第393話 オカリナの試運転! 〈金ニャニャ〉を狩れ!





〈レアモンのオカリナ〉、レアモンスターを70%の確率で呼び寄せる〈笛〉アイテムだ。

 オカリナ自体に金色のオーラが光っており、さらに〈レアゴールデンモンスター〉を呼び寄せるため、別名:〈金笛〉とも呼ばれ、〈ダン活〉プレイヤーのみんなに大変尊ばれてきた。

 ちなみに大体の人は〈オカリナ〉と呼ぶ。〈金箱〉や〈笛〉と間違っちゃうから。


 この〈オカリナ〉、〈レアモンの笛(ボス用)〉より希少度で言えばこちらが下となる。レアボスドロップではなく通常で落ちるからな。

 さすがにレアボスを呼ぶ〈笛〉には勝てないのでこのような配置となっているらしい。故に、回数の回復代なども〈オカリナ〉の方が安く設定されている。


〈レアモンスター〉は必ずレアドロップを落とし、ほぼ一撃で倒すことができるが、非常に撃破すること自体が難しい。レアモンスターは逃げるからな。

〈オカリナ〉自体の回数も4回しかないので実質3回しか使えない、回数を全て使い切ると壊れる仕様も同じだ。チャンスは少ない。

 つまり、実際の運用はかなり難易度が高いらしい。逃げられたら、赤字だ。


 それもあってリアルでは〈レアモンの笛(ボス用)〉の方が人気は上らしい。

 後で早速〈オカリナ〉を使ってみよう。ゲームとどれくらいの差異があって難易度が高いのか見極めなければならないな。


「そういえば、今回は〈笛〉を使わないんだよね?」


「ああ。まだ全体のレベルが低いからなぁ」


 ハンナが〈オカリナ〉を見て思い出したのか〈笛〉の運用について確認してくる。


 さすがにまだ中級中位チュウチュウでは〈レアモンの笛(ボス用)〉は使えない。少なくとも今は。

 LVカンストまで行かなくちゃ、まだちょっと危ないからな。

 相性の良い5人でパーティを組みなおせば問題ないだろうが、今の2チーム分けで挑むのは相性の問題でちょっと遠慮したい。下手をすれば全滅すると思われる。


 今は通常ボスで周回してレベル上げだな。


 続いてシェリアが少し寂しく1人で開けた宝箱。

 こちらにもとんでもないものが入っていた。

 手に取ったシェリアの声が震える。


「こ、これは! 可愛い仔猫のぬいぐるみ!」


「おおぉぉ! こいつは〈仔猫様こねこさま〉だ! 〈仔猫様〉いらっしゃったぞ!!」


 こいつはやべえぜ。


 シェリアが震える手で持っていたのは〈幸猫様〉と合わせるとコンボスキルを生み出す〈仔猫様〉だった。〈仔猫様〉のお出ましだ!


 正式名称:〈幸運を分け与える仔猫〉。

 それは〈幸猫様〉と同じく、素晴らしくデフォルメされ、女子高生にバズりやすく調整された、仔猫のぬいぐるみ。色合いは〈幸猫様〉によく似ており、〈幸猫様〉が成猫であるなら〈仔猫様〉は仔猫と言われるほどだ。大きさは〈幸猫様〉の三分の一程度。


〈ダン活〉プレイヤーの中にはこの子たちをセットにして〈親子様〉なんて呼んでいた者もいた。

 その理由は〈仔猫様〉の能力にある。

〈仔猫様〉もギルド設置型アイテムであり、その能力は『〈幸運を招く猫〉〈幸猫様〉があるとき、下部組織ギルドのメンバーにも『幸運』を付与する』というもの。


 ゲームでは下部組織ギルドから献上されるアイテム、素材、資源のランクや質がアップするという効果だった。たまに〈上級転職チケット〉とかくれたからな。

 さすがに〈幸猫様〉ほど効果は高くないが、その可愛さ200%の見た目と何より〈幸猫様〉が居るときに効果を発揮するという能力から、すっかり〈仔猫様〉の名前が定着してしまったアイテムだ。


 しかしである、これ、リアルになった今だととんでもない効果になるんじゃない?

 下部組織ギルドに『幸運』を付与するとか、とんでもない事態だよ!?

 現在下部組織ギルドを創立している中、なんてタイムリーな出来事だろう。


 さすがは〈猫ダン〉! 〈猫ダン〉さすが!


 何たる幸運! 思わずクルクルと踊りだしそうな自分を制御するのが大変だったくらいだ。さすがに2度目はシエラが許してくれないだろう。


 俺は〈幸猫様〉と〈猫ダン〉と〈小判〉と〈仔猫様〉に深く感謝を祈った。

 ふははははは!!


