第194話 2段階目ツリー解放後の〈ナイトゴブリン〉戦




 〈ナイトゴブリン〉戦は最初を抜かせばだいぶ好調に進んだ。


 やはり強い人と共闘するといい刺激になるらしい。周回する毎にルル、シェリアの腕前がどんどん上がってきていた。


 え、セレスタン? あの執事は最初からそつなくこなしてたよ。なんだろう、戦闘なんかも執事のたしなみだったりするのだろうか? 回避スキルも防御スキルも使っていないくせに軽々避けるし、攻撃は鋭い。そして微笑み。

 まあセレスタンは後にしよう。


 エステルも手加減を意識しての立ち回りが少しずつ上手くなっていった。

 特に三段階目ツリーのスキルを使わなくなったのがとても良かったと思う。あれは強すぎるよ。普通初級中位ショッチューじゃ使えないはずだからねアレ。


 まあそれでも最近のエステルはSTRが400近くもある事もあって下手に攻撃しすぎるとボスが簡単にエフェクトに沈むので中々難儀だった模様だ。

 少し「チャンスには総攻撃!」を身体に染みこませすぎたかもしれない。

 俺の育成のたまものだ。エステル頑張れ。


 そんなこんなで10周もすると全員の職業ジョブLVも20に上がり2段階目のツリーが解放された。

 ここからは俺とエステルは抜かして3人でボス戦に挑んでもらう。

 2段階目のツリーが解放されれば3人でも余裕だろうからな。


 とはいえツリーなどはゆっくりじっくり楽しみながら振りたいもの。

 今日は少しだけSP振って2,3個使用可能アクティベートしておき、残りは帰還したらじっくり振っていこう。

 一気に何個も使用可能アクティベートしてもどれを使ったら良いかわかんなくて混乱するだけだしな。


 比較的今必要なものを全員に伝授し使用可能アクティベートにさせた。

 これで〈ナイトゴブリン〉戦が捗るだろう。


「あれ? エステルお姉さんはどこに行ったのです?」


「ああ、エステルには〈魔力草〉の採取に行ってもらったんだ」


 〈野草の草原ダンジョン〉で採取出来る貴重な素材〈魔力草〉。

 ハンナに採取も頼まれていたのでちょうど良かった。ここにいてもやる事は少ないのでエステルには〈優しいスコップ〉を持って採取の旅に出てもらった。


 ちなみに俺は周回のためのドカンッ担当と回復や監督などの役割があるためここに残っている。


 何事も効率よく行こうが〈ダン活〉プレイヤーのモットーだ。



「じゃ、行ってくるのです!」


「行って参ります」


「おう。頑張ってな」


 今回の俺はヒーラー担当だ。

 誰かしらのHPが少なくなったら『オーラヒール』で回復だな。

 タンク、アタッカーは3人で役割分担だ。


 まず4体のお供ゴブリンの前にルルが歩み出た。


「行くですよー! 『ヒーローはここにいるの』!」


 ルルの挑発スキルだ。

 一瞬マントを着たルルの幻影ヒーローが現れ片手剣を掲げるポーズを取ると、お供ゴブリンのタゲがルルに向く。何あれ、凄く可愛いんだけど。


「後でもう一度見せてもらいましょう。『精霊召喚』! 『エレメントランス』!」


「ゴビュ!?」


 なんかルルを見てボソッと呟いたシェリア。その言葉に同意する。

 〈火精霊〉を召喚したシェリアが中級魔法の『ランス』系で〈ソードゴブリン〉を撃った。

 〈火精霊〉から放たれたハンナの『フレアランス』によく似たものが飛んでいき見事に〈ソードゴブリン〉に命中する。


「それでは僕も。『上段回し蹴り』!」


「ゴアッ!?」


 いつの間にかルルの傍にスッと立ったセレスタンがもう一体の〈ソードゴブリン〉にハイキックをかまして吹っ飛ばした。ハイキックとか超格好いい。というかセレスタンの動きがやばいな。いつの間に剣の間合いの内側に入ったんだ?


