第342話 終盤戦対人戦。〈エデン〉VS〈天下一大星〉
終盤戦。
〈『白11,950P』対『赤7,270P』〉。その差、〈4,680P〉。
白巨城3つ、赤巨城2つ、保持。
〈エデン〉と〈天下一大星〉との差は徐々に開きつつあった。
ギルドバトルが始まって35分が経過し、残り時間10分を切った。
この辺りから自陣のマスの位置や配置、保護期間になっているマスが重要になってくる。
先ほども言ったとおり〈天下一大星〉が勝つには残り時間2分以降に〈エデン〉の本拠地を落とす必要があるからだ。
つまり残り時間2分の段階で本拠地の隣接マスを取らないといけない。
どんな仕掛けかは知らないが、本拠地はバリアが張られていて相手チームは侵入できない。攻撃も当然通らない。
侵入するには隣接マスを取る必要がある。
隣接マスが取られると、バリアが解かれ、そのマスからの侵入が可能になるからだ。
〈天下一大星〉の戦略として、本拠地隣接マスを取る動きが求められる。
そして対する〈エデン〉は
〈エデン〉の本拠地がある北エリアは今、激しいリバーシ大会が行なわれていた。
「シェリアさん北へ2マス! セレスタンさん南東マスを! パメラさんとシズさんは南西マスへ!」
本拠地へ近づこうとする〈天下一大星〉と、それを押しとどめる〈エデン〉たち。
しかし、その結果はほとんど一方的だった。
何しろこちらには【姫軍師】がいる。〈竜の箱庭〉がある。
しかも人数差もあり、〈天下一大星〉は徐々に追い詰められていた。
リーナが指示を飛ばすことで非常に効率よくマスをひっくり返していたのだ。
北エリアはすでに白マスだらけである。
残った赤マスは僅かで、〈天下一大星〉は徐々にそのマスを少なくさせている。
このままではマスの道が途切れ、〈天下一大星〉が北エリアから追い出されるのも時間の問題だった。
現在〈天下一大星〉は8人というほとんどのメンバーが北へと入っているが、やはり司令塔の有無はいかんともしがたい様子だ。
〈天下一大星〉が勝つ可能性としてもう一つ、全ての巨城を落とすという作戦もあるが、これも現実的ではない。
1つでも巨城をひっくり返されたら負けなのだ。巨城を5つ持っていないとその時点で〈天下一大星〉の負けが決定する。
時間も戦力も足りないだろう。
ということで、このまま行けば〈天下一大星〉を封殺して勝ちである。
しかしだ。それでは楽しくない。
ギルドバトルには観客が存在する。
コメントの雨が降る。
観客たちが熱狂するステージなのだ。
このまま終わらせるにはあまりにも呆気なかった。
「リーナ。俺も出る」
「ゼフィルスさん?」
花が欲しいな。
観客を熱狂させる花が。
ギルドバトルの花といえば、対人戦だ。
さっきの対人戦の盛り上がりはすごかった。
ほとんど一方的な展開に持ち込めたことが大きいだろう。
熱いバトルも盛り上がるが、戦略的に上手く制圧するのもそれはそれで盛り上がるのだ。
〈天下一大星〉だって〈エデン〉のメンバーだって望んでいる。
対人戦。
ギルドバトルに勝利はできる。ほぼ勝ったようなものだ。
だからこそ、また解禁しよう。
対人戦を。
「リーナ、この位置とこの位置とこの位置に対人戦がしたいメンバーを集めてくれ」
「ちょ、よろしいのですか? このまま何もしなくても勝てますのよ?」
さすがリーナだ。俺の言いたいことをすぐに察して疑問を投げてくる。
すまんなリーナ。せっかく
だがな、勝ちがほぼ確定だからこそ解禁するんだ。
つまりこの手柄はリーナの手柄だ。
みんな喜んでくれるぞ。
「じゃあリーナ、後は頼んだぞ」
俺は本拠地を飛び出して急ぐ。
そしてほぼ中央マスに近いところでラナ、シズ、パメラのメンバーがサターン、トマ、ポリスの3人を押さえている現場に到着した。
すでに戦闘が発生していたようだが、どうやら〈天下一大星〉はラナたちが突破できないようで足止めを食らっていた。
「くそぉぉ。ここを突破できれば、ここを突破できればぁぁ!」
「もう時間がないぞ。特攻するか!?」
「く、早く〈エデン〉の本拠地ルートを確保しないとまずいぞ! サターン!」
「ぐぬぬ、止むを得ん、力押ししかあるまい! 本拠地の予備戦力も全て投入する! 先に本拠地を落とすのだ!」
サターンたちが叫びながら移動を開始するが、
そんな大声で作戦を練っていたら相手にバレると思うぞ?