「こ、これは! 可愛い、凄く可愛いわ!」


「はい。もうとんでもなく凶悪な可愛さです!」


「シ、シェリア、どうか私にももっとよく見せてください」


「ルルも! ルルもよく見たいのです!」


 俺が少し祈っている間に〈仔猫様〉は女子たちに囲まれていた。さすがだ。

 ラナ、ハンナは当然として、いつのまにかエステル、そして俺と宝箱を空けていたはずのルルまでがシェリアのとなりで交渉している。

 これが〈仔猫様〉の魔力! 俺も実物を見たいのだが、さすがに今は難しそうだ。

 そのまま落ち着くまで少し待った。




 しばらく時は経ち。


「では、すんばらしいレアアイテムの〈オカリナ〉をゲットしたので、早速使おうかと思います! 使ってみたい人?」


 そうみんなに宣言すると4人の手が挙がる。

 真っ先に手を挙げたのは、ルルだ。


「ゼフィルスお兄様! ルルが、ルルが吹きたいのです!」


「おお、いいぞいいぞ~。ルルが一番に吹きなさい」


「ちょっとゼフィルス、私は!」


「ラナは二番でもいいだろ?」


「むう。まあしょうがないわね」


「ラナ殿下、できれば二番を譲っていただけませんか? ルルの次に吹くのは私です」


「ちょっとシェリア、目が本気よ!」


 ダメだった。〈仔猫様〉がいらっしゃると本当に時間だけが無駄に過ぎていったので、こりゃアカンと女子たちを敵に回しつつなんとか〈仔猫様〉を回収。

 後でギルドに持ち帰ってからじっくり鑑賞しなさいと女子たちを宥めて、それでも収まりそうに無いのでルルとの共同作業でゲットした〈オカリナ〉をひけらかしてなんとか思考を誘導することに成功して今に到る。


 今回俺が吹くのは論外なので女子たちに任せよう。

 俺はそっと彼女たちから目を逸らす、別にシェリアが怖かったわけではない。

 ちなみにあと1人手を挙げたのはカルアだった。

 今日吹けなかった人は明日吹いてもらおう。吹く機会はこれからいくらでもある。


 みんなで一度39層へ向かい、そこでルルに〈オカリナ〉を吹いてもらう。


「カルアとパメラ、準備はいいか?」


「ん。いつでも行ける」


「準備万端デース!」


「よっしゃルル、吹いてみ?」


「ハイなのです! は~、―――♪―――♪」


 ルルがオカリナを吹くと、森の中に耳心地の良い笛の音が響き渡った。

 すると、さっきから森でノンアクティブモンスターだった猫型モンスターがさらに大人しくなる。まるでオカリナの音色に聞き惚れているかのように寝そべり、リラックス状態だ。

 一部の女子たちがリラックス猫を見てキャッキャ言っている。


「成功していればすぐに現れるはずだから逃がさずに狩るんだぞ」


「ん、『ソニャー』! ん、発見、出てきた」


 カルアが手を耳の後ろに当て『ソニャー』で索敵していると、出てきたようだ。

 森から音色に誘われるように靴下模様のレアモンスター〈ゴールデンニャニャー〉が飛び出してくる。

 フィィッシュ!! 釣れたぜぇぇっ!! 70%大成功! 猫釣りだぁぁ!!


 だがまだだ、いつもとは違いレアモンはこちらをバッチリ視認している。

 エンカウントしても気が付かれていたら逃げられる。これレアモンスターの常識。

 故にプレイヤーは相手にターンが回る前に速攻で倒すのだ。


「ニャ!?」


「逃がさない。『ナンバーワン・ソニックスター』!」


「ニャ!」


「油断大敵デース! 『一刀両断』デース!」


「クニャァ……」


 〈ゴールデンニャニャー〉が気が付き、速攻で逃げの姿勢に移ろうとするが、そこへカルアが一瞬で移動して逃げ道に立ちはだかり、パメラがスピードのある斬撃、『一刀両断』を使って一気に狩った。見事な連携だった。

 俺は拍手を送って彼女たちを出迎える。


「素晴らしい! 素晴らしいよ! これで〈小判〉が……計3つになった!」


 今回もパメラが〈解体大刀かいたいだいとう〉でスパンしたのだが、今回は〈動物型モンスターのドロップ2倍〉が発動しなかったようで1個だけだ。

 くっ、残念!


 さらにその後、〈オカリナ〉を勝ち取ったシェリアが2回目を吹き、〈ゴールデンニャニャー〉が現れたが、これは逃げられた。

 出てきたはいいが道の端にいて、こっちに気が付くと同時に森の中に逃げて行ったのだ。

 カルアが回り込もうとしたが今回は〈ゴールデンニャニャー〉が逃げ勝った形だ。

 あれは位置が悪かったな。ドンマイだ。


 次のラナでは〈ゴールデンニャニャー〉が現れなかった。

〈オカリナ〉失敗だ。残念。


 しかし、〈小判〉が計3つである。これは素晴らしすぎるな。

 3つ目は強化してメルトたちに渡しておこう。できればもう2つはゲットして、下部組織ギルドに渡したいところだ。

 下部組織ギルドの強化にも繋がるし、時間があるときにでもゲットしておこう。


〈オカリナ〉の回数が残り1回になったのでレアモンスターはここまでとなった。

 帰ったら回復しないとな。この回復代はギルド予算から下りることになっている。

 ラナがふくれていたが〈オカリナ〉を回復後、また吹いてもらうと約束をして事なきを得た。


 続いてBチームも〈猫キング〉に挑み、見事に勝利する。聞く限りAチームより安定した勝利だったらしい。

 うむ、あっちには〈エデン〉のトップ盾のシエラと超回復のラナがいたからな。

 こっちより安定しているはずだ。勝てたようで良かったぜ。


 そこから周回が始まり、午後9時までAチームとBチームは交互にボス戦を繰り返したのだった。


 ちなみに〈金箱〉はAチームがさらに1回、Bチームはなんと2回もドロップした。

 うち1つは〈上級転職チケット〉だった。これで4枚目のゲット!

 後1枚で上級ダンジョンの準備が整うな。

 『妖怪:後一個足りない』が出ないことを祈るぜ。




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