第509話 クラス対抗戦準備のロングホームルーム。




 クラス対抗戦が来週月曜日から始まる。


 本来なら夏休み明けは第二回〈エデン〉加入大面接やCランクへの〈ランク戦〉をする予定だったが、間近に迫った初のクラス対抗戦の方が重要だとして、予定を先送りにした。


「クラス対抗戦で知名度を上げたほうが大面接でいい人を加入させられるかもよ?」


 というミサトのアドバイスを採用した形だ。


 それにクラス対抗戦はクラス替えに関わる大イベントだ。みんなこっちに集中したいという思いもあった。

 リーナやメルトを始め、この機会に1組を目指したいというメンバーは多い。


 ギルドでの活動は今週少なめにし、活動できる者たちの任意とする。


 残念ながらギルドメンバーに俺たちの上級職をお披露目するのは別の機会になりそうだ。

 むしろクラス対抗戦本番になるっぽいな。


「いいじゃない! 今のうちにいっぱい練習しておけばいいのよ! そして本番にかっこよく決めるの!」


 とはラナの弁だ。

 確かに、リアルだと職業ジョブの慣れに少し時間が要る。(ゲームでも要るよ?)

 いくら職業ジョブ補正が働いているといっても、それは『動かし方が分かる』であって『上手くなる』ではないのだ。

 お披露目で失敗したら恥ずかしいからな。ラナの言うとおりかっこよく決めるために今週は練習をしておくことにしよう。


 ちょうど、お披露目の機会が来週に迫っているからな。


 ラナと一緒ににっこりした。



 ということで今週はクラス対抗戦のための準備を主に進めた。

 スキルやSUPについて聞きたい人は俺を頼り、練習が必要な人は練習し、レベル上げが必要な人はダンジョンに行く。


 俺は装備の強化を施した。

 強化したことにより、俺の天空装備シリーズは上級下位ジョーカーでも戦っていけるほどに強化済みである。

 後はおでこ辺りにカチューシャのような形の鉢金タイプのヘルム〈不死鳥ヘルム〉や、白に近い銀色のブーツ〈踏み込みのブーツ〉、ブーツと同じ色の篭手〈白銀の篭手〉、体装備①には〈天空の鎧〉の下に着る形で軽装の服装備〈英雄の衣装〉を着込んで防御力をガツンと上げた。


 すべてがこの夏休み、中級中位チュウチュウでドロップした装備だ。


 今までは【勇者】自身の防御力〈VIT〉が高すぎたのと、俺があまりタンクをしなかったのとで防具を気にしなくてもここまで来れたのだが、さすがに中級上位ダンジョンの下層では厳しいからな。フル装備にした。

 マリー先輩に似合うようコーディネートしてもらったために最後のタダ券を使いきっちまったぜ。


 この装備なら一応上級下位ジョーカーまでなら何とかなるだろう。

 上級下位ジョーカーを攻略したらまた装備の更新をしなきゃな。



 平日の放課後はそのようにして過ごした。


 そして学業だが、ロングホームルームが設けられ、それぞれクラス対抗戦の作戦や情報共有に使うことになった。

 何しろ一年生は初めてのクラス対抗戦であり、しかもクラス替えに成績が直結するとあって、みんな真剣度が違う。


「クラス対抗戦で行われるのはギルドバトルでも採用されている形式の一つ――〈拠点落とし〉だ。攻め担当と守り担当を決め、基本的な役割分担、どう攻めるか、どう守るかを話し合おう。なお、身勝手な行動はクラスだけではなく、自分たちも不利になる可能性が高いため、クラスで一致団結して協力してほしい」


 教室の壇上で俺はみんなにまずそう話した。

 なぜ俺がここにいるのかというと、ギルドバトルで負け無し、一年生最強ギルドのギルドマスターという様々な理由で祭り上げられクラスリーダーとなった結果だ。

 ふふふ、いいだろう、全部やってやんよ! そして勝ってやるぜ!


