第283話 リカのユニークスキルが光る。〈双・燕桜〉!




 その後、戦闘が安定しだし、少しずつだが確実にボスのHPを削って行った。

 そして、チャンスが巡る。


「『属性剣・火』! 『ソニックソード』!」


「『デルタストリーム』!」


「『光の柱』!」


「『閃光一閃突き』!」


「ゴギュア!!」


「ん、ここ。『急所一刺し』!」


「ゴキュッ!?」


 リカを狙って次々攻撃を仕掛けて行く〈デンキツネ〉にフォーメーションを取って攻撃を加えていくと、とうとう良いのが入ってノックバックした。その瞬間を見逃さずカルアが『急所一刺し』を叩き込む。

 『急所一刺し』はノックバック中やスキル硬直中などに打つとクリティカルが発生しやすくなる効果がある。

 そして見事クリティカルヒットを決め〈プラマイデンキツネ〉がダウンした。


 大チャンスである。


「カルアナイス! 今だ、総攻撃ー! 『勇気ブレイブハート』! 『勇者の剣ブレイブスラッシュ』! 『ライトニングスラッシュ』!」


「『鱗剝ぎ』! 『スターバースト・レインエッジ』! 『32スターストーム』! 『スターブーストトルネード』!」


「『聖光の耀剣』! 『聖光の宝樹』! 『光の刃』!」


「『ロングスラスト』! 『プレシャススラスト』! 『トリプルシュート』! 『レギオンチャージ』! 『ロングスラスト』!」


「私も加わるぞ! 『戦意高揚』! 『飛鳥落とし』! 『焔斬り』! 『凍砕斬』!」


「ゴギュアアアアアアッ!?」


 初のダウン、このチャンスは逃せないとばかりに全力の総攻撃がお見舞いされた。

 こりゃ相当なダメージが入ったな。HPゲージががっくんがっくん減っていく光景は見ていて気持ちが良い。


 遠距離タンクで攻撃を引きつけていてくれたリカも攻撃に加わり、ここで倒さんとばかりに猛攻を仕掛ける。

 しかし、もう少しというところでダウンが終わった。


「ゴゴゴアアアアッ!!!」


「怒り状態だ! 全員一旦離れろ!」


 中級のボスはレッドゲージになると3分間、攻撃力と素早さが1.5倍になる。

 強力な攻撃にハメられると戦闘不能に追い込まれる場合もあるので、まずは距離を置いて相手の挙動を確認するのが大切だ。目が相手のスピードに追いついてから攻撃すれば良い、ここであと少しで倒せるからと焦ってはいけない。


「ゴア!」


「! 大範囲攻撃! ラナ『障壁』! エステルは防御姿勢で耐えろ!」


「わかったわ! 『聖守の障壁』!」


 ほぼ全体攻撃に近い大範囲攻撃。これは全員逃げられない。耐えるしかない。

 俺の指示ですぐにラナが自分の正面に結界を張る。『聖守の障壁』は魔法攻撃に対する防御魔法だ。クールタイムは長いが、その分非常に強力である。


「『爆速』! 滑り込みセーフ」


 そこにカルアが滑り込んだ。さすが【スターキャット】、足が速い。

 しかし、エステルはさすがに間に合わないので受ける構えだ。

 俺とリカは大範囲攻撃が放たれると同時に防御スキルを発動する。


「ゴゴゴアアア!!」


「『ディフェンス』!」


「『残影』!」


 〈デンキツネ〉の尻尾が大きく膨らんだかと思うと、俺の『シャインライトニング』のような電撃の波が放たれた。違うのはこれが全方向攻撃というところだな。

 津波が襲ってくるようにして電撃が迫る。なかなかの迫力だ。

 俺の『シャインライトニング』の受ける側に立つ者はみんなこんな感覚を味わったんだろうか? というどうでも良い感想が脳裏を掠める。


 俺は『ディフェンス』で耐える。リカは回避スキルでやり過ごす構えのようだ。


 攻撃が終わり、急いで状況を確認しようと回りを見渡した。


 リカは回避出来たようでダメージは無し。

 ラナとカルアも障壁に守られ無事だ。

 そして、直撃を防御姿勢でやり過ごそうとしたエステルは―――、


 ――その場に倒れていた。


 HPバーには麻痺のアイコンが光っている。


「麻痺! ラナ、浄化!」


「『浄化の――』」


「ゴギャア!!」


 しかし、ラナが浄化するよりも先にボスのタゲが状態異常でダウンしているエステルに移った。

 『完全魅了盾』を持つシエラはここにはいない。


「『――祈り』!」


 ラナの『浄化の祈り』がエステルを包みすぐに麻痺は解除されたが、ボスはすでに攻撃の構えに移っている、起き上がってすぐ移動しても回避出来るかは分からない。


 〈プラマイデンキツネ〉の尾が急速に縮んだかと思うと、雷撃を後方に放ちながらエステルに突進した。あれは高威力の突撃系スキル『サンダーロケットストライク』か! 尻尾から放たれる電撃が、まるでロケットの噴射に見える非常に強力な攻撃だ。〈プラマイデンキツネ〉の必殺技でもある。

 まさかここで使ってくるか!?


 先ほどまで攻撃に参加していたエステルとボスの距離は遠くない。ボスの速度は、今1.5倍だ。

 エステルは転がりながら避けようとしたが間に合わない。

 しかし、そこに滑り込んできた者が居た。


「私を差し置くとは良い度胸だ。覚悟してもらおう!」


 リカだ。

 俺よりエステルに近い位置に居たため間に合ったのだろう。

 二刀を構え、鋭い視線をボスへ送るリカ。


 あれは、狙ってるぞ――、


「はぁぁぁ! 〈ユニークスキル〉『双・燕桜』!」


 ズダンッ! 巨大な質量同士がぶつかったような音が響き、桜の花びらエフェクトが舞った。


「ゴ、ァァァアアアアアアア!!!?」


 〈プラマイデンキツネ〉から絶叫がこだまする。


 【姫侍】3段階目ツリーで獲得出来る反撃カウンター系〈ユニークスキル〉、

 ―――『双・燕桜そう・つばめざくら』。


 カウンター技であるため出し処が実に難しいが、その威力は絶大。

 相手の攻撃を完全に無効化し、特大ダメージ、大ノックバックを与え、さらに相手の攻撃の威力n%分を自分の〈ユニークスキル〉にプラスするというとんでもない効果を持つ。


 つまり、ボスは今自分の攻撃が跳ね返され、さらにリカの特大ダメージの反撃を食らったのだ。とんでもないダメージだっただろう。

 大ノックバックにより前足が完全に真上を向いた状態で仰け反り、固まっている。


 怒りモードで1.5倍だった自分の突進をもろに受けたためHPがみるみる減っていき、

 そしてそのままゼロになった。


「ゴ、…ゴギャ……ン……??」


 訳が分からないというような声を最後に〈プラマイデンキツネ〉は膨大なエフェクトと共に消えていった。




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