第394話 中級中位ダンジョン制覇! 準備は整ったぜ!




 ダンジョン週間はその後予定通り進んだ。


 2日で1つのダンジョンを攻略していき、順調に進む。

〈猫ダン〉をクリアした次の日は、これも上級生に人気の無い、〈蠍毒さそりどく砂塵さじんダンジョン〉の攻略に挑んだ。


 名称の通り砂塵が吹き荒れていて視界が悪く、風がビュービュー吹き付ける。

 さらに地面から湧いて出るサソリ型モンスターが面倒で、尾の一撃を食らえば〈毒〉状態にされてしまう。種類によっては〈麻痺〉〈混乱〉〈睡眠〉まで付与してくる厄介な相手だ。

〈猫ダン〉で手に入れていたレシピ、〈浄化の粉塵〉が早速役に立つぜ。ここを2番目のダンジョンに選んだ理由だな。

 ここは〈体内状態異常〉しか付与してこないのだ。


 まあ、食らわないに越したことはないのだが、前足のハサミによる連続攻撃に気が抜けない。両ハサミの対応をしていたと思ったら尾針が降ってくる。しかも意外に素早く、パワーも強い。これにやられてしまう学生は多いらしい。


 しかし、ここは物理型ダンジョンなのでタンクが優秀ならわりと余裕だ。

 リカが〈猫ダン〉の失態を取り戻すかのように攻撃を弾きまくっていたな。

 サソリは遠距離攻撃が少ないため、リカは相性がいいダンジョンだ。

 状態異常は俺、ラナで対応、対応が間に合わない場合は〈浄化の粉塵〉を誰かが使って切り抜けた。特に大きな問題も無く、ここも2日で攻略を終える。


 上級生に人気の無いダンジョンなので周回自由だぞと思っていたのだが、これには女子が反対。ボスを狩ったらすぐ帰還することとなった。

 まあ、うん。仕方ないか。虫モンスターの悲しい性だ。


 ちなみに隠し部屋は5カ所を回った。全部〈銀箱〉だ。


 また、レアモンスターを回復した〈オカリナ〉の力を使って3回チャレンジし2回成功。

 レア素材の〈金サソリの猛毒針〉を2つゲットしたのだが……、女子たちがこれを使うのを拒否したのでマリー先輩のギルド行きとなったのは残念だ。これを使って『毒攻撃』『麻痺攻撃』『混乱攻撃』『睡眠攻撃』のいずれかが付与された武器はかなり強いのだが。


 また、〈猫ダン〉にも再び行って〈ニャブシ〉狩り&〈オカリナ〉で〈ゴールデンニャニャー〉狩りもした。〈ニャブシ〉は〈木箱〉だったが、レアモンスターの方は3回チャレンジし1回の成功。パメラの〈解体大刀かいたいだいとう〉が今度は発動してこれで〈小判〉が計5つになった。強化した後、下部へ貸与する準備も進めておこう。


