第410話 ギルドバトル〈四角形(障害物)〉フィールド




〈四角形(障害物有り)〉フィールド。


 今回のDランク昇格試験が行なわれるフィールドの地形について、今までに無かったものがある。

 それは障害物。


 今までフィールド内であれば比較的自由に上下左右斜どこでも行けたのだが、今回のフィールドでは所謂いわゆる侵入不可というエリアが登場する。


 どんなエリアなのかと言うと、何のことはない、ただの観客席だ。

 実はこの〈四角形〉フィールド、フィールドに観客席が設けられており、選手たちは観客席に侵入不可となっているのである。

 観客席は〈四角形〉フィールド内にまるでHの字のように配置され、北と南は中央の観客席によって分断されている。


 本拠地はその分断する中央の観客席をちょうど挟むような位置に配置され、本拠地同士の距離は今までで一番近くなっていた。まあ観客席によって分断されているため回りこまなければいけないが。


 また、観客席への攻撃はダンジョン機能で全て無効化される。観客席は破壊不可オブジェクトみたいな扱いだ。バリアみたいなものが張られ、選手から観客への攻撃はもちろん、観客から選手への手出しも封じられている。

 すごいハイテクだなダンジョンって。これほど安全な観客席もそうそうないだろう。


 さてフィールドの説明の続きだが、今回の巨城は6つ。

 東側に「北」「中央」「南」に一つずつ。

 西側に「北」「中央」「南」に一つずつ。

 配置されている。


 それぞれ東にある物を、〈北東巨城〉〈中央東巨城〉〈南東巨城〉と呼称。

 それぞれ西にある物を、〈北西巨城〉〈中央西巨城〉〈南西巨城〉と呼称。


 配置箇所はHの形の観客席、縦線の外側に配置されている。


 またこの観客席だが、今回は障害物入門編ということで完全にHの形に塞いでいるわけではなく、Hの縦線と横線の合流地点は空白マスとなっている。つまり選手たちの行き来が可能だ。

 観客席には連絡橋が架かっているため観客は上を行き来し、下の部分は選手が行き来できる地帯となっているわけだ。


 またHの縦線もフィールドの端まで届いているわけではなく途中で連絡橋になっているため最北と最南は通行可能だ。

 通行不可なのは「中央」の横線と、「北東」「南東」、「北西」「南西」の縦線の5カ所だけだ。


 これが上位のギルドバトルだと、まるで迷路のようなフィールドになったり、行き止まり溢れる厄介な形なんかになっていたりする。

 今回は行き止まりや迷路がないだけ軽く、簡単な障害物というコンセプト、というわけだ。

 まさに試験向き、入門編と言ったところだろう。


 うーむ、これからは迷路型フィールドも増えるだろうし、守りの「伯爵」専用職業ジョブが欲しいところだな。

 貴族にはそれぞれ系統が存在する、「公爵」なら武官系、「侯爵」なら武士系。「子爵」ならヒーロー系で、「男爵」ならアイドル系なんかがそれに当たる。「伯爵」にももちろんそれに該当する系統があるのだが、今後のギルドバトルのことを考えれば早めに欲しいところだ。


 すでに〈エデン〉にはシエラとメルトというカテゴリー「伯爵」が2人いる、ゲーム〈ダン活〉では「伯爵」は2人までしかギルドに加えられなかったがここはリアル。もしかしたら3人目も加入可能かもしれない。今まで〈名声値〉無視などリアルの恩恵を考えれば不可能ではない気がするのだ。

 上限解放とか、夢が広がるなぁ。


 おっと話がそれた。


 Dランク試験は〈10人戦〉、つまり10人対10人の同数でギルドバトルだ。

 前回のEランク試験より格段に難易度が高いな。

 そしていつも通り〈城取り〉。今回は制限時間40分だ。

〈六芒星〉フィールドの時は第五アリーナで制限時間45分だったが、今回は第六アリーナで少し会場が狭い、その分マス数も少ない。制限時間も第六アリーナだと大体30分から40分くらいとなる。


 そして今回は今までになかった特殊ルールが加わる。

 その名も〈敗者復活〉。


 名前のとおり、〈敗者のお部屋〉に送られた人が復活し、ギルドバトルに帰ってくる特殊ルールである。

 内容は『戦闘不能になってから10分経過』すると自動で復活。『復活後ステータス10%低下』し『本拠地に復活』するというルールだ。

 また、『復活は1人2回まで』。1度目なら『ステータス10%低下』し、2度目復活なら『ステータス20%低下』で復活する。3度目以降は復活しない。

 このルールは特殊ルールなため通常なら『無し』ではあるが、ローカルルールとしてお互いが合意した場合『有り』となる。


 今回は昇格試験なのでこれも経験ということで組み込まれている形だ。


 このルールがあると本拠地を落とすのが途端に難しくなる代わりに対人戦が起こりやすくなり、それなりに人気のあるルールである。


 その他にも、誰かが戦闘不能になった場合、補欠メンバーを出す〈選手交代〉や、手に入れた城Pポイントを消費して即選手を復活させる〈ゾンビ〉など、様々なローカルルールが存在する。

