第220話 日曜日。そろそろ挑もうか中級ダンジョン。




 今後の〈エデン〉の目標やら新メンバーについてを話した翌日。

 今日は日曜日だ。


 昨日はリカとカルアがとうとう職業ジョブLV40に到達し、3段階目ツリーが解放された。素晴らしい。


 早速昨日は夜遅くまでギルド部屋に残り最強流を伝授した。

 普段は真顔なリカとカルアだが昨日はとてもうずうずとした様子だった。早く〈スキル〉を試してみたくて仕方ないのだろう。

 分かるぞ。先陣メンバーがみな通った道だ。


 また、俺とエステルが担当した新メンバー5人だが、俺が指導することで目に見えて上達していた。たった1日で思った以上の成果だった。

 うーむ、【勇者】のスキルに技能を向上させるようなものはないはずだが…。

 単に効率的な作戦などに触れて、ちゃんとしたやり方を吸収したのかもしれないな。

 ハイレベルのやり方を見ることは良い勉強になるとも聞くし、たとえ付いていけなくても引っ張られてそれなりのレベルに到達するらしいとも聞く。手ごたえがあったので今後も時間があった時は教えていきたい。

 またシェリアとシズが指揮に向いているので彼女たちにも少しずつ戦術なんかを教えていこうと思う。


 ただ、セレスタン以外はボスモンスターにはまだ慣れない様子だ。スキルの使い方、スキル回しについてもまだまだ拙いので、まずは練習場でスキルの練習をしたほうが良いという結論に落ち着いた。


 ということで本日の予定だが、


「ルル、シェリア、シズ、パメラは練習場でスキルの練習だ。一応スキル回しの基本をメモしたから、後でこれを読んで練習してほしい」


 ギルドメンバーが揃った朝のミーティングで今日の方針を話す。

 昨日のうちに話していたことなので誰からも異論は無い様子だ。

 1人ずつ俺が作った職業ジョブ毎のスキルの使い方について詳しく書かれたメモを渡していく。


「セレスタンは、今日は用事があるんだったな?」


「はい。本日は自由行動とさせていただければと思います」


「了解だ。だがセレスタンも立ち回りは良いがスキル回しについては改善の余地が有る。時間があるときに練習しておいてくれ。これ【バトラー】のメモな」


「かしこまりました。ありがとうございます、ゼフィルス様」


 セレスタンは攻撃を避けるのも上手いし、立ち回りは今のところ文句なしだ。フォローも上手い。ただスキルの使い方がワンパターンなことが多く、もっとスキルの使い方や効率的な運用方法については改善の余地があった。まあセレスタンならばすぐに身につけるだろう。


「次にリカとカルアだが」


「私たちは昨日振った3段階目ツリーのスキルの試しうちと練習だな。基本的に練習場やダンジョンの浅い部分で練習する予定だ」


「2人で大丈夫か?」


「ん。大丈夫。ダメだったら中位ショッチューの方に行くから」


「了解。じゃ2人の方針はそんなところで。あとこれ、3段階目ツリーのスキル回しのメモな。ある程度試し終わったらこっちも練習してみてくれ」


「ありがとう。感謝する」


 リカとカルアは今日は2人で行動のようだ。この2人は結構馬が合うのか一緒にいることが多い。あとリカが猫耳と猫尻尾が好きだからかな? 視線が結構カルアに向いているのだ、リカは。まあ猫耳可愛いからな。仕方ないな。


 2人はまず初級上位ダンジョンの浅い階層で練習するつもりのようだが、ザコモンスターでは職業ジョブLV40超えである彼女たちの敵ではないし大丈夫だろう。


「さて、最後に残った俺たち先陣メンバー5人だが、一足先に中級下位ダンジョンに挑もうと思う」


「中級ダンジョン! 良いじゃない、行きましょう!」


「待ってゼフィルス。確か私たち5人では厳しいから中級ダンジョンは一先ず見送って後続を育てよう、という話ではなかったかしら?」


 俺の発表にラナが目を輝かせて立ち上がり、シエラが疑問を投げかけた。


「ああ。俺たちで行けそうなダンジョンがないではないんだ。ただこれから行くダンジョン以外ではちょっと厳しいから、今までのようにダンジョンを攻略出来たからと言ってその勢いで別のダンジョンに挑むと痛い目に遭う、そんな理由もあって制限していた。今回行く所は、まあガチで強いが今までの初級とあまり雰囲気は変わらないダンジョンだな」


 所謂初級の延長みたいなダンジョンだ。出てくるモンスターは中級下位チュカの中でもトップクラスに強いけどな。何しろ〈ダン活〉プレイヤーからは〈中級下位チュカのガチダン〉なんて呼ばれていた所だ。強いぞ。ただ厄介ではない。


 他の中級下位チュカは大体厄介なモンスターや厄介な罠があるのでできれば索敵や罠を破壊できる斥候職を連れていきたいところだった。正直今のメンバーでそこに挑んだら、ハンナが戦闘不能になると思われる。


 俺はシエラの疑問に答えつつ、視線をラナのほうへ向ける。

 それにここに1人、中級下位ダンジョンに行ったらハマりそうな人物がいるからな。

 それを見てシエラも納得した様子だ。ラナが、また行きたい別のダンジョン行きたいと言い出したら困るのでセーブしていたのだと分かったのだろう。


 また、中級下位ダンジョンでは職業ジョブが最大LV65まで上がる。

 一度中級下位ダンジョンに挑み出したら歯止めが利かなくなってLVが上限になるまで挑みまくるとかザラだからなぁ。敢えて初級上位の上限LV50でストップさせていた形だ。


 ただ、リカとカルアも中級下位ダンジョンに挑めるようになったし、そろそろ解放していってもいいと思うのだ。新メンバーは練習が必要だがリカとカルアは熟練度的な意味でもかなり優秀だからな。


「まあ、後はギルドの足並みを揃えなくちゃどっち道先に進めないしな」


「そうね。了解したわ、私も中級ダンジョンに挑むのに否はないわよ」


「私もシエラさんに同じです。中級ダンジョンかぁ、楽しみだね」


「私も問題ありません」


 ハンナとエステルも問題なさそうなので今日は久しぶりに俺、ハンナ、ラナ、エステル、シエラの初期メンバーで中級下位ダンジョンに挑むこととなった。

 久々で嬉しいのかラナがすっごく笑顔だ。まぶしい。そして楽しみといった様子で聞いてくる。


「それでどこのダンジョンに行くの!? 確か中級ダンジョンっていっぱいあるのでしょ」


「ああ。俺たちがこれから行くのは罠が比較的少ない代わりにモンスターが強いと言われているスポット、〈丘陵きゅうりょうの恐竜ダンジョン〉だな」


 別名:〈ジュラシックパーク〉と呼ばれている恐竜モンスターが徘徊するダンジョンだ。



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