第228話 レアモンスターのドロップは黄金のお肉!?
「ハンナナイス! 思った通りだったぜ」
「うー。よ、よかったぁ、当たったぁ」
眼下にいたレアモンスターを見事狙撃し仕留めたハンナだったが、その表情は歓喜より安堵の方が大きい様子だ。これはいけない。
「おいおいハンナもっと喜べよ。何しろハンナはレアモンスターを倒したんだぜ?」
「そうよ! これは快挙よ! もっと喜ぶべきだわハンナ」
「ええ。見事な一撃だったわよ」
俺、ラナ、シエラの順にハンナを褒め称える。
エステルも後ろでコクと頷いていた。それを聞いてハンナの目にもようやく理解の色が宿る。
「そ、そっか。私、レアモンスターを倒したんだ。ね、ねぇゼフィルス君、これって凄いことなんだよね?」
いまいち自覚が足りないのか、確認するようにすがる視線を向けてくるハンナに俺は大きく頷いた。
「当たり前だろ? 誰にでも出来ることじゃない。特にこのメンバーの中ではハンナしか出来なかったことだ、胸を張っていい」
「え、えへへ」
やっと自分のした事を認識したのか、ハンナの頬が高揚し笑みがこぼれる。
「よし、じゃあドロップ確認に行こうか。レアモンスターはそれはそれは良い素材をドロップするからな」
「うん! 楽しみだね」
ハンナを連れ、全員で丘を下ると、そこには未だに金色のエフェクトを放ち続ける物が 目に止まる。これは、
「黄金の、お肉!?」
「いやハンナ、これは金色のエフェクトが出ているだけのお肉だ。黄金じゃないぞ」
ハンナがそれを見て勘違いしたのを正す。
レアモンスターの素材というものは他と識別するためなのか金色のエフェクトがずっと放出されているんだ。レアモンスター素材だって一発で分かるな。
そしてこれは、ハンナが言った通り肉だった。デカい葉っぱの上に金色エフェクトを振りまく肉が鎮座していたのだった。軽く見て5㎏はありそうな塊だ。金色なので美味しそうに見えないが。むしろ眩しい。
加工したりスキルを使ったりするとエフェクトが収まってしまうので、料理すれば普通の見た目に戻るだろう。
「お肉……、ゼフィルス君、これ恐竜のお肉だよね、お、美味しいのかな?」
「俺も食ったこと無いから分からんが、少なくともレアモンスターの肉はどれも凄まじく美味いらしいぞ。ほれ、ラナの方を見てみな」
「ふえ?」
俺に促されハンナが後ろを振り向くと、そこには目を爛々と光らせたラナが居た。
「ハンナ良くやったわ! これは凄い大当たりよ! 勲章ものの快挙だわ!」
「ふ、ふえぇ!? ら、ラナ様、目が怖いですよぉ!?」
ぐいっとハンナに近づきその手をがっしり掴むラナ、そのガチな眼にビビるハンナ。
「ラナ様、落ち着きますよう。ハンナさんが驚いておりますよ。それとレアモンスター討伐で勲章が出たことは今まで一度も無いはずです」
素早くエステルが近づきラナを窘めた。勲章は出ないらしい。
俺も美食に関してはそこまで知っているわけではないので、とりあえず近くにいたシエラに聞いてみた。
「そんなに凄いのか、このお肉」
「…ゼフィルスが聞きに来るのはなんだか新鮮な感じがするわね。そうね、少なくとも〈ゴールデントプル〉のドロップ肉は非常に美味で知られているかしら。私も2度食す機会があったのだけど、舌が蕩けるほど美味しかったのを覚えているわよ」
「おお、マジか。そりゃ是非とも食べてみたいな!」
珍しく長文で説明してくれたシエラ。そしてあのラナの反応を見る限り相当
ゲームの時は非常に強力なバフと特大の回復をしてくれる料理アイテムの素材、というだけでしか無かった。
故に俺は少し、このドロップで残念に思っていたのだ。だが、思い出す、ここはリアル。
味わうというゲーム〈ダン活〉時代とは別の楽しみがある場所だ。
美食かぁ。やっべ、俄然楽しみになってきた。帰ったらマリー先輩に良い【シェフ】を紹介してもらおう!
ラナの熱い視線を受けながら肉を仕舞い、再出発する。
その後の攻略は、少し順調とは言いづらい感じになってしまった。
全部、ラナがいつも以上にモンスターセンサーをビンビンに張り巡らせていたせいだ。
どうもラナはレアモンスターからドロップする美食に目がないらしい。
何か気配を掴めば誰よりも早く反応しモンスターを見つけてくるのだ。
おかげでいつもより
まあ、たまにはこういうのも有りか。楽しかったしな。
途中、隠し扉2カ所に立ち寄って〈銀箱〉を2つゲットし、行き止まりの宝箱から〈木箱〉を3つ回収しつつ、俺たちはさらに進んでいった。
〈銀箱〉からは【調理師】系の生産職に恩恵のある〈調理器具5点(中)〉と【鍛冶師】系の生産職に恩恵のある〈鍛冶用具3点(中)〉が手に入った。
〈鍛冶用具〉はともかく〈調理器具〉の方は今後使い道が無いため売るかどうか迷うところだ。今のところ〈エデン〉に【調理師】をスカウトする予定は無い。
しかし、隠し扉の宝箱産は一度開けたら二度と手に入らない。使わないけど手元に残すか悩みどころだ。
とりあえず保留で。
そんなこんながありつつも、午後5時半過ぎ、俺たちは2度目のフィールドボスが居る階層までたどり着いたのだった。
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