第232話 再び登場あの4人!ダンジョン遊びの誘いか?

 



 週明けの月曜日。


 今日からは通常授業がある。学園に入学して1ヶ月以上経ったが、ようやく普通の授業である。

 まあ普通の授業があるのは〈戦闘課7組〉までで、それ以降の〈戦闘課8組〉から〈戦闘課127組〉まではまず戦闘訓練でLV上げの授業が組まれているらしい。


 戦闘課の中でも7組までの210名ほどしかLV上げをしていないということだな。

 8組以降は職業ジョブに就いただけでLV0の学生たちだ。


 つまり、それだけですでに授業の開きが出来ていることに他ならない。

 組ごとに授業の質があるのだ。1組に近づくほどそれは高くなり、127組に近づくほど低くなる。

 127組に近いほうが授業は楽だが、就活は難航するだろう。


 今後の人生をより豊かにするためにも、8組以降の学生たちはこの差を覆すために日々邁進しなければならない。何しろ授業の質に差が有るのだ。何もしなければ上の組との差はどんどん開いていくだろう。


 また今上位の組に在籍している学生も油断は出来ない。

 今回一年生のクラス分けはまだドングリの背比べに過ぎないのだから。

 努力を怠れば簡単に転がり落ちていくだろう。2年生になった時のクラス分けが今後の人生を決めると言っても過言ではない。

 故に〈ダン活〉の学生は非常に勤勉である。というのがゲーム〈ダン活〉の設定だった。


 しかし、そんな背景をものともしない輩が約4名、朝から俺に絡んできた。


「ダンジョン攻略を一緒にする?」


「そうだ。我は確かに今の貴様よりLVが低い。認めよう。だが実力なら貴様以上だと自負している」


 そう語るのはこの男子学生の中で最も職業ジョブLVが高いサターン君だ。

 なぜそこまで自信があるのかが俺にはさっぱり分からない。

 いや、さすがに差は歴然だと思うぞ?


「ふふ、驚くのも無理はありませんね。ですが彼だけではありません。僕も実力ではあなたを凌駕していると思っています。その証拠に、僕はこの数日で【大剣豪LV20】に昇華しています」


 不敵に笑うのは【大剣豪】に就いているジーロン君だ。

 LV20になったから、なんだと言うのだろうか?


「先に言われてしまったな。俺たちはここ数日、地獄の特訓を重ねてきた。今なら負けない」


 続いて腕を組みながら自信満々に言うのは【大戦斧士】のトマ。

 すでにLVが負けているのですがそれは?


「俺様を忘れてもらっちゃ困るな。先頭に立つのはいつだって戦士の役割だって事を教えてやる」


 俺様が一人称のちょっと忘れられやすい彼は【大戦士】のヘルク。

 いや結構です。絶対俺のほうが詳しいし。


 今日の朝、朝礼もまだの時間にいきなり俺の席を囲んだかと思うと、彼らは切り出した。

 どうも今日の放課後、一緒にダンジョン攻略しようという内容のようだったが、彼らの話を聞く限り自分の力を見せ付けてマウントを取りたいだけに見える。


 というかプライド高いな!

 アレだけの差と失態を経験すればへし折れるかと思っていたが、元気バリバリのようだ。ずいぶんと、図太い。

 まあ、へこまれるよりは良いのだろう。猛特訓したみたいだし。良い方向に転がっている様子だ。


 聞いてみると、サターン君が【大魔道師LV22】に、他の男子は全員LV20に上がり2段階目のツリーが解放されたそうだ。

 なるほど。それで自分は強くなったと増長した彼らが絡んできたのだろう。


 だが、残念ながら2段階目ツリーと3段階目ツリーの間には越えられない壁がある。どうやっても俺に勝てないと思うぞ?


「どうした【勇者】。我らとダンジョン攻略したくないのか? 俺たちさえ組めば初級ダンジョンなど恐れるに足りない」


 サターン君が言う。

 まあそりゃあそうだろう。俺は昨日の探索で【勇者LV51】になったし、すでに初級ダンジョンを卒業した身である。むしろ俺1人で無双出来るから君たちいらないまである。


 いや実際そうだ。彼らも分かっているはずだ。分かっていないはずが無い。そうだよな? 本気じゃないよな?

 ふむ、じゃあ何で俺とダンジョン攻略したいと言い出したのか考えよう。

 うーん。…もしかして、遠まわしな遊びの誘い、だったりするのか?


 あ、その可能性はありそうだ。というか高そうだ。

 彼らもあの自己紹介でやらかした手前、〈エデン〉のメンバーとは気まずい溝が出来てしまっている。ギルドマスターと対立(?)したのだから当然だ。

 しかし、このクラス1組はその三分の一以上が〈エデン〉のメンバーである。これではクラスで肩身が狭いだろう。


 故に和睦わぼくという意味で俺と仲良くしている風に見せたいんじゃないか?

 教室で話しかけてきたのがその証拠だ。絡みづらい相手に勇気を持って遊びに誘ってきたのだと思う方がしっくり来る。


 言い方はプライドが高すぎて素直になれなかっただけだろう。まだ16歳だしな。


 なんだそういうことか。ならば俺も遊びに行くのもやぶさかではない。


「いいぞ。一緒にダンジョンに行こうか」


「! ふふ。後悔しても知りませんよ」


 そのセリフ、遊びに誘った人のセリフじゃないぞジーロン君。

 でも不敵に笑っているし、嬉しそうだ。と思う。


「あ、そうだ。ついでにあと1人誘っていいか?」


「ぬ? 行くのはこの5人だ。これ以上は人数オーバーだぞ」


 トマ君の言うとおり、俺を含めれば5人パーティの完成だ。

 〈ダン活〉はパーティの人数は5人まで、普通ならもう1人増やすことなんて出来ないが、何事も例外はある。


「いや〈採集課〉の知り合いも誘おうかと思ってな。どうせ行くなら採取は出来た方がいいだろ?」


「なるほど。〈『ゲスト』の腕輪〉だな。俺様に異論は無い」


 お、ヘルクは〈『ゲスト』の腕輪〉のことを知っていたらしい。何気に博識だ。

 他の3人は知らないようなので軽く説明して了承してもらった。


「戦いに参加しないのならば構わない。せいぜい我の足を引っ張らないことだな」


「ふふ、ではまた放課後に」


 そう残して彼らは席に戻っていった。


 さて、金曜日から間が空いてしまったが、早速モナを誘ってダンジョンに行くか。

 放課後が楽しみだな。俺は懐から〈学生手帳スマホ〉を取り出した。




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