第402話 続・〈支援課〉採用枠! 【冒険者】は不採用。
ニーコの自己紹介が終わり次へと進む。
「私だね」
ニーコの隣に座っていた女の子が立ち上がってペコリと頭を下げた。
あまり整えられていないボーイッシュなショートの紫髪がサッと揺れ、同じく紫の目は力強く、気が強そうなスポーツ女子を思わせる。飾り気は無く、見るからに体育会系といった雰囲気だ。
身長はエステルに迫るだろう、健康的な脚が美しい。
「私もニーコ君と同じく〈支援課1年2組〉に所属している、カイリという。以前はEランクギルド〈アドベンチャーズ〉で活動していたのだが、諸事情あって〈アークアルカディア〉でご厄介になることになった。
そう言って再びペコリと礼をするカイリ。
全員が拍手を送る。
実はカイリもニーコと同じく、こちらがスカウトした組の1人だ。
【探索者】系の
カイリの言った通り、斥候から索敵、罠の発見に解除、宝箱の探知に隠し部屋や隠し通路の発見も出来、地図の作製技能も持つ。さらに上級職になれば上級ダンジョンから発生する地形についても対処が可能で、ついでに採集系にも多少の補正を持っている。
正直、〈戦闘課〉以外ならどこでも活躍できる万能
その代わり、戦闘関係のスキルは一つも無い。完全に探索特化構成である。
戦闘力は正直あまり期待できないが、ダンジョン道中だけを見ればかなり強力な
今後、上級ダンジョンへ進出するにあたり、非常に面倒な地形が登場する。
砂漠、火山、氷雪地帯、雪山、樹海などなど。地形ダメージなんかも登場するようになる。
そういう場所ではアイテムである程度防げたり切り
いないと絶対行き詰まるからな。
ちなみに近い系統に【冒険者】というグループもあり、こちらは戦闘にも精通している、しかしその分探索においては微妙な部分も有り器用貧乏になりがちだ。生産職が戦闘をやるようなものに近く、どっちつかずな部分がある。
そのため、どちらかというと戦闘は戦闘職、探索なら【探索者】系を使おうというのが俺の考え方だった。
もちろん【レンジャー】や【ハンター】などと組み合わせて欠点を補いつつ【冒険者】を使うのも有りだ。
これは人の好みにもよるな。
改めて俺はメンバーに【探索者】の有用性を語る。
「上級は地形がネックになる。実は〈サンダージャベリン号〉では走破できない悪路も盛りだくさんになるし、隠し通路があって下の層への道が隠されている事もある……そうだ。そんなときに【シーカー】が居れば攻略が容易くなるだろう」
上級ダンジョンのことなので、聞いた話だ的な感じにしつつ語った。
「昔〈キングヴィクトリー〉を散々苦しめたという地形の事ね。当時王子だった現国王様が【シーカー】をメンバーに加え、難関を突破したと聞くわ」
そう補足してくれるのはシエラだ。
初見の上級では【シーカー】もしくは【探索者】系上級職を入れるのは正解だ。
隠し通路とか、ゲームではヒントがあったけどすごく見逃しやすかったし、【探索者】系を入れておかないとまずクリアできないだろう。いや、できなくはないが、【探索者】無しでやろうとしたら、どんだけ時間を食われるか分からない。
当時の王の判断は英断と言えるだろう。
「ほへぇ」
シエラの話を聞いてハンナがほへる。
メンバーのカイリを見る目が変わったな。
「ふふ、期待が熱いな。私に出来る限りのことはさせてもらうつもりだ。頑張らせてもらうよ」
カイリはそう恐縮そうに苦笑いして席に着いた。
こんな優秀な
カイリが元所属していたギルド〈アドベンチャーズ〉は【探索者】や【冒険者】、〈採集課〉や〈罠外課〉、そして〈調査課〉など様々な分野の
そこだけ見れば優秀な人材の宝庫と言えるギルドだろう。
ただ欠点を上げるとすれば戦闘職がほぼ居なかったことだ。
故にダンジョンで成果を上げられず、ギルドバトルすら挑めず、ずっとEランクギルドに甘んじていたらしい。
〈アドベンチャーズ〉に所属するメンバーはその才能を生かし切れず、埃を被りまくっていたのだ。
そこに登場したのが我らが頼れるスカウトマン、ミサトだ。
俺の要望通り、【探索者】系、できれば【シーカー】を頼む、という依頼を遂行するためミサトが直接〈アドベンチャーズ〉に乗り込み交渉。
〈アドベンチャーズ〉には【探索者】の3年生が2人、そして【シーカー】のカイリが所属していたので、まずカイリが候補に上がったのだ。
また、【冒険者】ですっごい売込みをかけてきた人もいたらしいが、【冒険者】の高位職【ビッグアドベンチャー】ならともかく【冒険者】はいらないので断った。
カイリは性格的にも問題はなかったため、〈エデン〉の要望通り、【シーカー】のカイリに決まった形だ。
選ばれなかった【冒険者】の人は膝から崩れ落ちて眼から大量の汗を流していたらしい。
ミサトが「たはは~」と言いながら、そう報告してくれた。口ぶりからその人はミサトの知り合いだったっぽいが。
「いいのか?」と聞いたらいいらしいのでそのまま【シーカー】のカイリを採用し、引き抜いて今に到る。
すまんな【冒険者】の人。
そういえば、その人は「ならば俺は自力で合格してみせる!」と言っていたらしいが、その後どうなったのだろう?
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