 また、側にシエラもいて決まったことなどを黒板に記入していたりする。

 あと、ミサトも壇上で記入係だ。こっちは〈学生手帳〉に記入している。

 これが終わったら一斉送信でクラスに送るらしい。ちなみにプロテクトが掛かった状態なのでこのデータを他の第三者に転送することは出来ないらしい。相変わらずハイテクだな!


 とりあえず進行役として俺は先に進めよう。


「異論は……ないなら進めるぞ。まずは相手の拠点を落とす目的の攻撃担当と、自陣の拠点を守る防衛担当から決めよう。立候補はいるか?」


 俺がそういった瞬間、廊下側にある席の男子四人が一斉に手を挙げた。〈天下一大星〉の面々だ。

 さらに〈マッチョーズ〉の五人も手を挙げ、しかも筋肉まで盛り上げた。そこは上げないでよろしい。


「……じゃあ、まずはサターンから」


「ゼフィルス、我ら〈天下一大星〉は攻撃を担当させてもらおう。多くを蹴散らしてくると約束する」


 なんだかいつもと雰囲気が違う。無駄にキリッとした顔でサターンが言った。


「俺たち〈マッチョーズ〉も攻撃担当を希望する。全てを筋肉で無双してくるぞ!」


 続いてなぜか指されてないはずの〈マッチョーズ〉のギルドマスターも立候補する。

 気合いが入りすぎだぜ。


 まあしかし、内容に関しては予想通りだ。

 少し前に打ち合わせしたしな。

 あいつらは……、特に〈天下一大星〉には後がない。

 ここで防衛担当にしたらふてくされて戦力にもならないだろう。

 攻撃担当を任せるのは既定路線だ。

 防御担当も非常に重要だが、やはり攻撃担当の方が活躍の機会は多い。その分危険も多いけどな。


 俺が目配せするとシエラとミサトが攻撃担当に〈天下一大星〉と〈マッチョーズ〉を記入する。


「ギルド単位で動けた方が連携しやすいだろうからな。〈天下一大星〉四名と〈マッチョーズ〉五名を攻撃担当にすることを認める。ほかにやりたい人?」


 次に手を挙げたのは、【ハードレンジャー】のミューだった。


「攻撃、〈エデン〉もやったほうが、いい」


「いや、それだと防御が足りなくなるだろう」


「うん。だから半分くらいに割って、攻めも守りも〈エデン〉が指揮してほしい」


「なるほど、それなら構わないぞ」


 クラスの中でも半分くらいは〈エデン〉のメンバーだ。

 割るのは、まあ当然だな。

 しかし、指揮してほしいというのは意外だった。


「なら、攻撃担当と防衛担当で指揮する者を決めるか。攻撃担当の指揮官は俺がやろう、そうなると離脱したときや戦力を分けたとき用に副官もほしいか?」


 元々攻撃役も防御役も指揮官を務めるつもりだったので、俺が現場を離れてもいいように指揮する人を決め、攻めの方針、防御の方針なども話し合い、担当者を決めていった。


 結果、このように決まる。


 攻撃担当は〈エデン〉七名。

 ゼフィルス、セレスタン、エステル、カルア、リカ、パメラ、ミサト。そして〈天下一大星〉四名、〈マッチョーズ〉五名、計16人。


 防衛担当は〈エデン〉八名。

 シエラ、ラナ、シェリア、ルル、シズ、サチ、エミ、ユウカ。そしてミュー、他女子五名。計14人。


 指揮官は結局、――攻防総大将、俺。――攻撃副官セレスタン。防御副官シェリア。


 こんな感じに決まった。



 ーーーーーーーーーーーー

 後書き、失礼します。

〈拠点落とし〉のルールについて。

 クラス対抗戦はもう少し先なので、忘れないために直前になったら詳しく説明する予定です。

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