第280話 リベンジに燃えるラナ。顔がとても真っ赤です。
ラナが目を回したので俺は
何を言っているかよく分からないって?
実は俺も自分が何を言っているのかよく分からない。
だが事実なので俺は〈六雷樹〉を伐採するマシーンとなってたくさん
この〈六雷樹〉は
〈採集課〉の学生、例えば【コリマー】などならこのスリップダメージを負わないスキルを身につけていたりするのだが、残念ながら【勇者】にそんな便利な機能は無い。
そうして他の上級生が近くで伐採する中、俺も一緒になって
なんかそこらじゅうから木を切るスコーンという音が聞こえてきていて少し楽しい。
ゲーム〈ダン活〉時代にはなかったBGMだ。
『楽しいことは、夢中になって止まらない』。
そんな格言があるように、伐採に夢中になってしまって気がつけば俺の手元には300個近い〈六雷樹〉の材木があった。
さすがに
まあ、たまにはこういうこともあるよね。(たまにはではなかったような…)
女性陣の方に振り向くとちょうどラナが立ち上がったところだった。
良かった。どうやら復活したらしい。
俺は
「とりあえずゼフィルス、もう私が目を回すことはないわ!」
「おお? ああ。分かった?」
ラナが何が言いたいのか分からなくってハテナになった。
まあ、ラナはいつもこんな調子なので気にすることでもないだろう。
「って、何進もうとしてるのよ! 伐採まだしてないでしょ!」
とりあえず時間も結構使ってしまったので進もうとしたらラナにがっちり肩をつかまれた。
そこで先ほどの言葉を理解する。
どうやらラナはもう一度伐採の手ほどきをご所望なようだ。
すでに300個近い〈六雷樹〉の木材があるのでもう必要ないですとは言い出せない。
結局ラナに伐採の手ほどきをすることになった。
「ねえ、オノ出して? さっきみたく教えてよ」
「あ、ああ。気をつけろよ?」
なんか急にしおらしくなったラナに少し面食らいつつも、再び〈優しいオノ〉を取り出してラナに渡す。
「ん、ありがと」
オノを受け取ったラナが背を向けて〈六雷樹〉の前に移動する。
「ほらゼフィルス。さっきみたいに教えなさい。こ、今度は目を回したりしないから…」
「あっと。わかった……? 失礼します?」
「なんで疑問系なのよ」
状況が良く飲み込めてないが、ラナがさっきと同じようにやれというのだから、先ほどと同じように背中側から抱きつくようにしてオノを持つ手に添えるようにして持った。
「―――うう、近い、近い、近い……でも耐えなくちゃ…」
なんだかラナがボソボソと下を向いてしゃべっているが、耳に入ってこない。俺も緊張しているのか?
先ほどの光景が脳裏をよぎる。
吸い込まれそうな青い瞳。もう少し接近すれば触れてしまいそうな距離。
いかんな。思い出すとなんだかいかん気がする。
何がいかんって、今の俺たちの状況を横から3人がバッチリ見守っているのがいかん。
「ラナ様、頑張ってくださいー」
「ゼフィルス、もっとくっ付く。へっぴり腰」
「少し時間をかけてもいいかな。その方がラナ殿下も耐性が付くかもしれない」
しかも応援までしている。バッチリ聞こえている。
何だこれ? どんな状況? あとカルア、俺はへっぴり腰なんかじゃない、この姿勢で背筋を伸ばすと色々と危ないのだ。
「い、行くわよゼフィルス。早く教えて」
さすがにラナも恥ずかしいのか顔を赤くして急かしてきた。とても真っ赤だった。耳まで赤い。
その視線はずっと目の前の〈六雷樹〉を見ていてこちらに振り向かないがちょっと横から見るとバッチリそれが見える。
俺も顔が赤くなっていないか心配なところだ。
一度首を振り、邪念を飛ばして俺はレクチャーに集中する。
「あ、ああ。オノの刃の部分を水平にして当てるイメージだ。ある程度良い当たりをしたらスキルが発動して素材になる。こんな感じのスイングだ」
ラナの手を優しく持って右に少し振りかぶり、水平にして〈六雷樹〉にオノを軽く当てる。
同時にビリっと来てHPが僅かに減った。
「ひゃ! な、なんかビリっと来たわ!」
「それが〈六雷樹〉の面白い所だな。何でこの木は電気を帯びて平気なんだろうな」
「知らないわよ。い、いいから集中して。こ、こうかしら?」
「そうそう」
いきなり強く振りかぶってもうまくはいかないので、まずはスイングの軌道をなぞるように軽く振る。
もう一度軽く当てると、また僅かにHPが減った。〈六雷樹〉は軽く当てただけなので素材にならずその場に健在だ。
「わかったわ。次で出来そうな気がするの」
「そうか? じゃあ、少し離れてるな」
「なんでよ。まだ出来ないかもしれないんだからちゃんと支えておきなさいよ」
「え? ああ。そうか?」
1人でやった方が達成感あるしいいかなと思って離れようとしたらラナに呼び止められた。
なんだろう、今日のラナはやけに素直だ。
普段はツンとデレが良い感じに素直さを出させないのに、今日は素直さが前面に押し出されたツンデレだ。少しドギマギする。
これが2人っきりであれば危なかったかもしれない。何が危なかったかはわからないが。
俺は横目でこちらを応援しまくっている3人を見る、すると心が落ち着いた。あれをみると我に返るよ。まったく。
「じゃ、行くぞ?」
「うん。せーの!」
「せ!」
掛け声と同時にラナを支えつつスイングを正しい軌道にフォローする。
振られたオノは綺麗に幹に吸い込まれ、スコーンという気の抜けた気持ちの良い音を出した。
瞬間エフェクトに包まれた〈六雷樹〉が消滅し、その足元には木材が残っていた。
「わ! 本当に素材になったわ!」
「よし、成功だ!」
「ラナ様、お見事でございます!」
「ん、おめでとうラナ」
「素晴らしかったラナ殿下、ゼフィルスもとても良かったよ」
エステルの「お見事」は分かる。そこからカルアの「おめでとう」で疑問を持ち。リカの「ゼフィルスとても良かった」では何が良かったのかよく分からなくなった。
オノをバッグに戻し、素材を持ったラナとハイタッチすると、先ほどの妙な雰囲気は霧散していた。一体なんだったのか良く分からないが、女性陣的には今のは深い意味があったのだろう、予想以上にラナを褒め称えていた。
ラナもなぜか「むふぅー」とした顔だ。
俺は1人首をかしげたのだった。
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