 今回〈選手復活〉以外は『無し』だけどな。




 今回俺たちは白チーム、相手役のDランク〈はな閃華せんか〉ギルドは赤チームとなっている。

 本拠地は白の〈エデン〉が北側となる。


 セレスタンとミサトの情報だと、〈はな閃華せんか〉は女子のみで構成されたギルドで所属人数は19人。

 三年生が8人、二年生が7人、一年生が4人だそうだ。

 今回は主に二年生が相手をしてくれるらしく、三年生が3人、二年生が7人という構成らしい。


 また職業ジョブの構成だが、〈はな閃華せんか〉ギルドは剣や刀系の武器を愛用している者が多い傾向があるらしい。

 その職業ジョブも【ソードマン】【魔法剣士】【刀剣豪】など、所謂いわゆる【剣士】系が多いようだ。


 ゲーム〈ダン活〉時代もあったな、こういう何かしらに傾向している系ギルド。

 話が合う者で構成された部活、仲良しギルドなどに近く、剣士ギルド、とか魔術師ギルドなどと呼ばれる分類だ。


 しかし、ここはリアル。全ての学生がガチ勢の世界。

 相手の構成を見てみると、ちゃんと魔法職、回復職、盾職、戦士職も入っている。

 剣士のみというギルドではない、ということだろう。

 その辺、学園が選んだ試験用ギルドということだ。


 俺たちDランク試験の出場者はアリーナの控え室に集まり、今後の展開の予想と攻略方法について作戦会議を行なった。

 今回の出場者はDランク試験の条件をクリアした10人、


 【勇者】ゼフィルス、【盾姫】シエラ、【聖女】ラナ、【姫騎士】エステル、【スターキャット】カルア、【姫侍】リカ、【ロリータヒーロー】ルル、【精霊術師】シェリア、【戦場メイド】シズ、【女忍者】パメラ。

 以上のメンバーだ。他のメンバーとサブメンバーは観客席にいるはずだ。


 そこから最初は2チームに分かれ、まずはいつも通り、相手と巨城先取の競争だな。

 今回白の本拠地と赤の本拠地に一番近いのは〈中央東巨城〉と〈中央西巨城〉の2箇所。

 初めて巨城2箇所の取り合いとなる。


 巨城数も今まで奇数だったのに今回は合計6つと偶数であり、3つずつ先取した場合は小城の取得や対人戦で勝敗が分かれるだろう。本拠地も狙われることになる。様々な状況を考慮しなければならない。

 まったく、Dランク試験においてこれ以上は無いほどのフィールドだよ。


 時間となり、選手たちが入場する。今回は西側から入場し、そこで〈はな閃華せんか〉ギルドと対面し、お互いに礼をする。

 中央が観客席で分断されているので出入口での礼だ。


「今日はよろしくお願いします」


「「「「「よろしくお願いします」」」」」


 対戦相手にはスポーツマンシップに則り礼をとる。

 あまり知らない相手だったので会話は最低限の事務的なものの域を出ず、そのままお互いのチームの本拠地へと向かう。


 なんだか相手チームの人たちがチラチラと俺を見てくる気がするのはどういうことだろうか?

 それにうちの女子たちが妙に鋭い目で相手チームを見ていたのが妙に気になった。

 シエラが相手チームの視線からまるで俺を守るように後ろに配置し付いてくるのだ、まだ対人戦には早いよ?


 お互いが本拠地に移ると上空にある巨大スクリーンにカウントダウンが映し出された。


 本拠地近くの観客席は意外なことに人で埋め尽くされていた。

 よく見れば俺の授業の生徒たちもいる。

 本当に来てくれたのか。ちゃんと『ゼフィルス先生』の横断幕広げてるよ。ははは。


 さて、俺の生徒たちに無様は見せられないな。


 上空の巨大スクリーンを見る。

 カウントダウンはもう秒読みだ。

 呼吸を落ち着かせスタートダッシュの準備を取る。


 Dランク昇格試験だというのにみんなあまり緊張が無いな。


 まあいつも通りやればいいのだ。問題は無い。


 カウントダウンがゼロになり大きくブザーが鳴り響いた。

 Dランク昇格試験ギルドバトル。


 ―――開始。



 ---------------

 作者から後書き失礼します。

 近況ノートに〈四角形(障害物)〉フィールドのイメージ図を添付しました。

 よろしければ見てみてください。

 タイトル:『〈ダン活〉第410話 進行状況イメージ図』

 https://kakuyomu.jp/users/432301/news/16816700427917219131


 また、前回要望がありました、図の色をもっとやわらかいものにしてほしいというものを参考にし、前回とは色を変えております。

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