 さらに〈猫ダン〉でついでに行き止まりを調べたときのことである。

 なんと初めて行き止まりで〈金箱〉を見つけることができたのだ。嬉しいことである。ほくほくだ。

 中身は〈ニャウジング〉といってダウジング機能を持つ猫型アイテムだった。

 これで探したい素材やアイテムを登録して探すと、近づいたら「にゃーーんにゃーーん」と鳴いて教えてくれる。〈採集課〉や〈罠外課〉に喜ばれるアイテムだな。


 ちなみに宝箱を開けたのはハンナである。久しぶりの〈金箱〉だと言って嬉しそうだった。




 続いてダンジョン週間最後の土日。3つ目のダンジョン攻略場所として狙いを付けたのは〈猛獣の集会ダンジョン〉。

 ここは結構変わったダンジョンで、基本的に道と広場が交互に続き、モンスターが広場にて待ち構えているダンジョンだ。

 道でエンカウントはしない代わりに広場では戦闘を避けられない。


 さらに出てくるモンスターたちは大体が5体~6体の〈ウルフ〉系のモンスター集団で楽なバトルが無い。モンスター1体1体が連携し、わりとタフなので時間も掛かる。

 ここを通りたくば我らを倒して見せよ的な、そんな弱肉強食なダンジョンだ。

 普通ならあんまり来たくは無いダンジョンである。


 しかし、〈ダン活〉のデータベースと呼ばれた俺に死角無し。

 知っている者からすれば、ここほど攻略しやすいダンジョンはないだろう。

 ここのダンジョンはあれだ、ただの迷路めいろ遊びみたいなものだ。

 子ども向けの簡単な迷路の本の内容に近い作りをしている。


 つまり、広場を避けてゴール次の層へ向かうルートがあるのだ。

 しかも全階層に。広場に行けば戦闘は避けられないなら広場に行かなきゃいいじゃない、である。


 実は全ダンジョンの中で唯一と言っていい、一度もエンカウントせずにボス部屋まで行くことが可能なダンジョンなのである。

 まあ、隠し部屋や採集をしたければ広場を通らなくてはいけないので、あくまで最下層に行きたいだけの場合のみに限られるが。


 ここをダンジョン週間中の最後のダンジョンに選んだ理由はまさにそのエンカウントせずに最下層まで行けるというのが最大の理由で、もし時間が切羽詰まった場合はエステルとセレスタンのダブル馬車による強行軍で一気に最下層まで行き1日未満で終わらせようと画策していたからだ。このダンジョンだとそんなことが可能になってしまうんだよなぁ。


 というわけで、予定を1日繰り上げ、土曜日。

 エステルとセレスタンによる2台強行軍を行ったのだった。別に切羽詰まった時にしか使わないとは言っていない。セレスタンも仕事がひと段落したとのことでダンジョンへ誘ったのだ。

 ただ入場制限をクリアしていないのでセレスタンには学園からレンタルした〈『ゲスト』の腕輪〉を装備してもらっている。


 ハンナも連れて、攻略10人+補助2人でのダンジョン探索となった。


 途中の守護型ボスと徘徊型ボスだけ丁寧に倒してあげて最下層に到着。

 最下層のボスは初級にも登場した〈バトルウルフ(第三形態)〉とお供が4体。

 前に初級中位ショッチューのボスをしていた〈バトルウルフ〉の進化した姿だ。

 体長は4メートルに迫り、体色は黒、目は赤く不気味に光っており、禍々しい邪悪な猛獣というイメージを抱かせる。

 さすがにモフモフ好きのルルでさえ、俺の背中に隠れてそっと片目を出して見つめているくらいには近づきがたい相手だ。


 俺を見つめても尻尾が垂れない。よほど自分の戦闘力に自信を持っているらしい。

 よっしゃその自信、粉々に砕いたるーと突撃。

 普通に勝った。


〈バトルウルフ〉は何度も登場する関係上、ゲーム〈ダン活〉時代でおそらくトップクラスの討伐数を誇っている俺だ。もう対応策が身体に染みついていて、まったく苦戦らしい苦戦をしなかった。

 だから〈バトルウルフ〉は大好きである。


 さあ、こんな狩りやすいダンジョンとボスはそうはいないぞ。

 ここでLVをカンストまで上げるのだ! 明日の夕方まで狩り続けるぞ!

 そして行こう。上級職へと!


 日曜日の夕方、俺を見ると尻尾が垂れてしまう〈バトルウルフ〉になってしまったが、きっと気のせいのはずだ。


 そして嬉しい報告がある。


〈バトルウルフ〉の乱獲によって〈金箱〉をなんと6個もゲットしたのだ!

 なんかめっちゃ落ちるぜ〈金箱〉ラッシュ!

〈金箱〉が出やすくなる〈金猫の小判〉が良い仕事をしたのも手伝っただろう。

〈幸猫様〉に渡すお高いお肉はレアモンスターの肉に決定した!


 俺は【勇者LV71】まで上がり、とうとうカンストが見えてきた。

 他のみんなも大半がLV65超え。ラナとエステルに関しては俺と同レベルだ。

 さすがに2日の周回でカンストへ持って行くのは無理があったが、次の土日でカンストまで届くだろう算段だ。


 いや、その前にDランク試験だな。

 今回の〈バトルウルフ〉でとうとうDランク試験の条件を満たしたのだ。


 ふはは! 順調だ! とても順調に〈エデン〉は強くなっている!

 今週中には〈エデン〉はDランクになるぞ!


〈エデン〉の邁進まいしんは、まだまだ続く。




 第七章 -完-




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