第282話 〈プラマイデンキツネ〉戦。あれは可愛くない。
「あれが…〈プラマイデンキツネ〉か」
「ん。キツネ?」
「あれは可愛くないわ」
「ラナ様の言うとおりですね。あれはキツネっぽい何かです。成敗してやります」
フィールドボスが見える位置まで近づくと、上からリカ、カルア、ラナ、エステルの順に感想を述べた。
特にラナとエステルのボスに対する評価が辛辣だ。
確かに女の子受けしなさそうな見た目だからな〈プラマイデンキツネ〉って。
俺は少し哀れみを含んだ視線でボスを見た。
細身のフォルム、2m近い体格、野キツネのような愛くるしい顔つきとは異なるどう見ても飢えた肉食獣の顔面。そこから垂れた舌は涎をまき散らし、細い目は何を考えて居るか分からない、そのアンバランスさが不気味さを演出していた。
キツネ型、となっているが逆三角形の顔面と6本の尻尾がギリギリでキツネ…かな? という程度だ。
つまり、女性陣がこれはキツネじゃないと言えばキツネでは無いのだ。(え、じゃああれは一体?)
「ゼフィルス行くぞ。こうしていても得られるものは無さそうだ。予定通り先に出てヘイトを稼ぐ」
「分かった。頼むぞリカ」
「
まず、タンクのリカが1番のりを決める。
フィールドボスのタゲは最初完全にランダムで決まるので、先に1人が出るのはタゲを固定するうえで有効な手段だ。
「ゴゴンッ!」
守護型ボスが突然の侵入者に尻尾と毛並みを逆立てた。
完全にリカにタゲを向けたな。
「何あれ、鳴声も可愛くないわ」
「同感です。キツネを名乗るのならもっと愛らしい声に出直してくるべきですね」
横にいるラナとエステルからの評価がさらに落ちた。
〈デンキツネ〉、哀れな。
「我が名はリカ、転移陣解放のためここで倒させてもらう! 『名乗り』!」
リカが少し離れた位置でヘイトを稼いだ、良い位置取りだ。
あそこなら電撃を放たれても避けるか弾くか出来るだろう。
「ゴゴゴ、ギャン!」
〈デンキツネ〉がゆっくり前に前進しながら尻尾の先を前に向ける。
直線範囲攻撃の『電線』だ。
6の尾から6の電気の直線上に放たれる攻撃。
「甘い! 『弾き返し』!」
6の電撃がリカに直撃する寸前、リカの左手がブレたかと思った時には『電線』が弾かれていた。あの一瞬で6つの電撃を全て弾いたらしい。やべぇ技だ。これだから武士系って言うのは格好いいんだ。
「ゴゴゴギュウ!」
攻撃が弾かれてボスのヘイトが上がったな。
そろそろ俺たちの出番だ。
「ラナ頼む!」
「任せて! 『獅子の加護』! 『聖魔の加護』! 『耐魔の加護』!」
「カルアは右から攻撃を叩き込んでくれ」
「ん、行く。『突風』!」
ラナが攻撃力、魔法力、魔防力を上げるバフを送るとカルアがダッシュで側面に回り込んだ。
さすが【スターキャット】、むちゃくちゃ早い。
追い風系スキル『突風』であっと言う間に〈デンキツネ〉に近づくと、カルアの短剣二刀流が煌めいた。
「『鱗剝ぎ』!」
「ゴギャン!?」
突然の奇襲に
素晴らしいな。俺も左側から回り込んで奇襲する。
「『
「ゴギャ!?」
右側のカルアと正面のリカに気を取られていたため綺麗に『
カルアの『鱗剝ぎ』も防御力低下スキルなので、こりゃ良い感じにデバフも乗ったはずだ。
おっと、〈デンキツネ〉の尻尾が膨れ上がりゆらりと揺れた。範囲攻撃だ!
「カルア、離脱!」
「『回避ダッシュ』!」
「俺は間に合わないのでね、『ガードラッシュ』!」
俺たちがスキルで対策した次の瞬間、〈デンキツネ〉から無差別に電撃が放たれた。
周囲範囲攻撃の『
範囲が広く、俺はダッシュしただけじゃおそらく逃げ切れないので防御スキルを使い〈天空の盾〉を構えて耐えにでる。
「ゴゴギャァ!」
「うお、軽くビリビリっと来るぅ!? 新しい感覚だ!」
電撃フィールドってこんな感じなのだろうか、HPに守られながらもほんの少しフィードバックは起こるため、俺は電撃という未知との遭遇に困惑していた。いや、実は楽しんでおりました。なんか電気を浴びるのってちょっと楽しい!
某ポケットなモンスターの主人公がパートナーの電気を浴びて喜んでいた理由が少し分かった気がした。
「ゼフィルス回復するわ! 『回復の祈り』! 『光の刃』!」
「私も行きます。は! 『ロングスラスト』!」
「ん、『フォースソニック』! 『二刀山猫斬り』!」
「――『ハヤブサストライク』!」
「ゴギュ!?」
『
俺も『ガードラッシュ』の三連撃を無事叩き込めたのでさらにハヤブサの2連撃を叩き込む。
「ゴギャウギャ!」
「範囲攻撃『六扇』だ! 正面に居るな!」
「はい!」
「りょ!」
ボスが尻尾を地面に叩き込むと6つの電撃が地面を伝ってリカを狙った。
まるで線路のレールのようにしてリカに向かう電撃に、リカは二刀を構えると素早く振るう。
「地面からの攻撃とて効かん! 『下段払い』!」
それだけで電撃が相殺され〈デンキツネ〉のヘイトがさらに上がった。
遠距離にいるリカに攻撃するため遠距離攻撃を多用するようになるだろう。
そうすると、必然的に纏わり付いている俺たちの安全性が増す。
リカのヘイトもだいぶ稼げてきているようだし、そろそろ大技を連発しても良い頃だろう。
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