第222話 中級下位ダンジョンで初戦! 相手は硬いぞ!




「ここが〈丘陵の恐竜ダンジョン〉! ……なんか思っていたより普通だね」


「そうね。もっとこう、ジャングル的なものを想像していたわ」


 辺りを見渡して先に感想を述べたのはハンナだった。

 続いてラナも同意する。


 まあ、起伏のある草原だからなここは。

 〈ジュラシックパーク〉の名でイメージするようなジャングルのようなものは無い。


 ただ、竜種系を相手にするとこういう開けたところの方がやりやすいんだぞ?


 ある程度皆がダンジョンの光景に馴染んだところで声を掛ける。


「よし、それじゃ出発するか」


「ゼフィルス、ここを含めて中級ダンジョンと初級ダンジョンの違いなどの詳しい説明が欲しいのだけど」


 いつも新しいステージに来る度俺が説明していたからだろう、今回の説明は無いの? とシエラが聞いてくる。

 シエラにそう聞かれると先ほどの事もあって少したじろいでしまう。


「そ、そうだな。歩きながら説明しようか。中級ダンジョンは初級ダンジョンに比べて1層1層が倍近く広く大きい。探索しながら説明する方が効率的だ」


「そう。お願いするわね」


 皆ダンジョン探索にも慣れた様子だし歩きながら話しても頭に入るだろうと、そう提案するとシエラもコクリと頷いた。

 なんだろうねこの感覚は、話を聞いてくれてちょっと嬉しい。


 まずは中級ダンジョンと初級ダンジョンの違いについて、軽くレクチャーする。


「やっぱり大きな違いというのならモンスターがアクティブスキルを多用してくるようになるところだな」


「え? モンスターがスキルを使ってくるの?」


「ああ。初級でも〈スキル〉や〈魔法〉を使ってくるモンスターを見かけることはあった、しかし今後はこれがさらに増える」


 後ろにいたハンナに答える形でより細かな点を教える。


 スキルや魔法は、言わなくても実感しているとおり非常に強力だ。

 今後は中級スキルや中級魔法クラスを使ってくるモンスターがどんどん増えてくる。

 ダンジョンによって相性が分かれる最大の理由だ。


「なぜこのダンジョンジュラシックパークを選んだのかというと、ここに登場する小型恐竜モンスターは魔法を使ってこないし、スキルも比較的使わないからだな。フィールドには罠もほとんど無いし、つまり初級ダンジョンとあまり変わらない感覚で挑む事が可能だからだ」


「なるほどね。でもゼゼールソンさんはここのモンスターは強いとおっしゃっていたけれど?」


「そうだな。他の中級下位ダンジョンとは違ってここのモンスターはステータスが段違いに高いんだ。ステータス特化ダンジョンとでも言おうか。その代わりさっき言った通りスキル魔法そして罠は少ない配分だ。〈丘陵の恐竜ダンジョン〉をクリアしたければそれなりのステータスが求められる」


 シエラの質問にも答えつつ注意点も説明していく。

 〈丘陵の恐竜ダンジョン〉のモンスターはステータスが高い筋肉系なので硬いシエラとの相性が良い。

 俺たちは職業ジョブLV50であるが、ほとんど高位職の集団なのでステータス面では問題無い。つまりここは俺たちのメンバーにとっても攻略しやすいダンジョンと言えるだろう。


 また、今回挑む〈丘陵の恐竜ダンジョン〉では採取で錬金素材がたくさん採れるためそっち方面でも期待している。

 これまで大変お世話になっていた〈優しいスコップ〉も〈サボテンカウボーイ〉からドロップした〈三段スキル強化玉〉で『採取LV6』に上げたのでまだまだ現役だ。


 元々〈優しいスコップ〉の『採取』はLV3だったので初級上位ショッコーまでしか使えなかったのだが、〈優しい採集シリーズ〉は非常に使い勝手が良い。〈スキルLV〉を上げるならまず〈優しい採集シリーズ〉を上げるべきだとギルドに相談し、満場一致で通った形だ。

 『採取LV6』なら中級上位チュウジョウまで使用することが出来る。


 これからも採取もしまくってやるぜ。


「あ! モンスターがいたわ! 皆、戦闘準備! 『守護の加護』!」


 お、早速第一モンスター発見だ。発見者はラナ。なんで『直感』持ちの俺より早く見つけられるのか未だに不明だ。まだ結構距離があるのに。

 とりあえずここのモンスターはステータスがSTR方面に高いのでラナには防御力バフの『守護』を頼んでおいた。


「結構速いわね。もう接触するわ『ガードスタンス』!」


 モンスターは2足歩行でスリムな体型をしたラプトル型モンスター〈トルトル〉だ。

 それが3体。足が速く、ラナが見つけた時はまだ遠くに居たはずなのに俺たちが準備を終えた頃にはもう間近に迫っていた。


「牽制します『ファイヤーボール』! 『フレアランス』!」


「ギャーウ!」


 ハンナの今日の装備は〈マナライトの杖〉。『能玉』は〈フレアロッド・魔能玉〉のようだ。

 真っ直ぐ接近する〈トルトル〉2体を牽制し、1体のみを引き寄せる。


「ギャーウ!」


「っ」


 1体の〈トルトル〉がシエラに飛びかかり、その大きなカイトシールドにガツンと当たる。

 しかし、シエラにはあまり効いていないようだ。


「確かに強いわね。でもこれくらいなら問題無いわ」


 さすがシエラである。心強い言葉だ。

 まあステータスが強いといえど上層のモンスターだしな。シエラの敵ではないだろう。


 そのままもう一度飛びかかってくる〈トルトル〉を受け流し、ひっ倒してスリップダウンをとってしまうほどには楽勝のようだ。


「『プレシャススラスト』!」


「ギャ!?」


「む、少し硬いですね」


 そこにエステルの攻撃が突き刺さり大きくダメージを与えたが、これまでのザコモンスターなら一撃で屠れていたのに対し、耐える〈トルトル〉を見てエステルが不満そうに呟いた。


「エステル、通常攻撃を意識して混ぜてみろ。相手の耐久力が高いからスキルばかりバンバン使うとすぐMP切れを起こすぞ」


「は! 了解しました」


 俺とエステルの通常攻撃であっと言う間に〈トルトル〉1体を屠ると、残り2体を相手にしているシエラの方へと向かい、〈トルトル〉を相手にした。


 そしてさほど時間も掛からず、最初の戦闘は勝利したのだった。



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