第223話 中級下位ダンジョンの手応えとボスの注意点




「さすが中級は強いわね」


「はい。それに初級ダンジョンよりMPの消費が大きいです。意識してセーブしなければ簡単にMP切れになりますね」


 現在〈丘陵の恐竜ダンジョン〉第3層、戦闘が終わったところで思わずといった風にシエラが呟いた。

 それにエステルが同意し、これまでの戦闘について感想を話し合う。


「特に足の速い〈トルトル〉と力の強い〈サウガス〉が一緒に来た時が少し厄介だわ。気のせいかしら、モンスターが連携を取っている気がするのよ」


 ちなみに〈サウガス〉は4足歩行で胴体がデップリしているサウルス型モンスターだ。足は遅いが攻撃力が高く、シエラも少し手こずっている。

 しかし、さすがシエラだ。俺はシエラの話に加わって答えた。


「そりゃあ気のせいじゃないぞシエラ。中級ダンジョンのモンスターは少なからず連携を取り始めるからな」


 正しく言えば連携っぽくなっているだけで連携を取っているわけではないのだが、本当に連携してくるタイプのモンスターも出てくるため嘘は言っていない。

 足の速い〈トルトル〉と力の強い〈サウガス〉はゲーム時代も一緒に出てくるパターンが多かった。


 動きの速い〈トルトル〉は行動パターン的に遠距離から飛びかかってくることが多い。

 それに対し、〈サウガス〉は鈍いけど力強い突撃が主な攻撃だ。

 戦闘中は足の速い〈トルトル〉を後回しにして、動きの遅い〈サウガス〉をまず屠るのがやりやすいが、そのためにこちらも足を止めたりすると遠距離から〈トルトル〉が飛びかかってくるパターンが組まれている。

 そのためシエラはやりづらそうにしているわけだな。


 対抗手段や立ち回り方をいくつかシエラに説明しておく。シエラも連携に対する対抗手段はいくつか知っているとのことなので今度から試してみるそうだ。


 次にエステルだが、


「あとエステルの言うとおり、中級ダンジョンからはモンスターが強くなるからと言ってスキルに頼りすぎてもいけない。だが、使わなさすぎるのもダメだ。その辺は戦闘しながら通常攻撃とのバランスをさぐっていこうな」


「はい」


「当面、エステルは『ロングスラスト』を多用してみるといいぞ」


1段目スキルロングスラストですか?」


 一番弱い攻撃スキルを提案された事にエステルは戸惑った様子を見せた。

 しかし『ロングスラスト』はかなりコストパフォーマンスに優れたスキルだ。

 1段目ツリーのスキルなので消費MPはたったの4しかないし、スキルLV5なので威力もそこそこ高い。

 2段階目ツリーの『プレシャススラスト』が消費MP7なのでちょっと使いにくいのだ。

 『プレシャススラスト』を1回使うより『ロングスラスト』を2回使った方がダメージは遙かに高いため、俺は『ロングスラスト』を多用することをオススメする。通常攻撃とも混ぜやすいからな。


 どうせ上層のモンスターであっても『プレシャススラスト』の一撃で屠れないのだ。つまり2発掛かるということ、MP計算なら14の消費だ。1体を屠るのに使うMP量としては中々高い。

 『ロングスラスト』なら通常攻撃を混ぜれればスキル2~3発で倒せるので、どうすればMP効率が良くなるのかも今後考えていかなければいけない課題だな。



「なるほど、了解しました。『ロングスラスト』を中心に戦術を組んでみます」


「ま、別に『プレシャススラスト』を使うなというわけではないから。折り合いは付けていこうな」


 中級ダンジョンは初級とはやはり勝手が違う、広さも強さも色々違うため最初はゆっくりならしていこう。


「ねえゼフィルス、このダンジョンって凄く広いけど何階層まであるの?」


 話が終わるのを待っていたのか後ろからラナが質問してきた。

 おお、ラナよ。俺に聞いてくれるのか? 良いだろう。なんでも答えるぞ!


「〈丘陵の恐竜ダンジョン〉は30階層だな、前に説明したかもしれないが10層毎に転移陣があってダンジョン門と行き来出来るぞ。さらに10層と20層の辺りにはフィールドボスというのが配置されていてな。これは倒しても倒さなくても階層自体は通ることが可能だが倒さないと転移陣が利用出来ないという仕様で―――」


「ちょ、ちょっと待ってゼフィルス。なんでそんな早口なのよ! 一気に言われても分からないじゃない!」


 おっとしまった。ラナが頼ってくれて少し舞い上がってしまったみたいだ。


「あははは、すまんすまん」


「もう」


 その後ちゃんと噛み砕いて説明する。


「へぇ、フィールドボスね! 強いのかしら?」


「普通に強いな。フィールドボスにも色々と種類があるが、どいつも一筋縄じゃいかないぞ。例えば――あっとそうだ。ちょっと全員聞いてくれ! 徘徊型のフィールドボスには気をつけろ。これだけは絶対覚えておいてくれ」


 ラナの質問に答えている途中で思い出したことがあったので全員に伝えておく。


「徘徊型? って何?」


「徘徊型っていうのは決まった場所に留まらずにその辺をうろうろと跋扈ばっこしているボスのことだな。このタイプとは突発的戦闘になりやすい、構えがちゃんとできていない状態でぶつかるから被害を受けやすいんだ」


 歩いていたら遭遇戦になるのがこのタイプ。HPをマメに回復させていないと最初からピンチの状態でボスに挑む事になる事もあるから気をつけろ。

 俺も昔はこまめに回復するのが面倒で、ボス部屋の前で準備万端に回復して挑むタイプだったので遭遇戦には何度か痛い目に遭った。襲われて普通に全滅したりするので周知徹底させる。


「あと危険なのは小型のボスだな。大きいボスは見た瞬間、あっボスだ、って分かるんだが小さいタイプは普通のザコモンスターかなぁって思って挑んでやべぇ事になる場合がある。見たことの無いモンスターに出会ったらまずボスを警戒しろ」


 ゲーム〈ダン活〉ではBGMですぐ分かるのだがここはリアル。もしかしたら分からない事があるかも知れないからな。


 そんな説明をしつつ、少しずつ階層を降りていく。

 まず目指すは10階層だ。




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