第330話 ギルドバトル準備期間。賢者の育成を始めよう。




 〈エデン〉と〈天下一大星〉のギルドバトル〈決闘戦〉が決定した。


 とりあえず〈エデン〉の皆に〈天下一大星〉からギルドバトルの申し込みがあった事を通知すると、なぜかやる気満々のコメントが大量に返ってきた。

 どうやら彼女たちもギルドバトルをするのに否は無いらしい。むしろ積極的にやりたいらしい。

 〈天下一大星〉はいつの間に彼女たちの恨みを買ったんだ?


 とはいえ俺としても〈天下一大星〉には少しおとなしくしてもらいたいところ。

 ミサトの説得は残念ながら失敗したが、別に悪いことばかりではない。

 〈エデン〉は今後〈ランク戦〉でSランクにのし上がる。そのために上級生とのギルドバトルを経験するのは悪くないと言えた。

 むしろギルドバトルをメンバー全員が経験できる機会は結構ありがたい。

 これで〈エデン〉のメンバーは全員がギルドバトル経験者だ。ランクを上げるうえで貴重な経験になるだろう。と思う。


 ということで〈決闘戦〉は双方合意のうえで決定した。報酬の話はこれから詰める。

 女子たちがちょっと怖い感じがするのは気のせいだろうか?


 〈決闘戦〉は次の土曜日となった。

 ずいぶんと早い。

 今回のギルドバトルは〈城取り〉〈15人戦〉〈六芒星〉フィールドという中規模のギルドバトルであり、本来はDランク以上が行うギルドバトルだ。

 これをEランクギルドが行うのだから当然〈総力戦〉になる。メンバー全員の招集が必要だった。

 全員のスケジュールを調整しなくてはいけないため、もっと先になるかと思われたが、突然のギルドバトルにも関わらず〈エデン〉のメンバーは時間を作ってくれた。ありがたい。


 ギルドバトルまで残り4日。

 それまでにできるだけ新しく加入したミサトとメルトを育成し、さらに〈竜の箱庭〉をもちいた戦略をリーナに教え込まなければならない。


 忙しくなってきたぜ。


「えっと、なんか私のせいでごめんね?」


「別にミサトのせいじゃないさ。ミサトが言っていたようにどっちみちギルドバトルは避けられなかっただろうしな」


 男の嫉妬は大変なのだ。

 ミサトのせいというのも多少……、いやかなりあったかもしれないが、それはそれ。

 元々は俺に向けられていた嫉妬とのことだったので、結局は同じ事が起こっただろう。


「そうだ。ミサトが気にすることではない。気にするのであればギルドバトルで結果を残せばいいだけだ」


 俺の意見に頷くのは身長がマリー先輩ほどしかない銀髪のショタ。

 〈エデン〉に新しく加入した【賢者】のメルトだった。


 「伯爵」のカテゴリー持ちということもあって威厳のあるしゃべり方をしているが、なんというか微笑ましいという感情が先に来る。

 小さい男の子が背伸びしているように見えてしまうのだ。


 慣れるまであまり視界に入れないようにしておこう。


「うん。そう言ってもらえるとありがたいけど。それでゼフィルス君、これから何するの?」


「当然LV上げだ。〈天下一大星〉の平均LVがどんなものか分からないが、2人にはこの4日でLV30を目指してもらう」


「30だと? ゼフィルス、それは可能なのか?」


 火曜日放課後、俺はミサトとメルトを連れて、現在初ダンへと向かっていた。

 ミサトがこれからの予定を聞き、メルトが眉をひそめてこちらを向く。

 ちなみにメルトが呼び捨てになっているのは昨日の議論の末に友情が芽生えたからだ。(意味不明)


 しかし、メルトの心配は普通ならもっともだった。

 学園がある日はまともにダンジョン散策ができない。

 できなくはないが、たった4日程度でLV30に到達するビジョンを彼は描けなかったようだ。

 まあ仕方ない。まだ彼らは一般人。〈エデン〉流LV上げを知らないのだから。


 だが、馬車と裏技があれば可能だ。

 それをこれから見せようと思う。



 現在ミサトは【セージLV23】、メルトは【賢者LV18】だ。


 2人の〈育成論〉を見させてもらい、実際のステータスを確認したところ、さすが賢者と言わざるをえない完成度だった。

 しかし、下級職のみの〈育成論〉だったけどな。

 さすがにLV100到達者がいない、いたことが無いこの世界で上級職LV100という未知を予想することは賢者にもできなかった。


 故に、2人の〈育成論〉も少々抜けが見られた。想定が厳しかったのだ。

 この〈育成論〉ではギルドバトルはよくても上級ダンジョンでは苦戦する。

 2人の〈育成論〉は下級職LV75の時の自分を想定しており、上級職は認識から外れている。しかし、それではいけない。しっかり上級職LV100の自分を想定しなければ今後苦しくなるだろう。


 ということで昨日は2人と、主にメルトと大きく語り合ってしまった。

 さすがにまだLV100とかの情報は渡していないが、こういう予想で上級職のLV100を想定するという考え方は伝授できたと思う。


 そのおかげで俺の〈最強育成論〉と2人の〈育成論〉がハイブリットされた素敵な〈育成論・改〉が完成した。メルトが真面目そうな顔をして子どもみたいに目をキラキラ光らせていたな。ミサトが『メルト様のレア顔!』と言って再びキュっと締められていたのはご愛嬌。

 後はLV上げをして〈育成論・改〉になぞれば良いだけである。


 この4日で出来る限りLVを上げまくる。それが2人のすべき事だ。


「スケジュール的には、今日で〈デブブ〉、明日で〈バトルウルフ〉を倒すぞ。木曜日までにLV25まで上げて初級上位ショッコーの入場条件をクリアしたら金曜日で一気にLV30まで持って行く」


「デタラメだな。しかし、ゼフィルスが可能というのだから可能なのだろうが」


「後は運も必要だけどな。しかし、出来なくは無いはずだ」


 気になるのは他の同級生との遭遇だが、1組のミサトがまだLV23だ。初級中位ショッチューへコマを進めている同級生はまだかなり少ない。運が良ければ誰とも遭遇せずにボスを周回できるだろう。もちろん見張りも付ける。

 ボス周回がバレるのは俺も避けたいところだからな。


 え、ミサトに教えてもいいのかって? ミサトは〈エデン〉のメンバーに決定しているので問題無い。むしろ〈公式裏技戦術ボス周回〉で急速レベル上げが可能な〈エデン〉を見てどう思うだろうか? ふふふ、反応が楽しみである。


「ゼフィルス殿、お待ちしておりました」


「待ちわびたデース!」


「別にそんなに待ってないから安心していいわ。パメラは新しいメンバーが気になるのよ」


 初ダンに入ったところでエステル、パメラ、シエラが待っていた。

 俺はメルトを迎えに8組に行っていたので先に行っててもらった形だ。

 とりあえず、初対面の人も居るので自己紹介からだな。


「紹介しよう。新しく加入・・したミサトとメルトだ。ミサトは同じクラスだから面識があるよな?」


「でも改めて自己紹介させてもらうね。昨日から一時加入したミサトです、職業ジョブは【セージLV23】。ポジションはヒーラーだよ」


「メルトという。〈戦闘課1年8組〉に在籍し、職業ジョブは【賢者LV18】。ポジションは後衛全般だが、主に魔法アタッカーだ。よろしく頼む」


 ミサトとメルトの紹介が終わると今度はエステルたちだ。


「メルトに紹介しよう。うちの最強の物理アタッカーエステル、斥候からアタッカー、タンクまでこなせる万能忍者のパメラ。そして〈エデン〉最強の盾、シエラだ。今日の助っ人を頼んでいる」


 面識の無いメルトに彼女たちを紹介する。


 シエラからは何よその紹介は、と言わんばかりのジト目で見られてしまったが問題無い。むしろ久しぶりのジト目に心地よいまである。ありがとうございます!


 エステルたちの自己紹介も終わり、時間も無いのでそのままダンジョンに入る事になった。


 そこでシエラがメルトたちにアドバイスを送っていた。


「多分最初はビックリすると思うわ。でも早く慣れた方が身のためよ」


 いったいなんのことだかわからんなぁ。




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