「行かせると思うのかしら!」
案の定ラナが保護期間の中から腰に両手を当て仁王立ちするポーズでそう言った。
サターンたちが苦い顔をする。
〈天下一大星〉は俺の指示により現れたラナたちによって阻まれ、攻めあぐねているようだ。
先ほどの会話から察するにサターンたちは自分たちの本拠地をがら空きにしてでも戦力を増やし、突破しようとしているようだ。
本拠地ノーガード戦法か。いいね。そうこなくっちゃな。
「待たせたな」
「ゼフィルス! 本拠地の守りはいいのかしら」
「ああ。すでに勝ちがほぼ確定だからな。本拠地にいてもつまらないし、出てきた」
「ゼフィルス殿、お疲れ様です」
「乙デース! もうマスは取らなくてもいいのデスか?」
「シズとパメラもお疲れ。ああ。対人戦解禁だ。サターンたちを〈敗者のお部屋〉へ送ってやれ」
「ふふ。任されたわよ!」
そう言ってラナは、どこかで見たことのあるメイスを担ぐ。
いつもタリスマン系の装備だったラナがなんと鈍器装備だ。
何が狙いか、察するに余りあった。
「このメイスね、殴るのにいいらしいのよ。ハンナが貸してくれたの」
「そうか……」
どこかで見た事があったと思ったらハンナのだった。確かメイちゃん2号だったか?
哀れなサターンたちに目を向けると、それまで様子を窺いつつ突破しようとしていた彼らは顔を真っ赤にした。
「貴様! そんな哀れんだ目を我に向けるんじゃない」
「く、なんて屈辱な視線を!」
「待て、冷静になるんだ! 相手は四人、増援を待つんだ!」
今にも飛び出していきそうなサターンとトマをかろうじてポリスが止める。
いい判断だポリス。レベル差的にも人数的にも普通にサターンたちでは勝てないだろう。
増援を待つのは基本だ。だが、それを待ってあげる必要はない。
「仕掛けましょう。『グレネード』!」
「撃ってきたぞ! 避けろーー!!」
シズが無情にもグレネードをバキューンした。
銃口から発射された擲弾がトマの方向へ放物線を描いて飛んでいく。
ポリスの掛け声にすぐにトマが回避行動に移るが、
「『忍法・影縫い』デース!」
「ぬおおおお足が鈍足にーーー!」
無慈悲なパメラの援護でトマが〈束縛〉状態になり逃げ遅れた。
そしてグレネードが着弾。爆ぜた。トマごと。
「あばぁぁぁぁぁっ!?」
「トマ!? 大丈夫か!?」
「ぐはぁ。あ、ああなんとかな。鍛え上げた筋肉がなければ即死だったぜ。ポリス、ヒールくれ」
「が、頑丈な筋肉だな。無事でよかった『メガヒール』!」
筋肉を鍛えればグレネードを受けても生還できるって本当だろうか?
普通に生還したトマにポリスが回復魔法を掛ける。
隙だらけだった。
「『ライトニング――」
「させるか! 『フレア』!」
『ライトニングバースト』で蹴散らそうかとしたところ。
しかし、サターンの攻撃に狙われて回避に専念する。
「サターン、やるなぁ」
「貴様は油断も隙もないな」
俺の『ライトニングバースト』は〈三ツリ〉の魔法なので発動にちょっと時間が掛かる。
中級下位魔法である『フレア』は発動も早く差し込まれた形だ。
うむうむ、俺が教えたことがしっかり生きているな。
「サターン助かった」
「さすがサターンだ」
トマとポリスが礼を言うが、そこでサターンの悪癖が出た。
「ふ、それほどでもある」
「『聖光の耀剣』!」
「ぐばああぁぁぁぁ!?」
「「サターン!?」」
サターンが乗せられてニヒルに笑った瞬間、ラナの特大の一撃がドガンッ! 突き刺さったサターンは切りもみ回転しながら吹っ飛んだ。
「今ね、ちょっとイラッときたのよ! 『光の刃』!」
「『連射』!」
「『巨大手裏剣の術』デース!」
「「あぶなぁぁぁ!!!!」」
続けてのスキルの連続攻撃がトマとポリスを襲う。
2人は回避に専念し、ギリギリのところで生還した。
「うおおぉぉ。サターンしっかりしろ! 『ヒール』! 『ハイヒール』!」
「ぐ、油断した! RESを上げてなかったら即死だったかもしれん」
サターンたちは劣勢だ。トマがどさくさにまぎれて突撃するも、
「懐に入ってしまえばぁぁぁ!」
「来させませんよ『弾幕』!」
「ぐおおおおお!?」
シズの面による銃撃スキル『弾幕』によって押し戻されてしまう。
突破は難しかった。
ラナの持つメイちゃん2号が怪しく光った気がした。活躍するときが近いのかもしれない。
しかし、それはもう少し先になりそうだ。
「サターン氏よ! 待たせたな!」
「ここは俺たちに任せてもらおうか!」
「まさか勇者が直接出向いてくるとはな、やっとこの拳を使う時が来たぜ」
その言葉とほぼ同時に南側から3人の影が出てきたからだ。
さっき猿轡を噛まされて捕まっていた【暴走魔法使い】二年生と、
ツルツルの坊主頭をキラリと輝かせる【デンジャラスモンク】二年生、
そしてはためく漆黒のマントを翻しながらテーピングを巻いた拳でシャドーを繰り出している【殴りマジシャン】二年生だった。
〈天下一大星〉の増援だ。(増援?)
全員ネタ
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作者から後書き失礼します。
近況ノートに第342話の進行状況イメージ図を添付しました!
よろしければ見てみてください。
タイトル:『〈ダン活〉第342話 進行状況イメージ図』↓
https://kakuyomu.jp/users/432301/news/16816700426168647096
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