第203話 レアボス戦! ガトリングのカウボーイ!
「レアボスに挑むのか。腕が鳴るな」
「ん、楽しみ」
結局〈笛〉を使ってのレアボス戦が決まったのでリカとカルアにも情報共有をしたところ、このような答えが返ってきた。
二人ともすっかりダンジョンにハマってくれて、俺はとても嬉しいぞ。
「それでゼフィルス、〈サボッテンダー〉のレアボスはなんなのだ? 〈デブブスペシャル〉よりは強いのであろう?」
「そういえば二人は〈デブブスペシャル〉戦を経験していたんだったか」
あの時はシエラではなくハンナがパーティにいたんだったな。数日前の事なのに懐かしく感じる。
つまりレアボスは初めてではないのだ。ならばそのパワーアップ具合に驚くことも無いだろう。レアボスと通常ボスは推奨LVが10近く変わってくるからな。
「〈孤島の花畑ダンジョン〉のレアボスは〈サボテンカウボーイ〉だな。緑色のサボテン馬に跨がった緑色のカウボーイ(?)で、なんというか、動くサボテンだ。攻撃方法は遠距離主体だが、サボテン馬で突進攻撃もしてくる。そして厄介なのが
西部劇に出てくるようなカウボーイを想像してみてほしい、あれのサボテン版だ。(サボテン版ってなんだ?)
上手く説明出来ないのだが、特に質問なんかも無さそうなので俺は説明を続ける。
「
「もし受けたらどう対処すれば良いのだ?」
「良い質問だリカ。万が一投げ縄を受けてしまったら、とりあえず暴れろ」
所謂ぐちゃぐちゃ十字キーだ。レバガチャとも言う。とにかく十字キーをいじくりまくれば脱出できるので、ダウン同様みんなでフォローしつつ、脱出できるのを待つことになる。
しかし、対処方法を答えたのにリカは微妙な顔をした。見ればシエラとラナも同じような表情をしている。その顔には「淑女が暴れるなんて、そんなはしたない真似できないわ」と書かれているようだ。
想像してみる。
縄に縛られ大きく暴れて抵抗するラナの姿を。しかし抵抗むなしく、ずるずるとカウボーイの下に引き摺られていってしまうのだ。相手はサボテンだけど。
いけないな。〈ダン活〉の対象年齢制限が上がってしまう!
※〈ダン活〉は対象年齢B(12歳以上)のゲームです。
「ま、まあアレだ。とある偉い人はこう言っていた『当たらなければどうということは無い』ってな。だから
「わかったわ」
「絶対に引っかからないわよ!」
「断固拒否しよう」
慰め(?)の言葉を送ると力強い返事が返ってきた。
なんだかやる気どころか
ちなみにカルアは一人だけキョトンとしていた。
〈笛〉を吹いてからボス部屋に突入すると、1度目からレアボスをツモった。
良い引きだ。
誰もいないボス部屋の奥が光る。レアボスポップのエフェクトだ。
そうして現れたのは普通の馬くらいある馬型のサボテンと、その上に跨がる西部劇に出てきそうなカウボーイの格好をした人型のサボテン。ちゃんと両方ともハニワの目と口が付いている。馬サボテンの顔がとてもシュールだった。
あれが〈孤島の花畑ダンジョン〉のレアボス〈サボテンカウボーイ〉だ。働き者だぞ。
「ヘイトを稼ぐわね。『オーラポイント』!」
「バフを掛けるわ。『獅子の加護』! 『守護の加護』!」
先制にシエラがまず全体のヘイトを稼いだ。続いてラナが全体に攻撃力と防御力上昇のバフを掛ける。
〈サボテンカウボーイ〉のターゲットがシエラに向いた。
「フッフッフ、ハハハハハ!!」
笑う〈サボテンカウボーイ〉が手綱を持っていない方の腕(?)をシエラに向けた。
あの行動は知っている。
「ガトリングが来るぞ! タンクの傍に固まるな! 散開!」
「了解した!」
「避ける」
俺の指示により全員がタンクから距離を取ると、〈サボテンカウボーイ〉の腕からドドドドドドッ、とトゲが乱射された。機関銃とか持っていないくせに腕から火花が散ってやがる。どんな原理だろうかこのモンスター。
放たれたトゲに精密性は無いので範囲攻撃だな。シエラを中心とした円に無差別にトゲが放たれる。
シエラは大きなカイトシールドを前に出し、完全に受けきった。あれくらいの攻撃シエラなら余裕だろう。
続いては、投げ縄攻撃だ!
「シエラ回避!」
「カバーシールド!」
移動からの防御スキルでシエラは難なく回避した。
さて、反撃の時間だ。
最初に〈サボテンカウボーイ〉に到達したのはカルアだった。
さすが、エデン
「『鱗剝ぎ』! 『二刀山猫斬り』!」
カルアが防御デバフ攻撃『鱗剝ぎ』から単体攻撃スキル『二刀山猫斬り』で一気に攻める。
二連続攻撃が入りダメージを受けた〈サボテンカウボーイ〉が腕をクロスさせて溜めるような仕草をした。
――あれは、周囲範囲攻撃!
