を放った。強力な光を帯びた剣の振り下ろし、次いで起きた光の奔流とも呼べる衝撃波によって一気にモンスターがエフェクトに還る。ちょっと
この仲良し3人娘は以前のギルドバトルのときは攻めに出て、それが原因でバラバラの行動をして
今回の作戦はすでに五回目でだいぶ慣れてきている印象を受けた。
結局こちらの被害は微々たるものでモンスターの殲滅は完了し、今回の防衛ラインの死守は成功で終わる。
今度はもっと少ない人数で慣れさせないとな。
こうして訓練は授業が終わった後の放課後と、土曜日まで続いた。
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