「ルルも続くのです! 『小回り剣技』! 『チャームソード』! 『ハートチャーム』!」


「ゴブゴブ!」


「ゴブゴブ!?」


 ルルの相手はただゴブリン2体。

 剣技系の攻撃速度を上げる『小回り剣技』で回転数を増やし『チャームソード』で攻撃力を奪い、『ハートチャーム』でさらに攻撃力を奪う。

 ただ『ハートチャーム』は範囲系デバフであって攻撃スキルではないので発動する順番が逆だな。

 『ハートチャーム』を最初に発動するのが正しいすじだ。じゃないとダメージを無駄に食らう事になる。後で正しておこう。


 『チャームソード』で斬られたゴブリンは少しノックバックして下がり、やられていない方のゴブリンが拳をルルに放つ。しかし、ポコッという擬音が聞こえるかのようだ。命中したはずなのにルルにはまったく効いた様子は無い。

 パッシブスキル『ヒーローだもの、へっちゃらなのです』の効果である。HPはしっかり減っているが。


 まあ攻撃力も下げているのでダメージも微々たる物だ。ルルは元々のVITは高めにしてあるし姫職防具も優秀なので本当の意味でも全然効いていない。

 そして2段階目ツリーで解放される〈ユニークスキル〉『ヒーローはピンチなほど強くなるの』でMP回復。ヒーローにとってMPとはパワーらしい。

 ルルの反撃が始まる。


「『小回転斬り』!」


「「ゴビュ!?」


 自分を中心とした周囲範囲攻撃『小回転斬しょうかいてんぎり』で2体一遍いぺんに吹き飛ばす。


「『エレメントアロー』! 『エレメントシュート』!」


「『ストレートパンチ』!」


 もうお供ゴブリン程度では相手にもならないようだ。

 〈ソードゴブリン〉の方もシェリアとセレスタンによってボコボコにされていた。


 そしてお供ゴブリンも消え去り、本命の〈ナイトゴブリン〉が動き出す。


「『ヒーローはここにいるの』! 『ハートチャーム』!」


「『エレメントランス』!」


「ゴブァァァ!」


 先制でルルの挑発とデバフが刺さる。

 次にシェリアの『ランス』が飛ぶが、これは避けられた。


「『チャームソード』!」


「ゴブアァァァ!」


 ルルが飛びかかり『チャームソード』でデバフを重ねるが、〈ナイトゴブリン〉の剣がルルに振り下ろされる。


「る、ルル!?」


 シェリアの悲鳴がボス部屋に響いた。騎乗したデカいゴブリンからの剣振り下ろし攻撃、端から見るととんでもなくヤバい光景。しかし、


「まったく効かないのです! 『ポイントソード』! そして『チャームポイントソード』!」


「ゴブア!?」


 〈ナイトゴブリン〉が確かに直撃したはずなのに!? と言わんばかりの叫びを上げ、まったく効いていない様子のルルの防御力デバフ攻撃『ポイントソード』、そして二段階目ツリーで解放された攻撃力防御力デバフ攻撃『チャームポイントソード』の直撃を受ける。


 『チャームポイントソード』は『チャームソード』と『ポイントソード』の上位ツリーだ。強いぞ。


「『ストレートパンチ』! 『三回転裏拳』! 『上段回し蹴り』!」


 防御力低下を見てセレスタンがたたみ込む。

 あまりの攻めに〈ナイトゴブリン〉の足が止まった。


「そのまま止めておいてください。『エレメントジャベリン』! 『エレメントランス』!」


「ゴブ! ゴアアアアアア!!!!」


 チャンスとみてシェリアの魔法が撃ち込まれ〈ナイトゴブリン〉が叫んだ。こりゃ大きなダメージが入ったな。


 しかし〈ナイトゴブリン〉が猛攻を仕掛けてきた。

 ルルにガンガンと振られる剣。


「負けないのですよ! 『チャームソード』! 『チャームポイントソード』!」


 ルルも負けじと剣を振るう。

 なんかどこかで見たような光景だ。


 あ、そろそろルルのHPがピンチだな。さすがにボスの攻撃は受け続けたらこうなる。

 MPは全快近く回復しているけど。


「『オーラヒール』!」


「はわ! もうそんなダメージ受けていたです!? 緊急回避です『小回り回避』!」


「ゴブ!?」


 俺の突然の回復にルルは慌てだして回避を選んだ。

 『小回こまわ回避かいひ』は緊急回避スキル。でんぐり返しでバイバイバイだ。

 突然小っさく消えたルルタゲに〈ナイトゴブリン〉が困惑する。どうやらあまりに小さく移動されて見えなかったらしい。


 あ、チャンスだな。


「今です! 『エレメントジャベリン』! 『エレメントランス』! 『エレメントシュート』! 『エレメントアロー』!」


「『ストレートパンチ』! 『三回転裏拳』! 『上段回し蹴り』!」


「ゴブア!?」


 動きの止まった隙を見逃さずシェリアとセレスタンの全力攻撃が〈ナイトゴブリン〉を襲った。結果HPが0になり、〈ナイトゴブリン〉はエフェクトの海に沈んでいく。


 少しフォローしたけど、これならすぐにフォローいらずでも倒せるようになるだろうな。


 とりあえず3人での〈ナイトゴブリン〉戦。勝利。




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