「フハハハ!」
「カルア、緊急回避!」
「! 『回避ダッシュ』!」
カルアがその場から全力で逃げ出すとほぼ同時に〈サボテンカウボーイ〉が両腕を広げてガトリングを放った、馬がその場でゆっくり回転し、ローリングガトリングをしてくる。ちょっとだけカッコイイ絵だ。あのカウボーイ、サボテンだけど。
カルアはギリギリで攻撃範囲外に出られた様子だ。セーフ。
「フハハフハハ!」
今度はシエラに向かって両の腕を向けダブルガトリング。しかし、シエラの盾が崩れることは無い。
「接近完了、今から攻撃に移る。俺が指示を出すまでガンガン攻撃しちゃってくれ」
「了解した! 『横文字二線』! 『十字斬り』!」
「『
「私も参戦、『フォースソニック』!」
「フハハ!? フハハハ!」
リカと俺とカルアの攻撃に大きくダメージを受けた〈サボテンカウボーイ〉がまた腕をクロスにする。
「離れるぞ!」
「了解だ!」
「ん」
そうしてまたローリングガトリング。直撃すればそこそこのダメージと〈毒〉を食らう可能性がある攻撃だ。防御力の低いカルアなら一撃で半分近くHPを持っていかれるかもしれない。予備動作をしたらすぐに指示を出す。
一周回り終えたと思ったら今度は突進攻撃だ。セグウェイに乗った〈竹割太郎〉と同じく馬型サボテンが縦横無尽に走り出す。
だがこれは逆にチャンスでもあった。
「止めるわ! 『聖光の耀剣』!」
「『カバーシールド』!」
「『光の刃』!」
「フワッ!?」
パカラッパカラッと馬が駆けたと思ったらそこにラナが大技を放った。
ズドンという音と共に『聖光の耀剣』が突き刺さり馬が若干よろける。
そこにシエラが素早く割り込んで行く手を阻んだ。素晴らしいコンビネーションだ、〈竹割太郎〉を周回しまくった成果がここに来ているな。
相手はラナの攻撃で怯んでいたためシエラの『
スリップダウンだ!
「チャンスだ! 総攻撃ぃ! 『ソニックソード』! 『ハヤブサストライク』!」
「『突風』! 『スルースラッシュ』! 『鱗剝ぎ』! 『二刀山猫斬り』!」
「『聖光の宝樹』! 『光の柱』!」
「フワワワ!?」
俺の位置からだとちょっとだけ距離があったが、なんとか『ソニックソード』を使いダウン中に攻撃を届かせることに成功。こりゃ相当なダメージが入ったな。
リカは残念ながら遠すぎて付いてこられなかったようだがカルアは余裕の参加だ、回避にも使える中距離ダッシュスキル『突風』で距離を詰め、そこから連続攻撃を放った。
「フッハハハハハハッ!!」
「『インダクションカバー』!」
ダウンから起き上がり、怒った〈サボテンカウボーイ〉の全体攻撃が放たれるが、これはシエラが『インダクションカバー』を使い完璧に防ぐ。
「回復するわ! 『回復の願い』!」
「ありがとうございますラナ殿下。『挑発』! 『ガードスタンス』!」
ダウンから起き上がった〈サボテンカウボーイ〉がタゲをラナに向けたが、即シエラが奪い返さんとする。しかし、
「フハハハ、ハッ!」
「いや待て、タゲが移っていない! 〈ユニークスキル〉が来るぞ!」
運の悪いことにタゲが向く前に〈サボテンカウボーイ〉が〈ユニークスキル〉のモーションを取っていた。赤いエフェクトが身体全体を包んでいく。一度こうなるとキャンセルは出来ない。
〈サボテンカウボーイ〉の〈ユニークスキル〉は『サボテン流・全弾一斉射撃』。高威力の直線範囲攻撃だ!
「ヤバい! ラナ、シエラの方に走れ! 狙われてるぞ! シエラ『カバー』!」
「『カバーシールド』!」
「リカとカルアは攻撃を集中しろ! なんでもいいからぶっ倒せ!」
「了解した!」
なんていうタイミングだ。
ラナには〈デブブスペシャル〉の時に使った『障壁』があるが、あれは魔法攻撃限定の結界だ。このユニークは防げない。
防ぐにはシエラがカバーするしか無い、おそらく直撃すればラナは戦闘不能になる!
シエラがラナとの間に滑り込み盾を前に突き出した。
「『鉄壁』! 『城塞盾』!」
「ラナはシエラを全力で回復しろ!」
「『天域の雨』! 『守護の加護』!」
「フハハハハハハハハハハ!!!!!!」
「キャー!」
シエラがスキルを使いカッチカチにガードを堅め、背後からラナが支援回復でシエラを支えた。
そこに〈サボテンカウボーイ〉の『サボテン流・全弾一斉射撃』が発動。
〈サボテンカウボーイ〉本体の身体全体が火を噴き、トゲを乱射した。そして馬も続く、ハニワ型の目と口からトゲミサイルを発射した。馬になんて機能を付けてるんだこのカウボーイは。
しかし、見た目はアレだが威力は高い。何しろ中級下位ダンジョンボス並の火力を持ち、しかも〈ユニークスキル〉である。シエラなら耐えられるはずだが…。今の悲鳴がちょっと怖い。ラナがちゃんと回復できているのかとても心配だ。しかし、今は信じて動くしかない。
俺たちはシエラとラナを撃ちまくって動かなくなったカウボーイに接近し、大技を準備。
そして〈ユニークスキル〉の硬直後、俺たちは全力で攻撃を仕掛けた。
「『
「はあ! 『横文字二線』! 『十字斬り』! 『ツバメ返し』! 『刀撃』!」
「『鱗剝ぎ』! 『二刀山猫斬り』! 『急所一刺し』! 『フォースソニック』!」
「ハハハハハ――フハァッ!?」
笑いながら全弾ぶっ放した〈サボテンカウボーイ〉が俺たちの攻撃にクリティカルを取られてダウンした。
チャンス継続! 〈ユニークスキル〉は諸刃の剣だって事を分からせてやる!
その後、全力攻撃第二弾を受け大ダメージが入った〈サボテンカウボーイ〉は起き上がることは無く、そのままエフェクトの海に沈んで消えたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます