第289話 〈ビリビリクマリス〉戦突入! 前半は優勢!




「レアボスをツモったぞー!!」


 恒例のツモったぞーからのボス戦に突入する俺たち。


 〈笛〉は8本あるので32回レアボスをツモる機会はあるが、その確率は70%とあまり高くは無い。

 最初からレアボスをツモれて運が良いな。これも〈幸猫様〉のおかげだろうか。あとでお高いお肉を買っていこう!


「リカ、ヘイトを頼む!」


「承った! 我が名はリカ、その首を頂戴する者なり! 『名乗り』! 『影武者』!」


 俺の指示にすぐにリカが前に出てヘイトを稼ぐ。

 別に名乗らなくても『名乗り』は使えるのだが、名乗るのがリカなりの作法なのだそうだ。確かに名乗る方が武士っぽいが。


「ウォーン!」


「ねえゼフィルス、この〈クマリス〉、犬みたいな声を出したわ!」


「そうな」


 もうね、そうなとしか言えない。


「あれはリス? にしては太りすぎですね。もう少し痩せた方が可愛いと思います」


「ウォン!?」


 タゲがリカの方に向いているにも関わらず、エステルの一言に「マジで?」みたいに振り向く〈ビリビリクマリス〉。

 ヘイトの概念を越える何かがそこにあったのかもしれない。


 ただ、その隙を逃すリカではない。


「よそ見とは余裕だな! 『飛鳥落とし』! 『光一閃』! 『闇払い』!」


「グオン!」


「隙有り一丁。『フォースソニック』! 『32スターストーム』!」


 よく分からないかけ声と共にカルアも加わり、まずこちらの有利に進む。


「ウォーン! オン! オン! ウォーン!」


「ふ、『受け払い』! 『切り払い』! 『切り返し』!」


「ん、『回避ダッシュ』!」


 〈ビリビリクマリス〉がスキル『ビリビリクマパンチ』を繰り出してきたがリカは冷静にタンクに切り替えた。なんて見事な切り替えだ。攻撃する時と防御する時の切り替えがリカは本当に上手いな。

 ちなみにカルアは巻き込まれるのを嫌ったのだろう、すぐに離脱していた。

 カルアのヒットアンドアウェイも見事なものだ。


「ガアァァ!」


 渾身の3連撃を見事に全て相殺し、ヘイトをさらに稼ぐリカ。

 そこからボスの怒濤のスキル攻撃が始まる。

 俺たちも隙を見て〈ビリビリクマリス〉に躍りかかる。


「援護するわ! 『守護の加護』! 『獅子の加護』!」


「ボスがリカに集中している間に側面と背後から攻撃しろ! 『ソニックソード』!」


「了解しました! 『騎槍突撃』!」


「『鱗剝ぎ』! 『二刀山猫斬り』!」


「グウォウォン!」


「『勇者の剣ブレイブスラッシュ』!」


「グオン!」


 〈ビリビリクマリス〉が『雷の爪撃』や『フィニッシュヘッド』などでリカを集中攻撃している隙に、近接アタッカー組が側面と後方から攻撃を加える。

 しかし、〈ビリビリクマリス〉はレアボス、その強さは中級中位ちゅうちゅうのボスクラスに相当する。

 さすがにHPもかなり多く、ダメージはさほど伸びない。


「ぐっ、『切り払い』!」


「回復するわ! 『回復の願い』!」


「助かる! は、『切り返し』!」


 リカの被弾にすぐにラナが回復を掛けた。

 いくらリカとはいえ全て相殺するのはかなり難しい、普通の防御スキルとして処理してダメージを食らう事も少なからずあるため、ラナは攻撃に参加せず、バフと回復に注力していた。


「硬いですね。『閃光一閃突き』! 『トリプルシュート』!」


 ダメージが伸びないと見るや、エステルは3段階目ツリーのスキルにすぐに切り替えた。

 そう。〈ビリビリクマリス〉の推奨LVは59。

 普通なら〈スキルLV〉を上げた3段階目ツリーで戦うのがセオリーになる相手だ。


 先ほどの作戦では敢えて触れなかったが、エステルたちもスキルの相性や使い方について自分たちで考えていけるようになってきているな。成長を感じる。


「ん、手数を増やす。『デルタストリーム』! 『スターブーストトルネード』!」


 カルアのスキルは基本的に連続攻撃がメインだ。

 1撃1撃の威力は低くても、数十撃入れば相当なダメージになる。

 カルアも3段階目ツリーに切り替えたようだな。


「『属性剣・火』! 『ライトニングスラッシュ』! 『ハヤブサストライク』!」


「ガァァ!?」


 やっとまともなダメージが入ってボスが怯んだ。

 カルアと俺のデバフも効いているみたいで結構削れたからな。

 一瞬怯み、ボスの行動が遅れたことにより、リカに精神的な猶予を与え、防御スキルの大成功を促した。


「グオン!」


「それはさっき見た。刮目せよ! 『双・燕桜』!」


 ユニークスキル『双・燕桜』。

 〈ビリビリクマリス〉の大技、『フィニッシュヘッド』に合わせて放たれたそれは、一瞬で桜の花びらエフェクトをまき散らしながら、ズドンッと腹に響く音と共にボスを大きくノックバックさせた。


「グワァァァァ!!!」


「ここ。『スターバースト・レインエッジ』!」


 カルアの最も威力の出る連続攻撃がノックバック中の〈ビリビリクマリス〉に決まり、ボスは大きくダウンした。


「総攻撃!」


「は! 『戦意高揚』! 『飛鳥落とし』! 『焔斬り』! 『凍砕斬』! 『光一閃』! 『闇払い』!」


「私の出番よ! 『聖魔の加護』! 『聖光の耀剣』! 『聖光の宝樹』! 『光の刃』! 『光の柱』!」


 リカとラナも攻撃役に加わり全力の総攻撃をお見舞いする。

 こりゃあ相当なダメージが入ったな。




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