第195話 ボス戦終了。最後のお宝は〈優しいピッケル〉
「ただいま戻りました」
「あ、エステルお疲れ様。成果はどうだった?」
夕方、もうすでに何回目か分からない〈ナイトゴブリン〉戦が終わったところで14層へ続く門からエステルが現れた。採取の旅から戻ってきたようだ。
「10層から14層を巡りました。やはり深層の採取ポイントは手が付けられていないですね。〈魔力草〉は282個採取出来ました」
「凄い採ったな!? でも助かる。帰ったらハンナにMPポーションにしてもらおう」
もっと少ないと思っていたが、どうやらエステルは馬車で採取ポイント巡りをしていたらしい。わざわざ10層まで戻ったようだ。まあ馬車なら15分と掛からないだろう。さすが【騎士】職。あんまり騎士っぽくないが。
しかしこれでMPポーション量産が捗るな。エステルには感謝だ。
「はい。そちらはいかがですか?」
「ああ。すでに目標の
数回〈ナイトゴブリン〉を狩った辺りからはルルも自分のHPに気を使うようになったのでHPの減りはずっと少なくなった。
今は回避スキル『小回り回避』や『ローリングソード』などを使ってHPを削られないよう試行錯誤しているところだ。
ちなみに『ローリングソード』は『小回り回避』の上位ツリーで、でんぐり回避してからの斬撃スキルだ。俺の『ソニックソード』に少し似ているな。
結局あの後いくつかのスキルを
新しいスキルのワクワクと、早く慣れた方が良いということもあって彼女たちからの強い希望だ。
まあ本人たちがしたいというのなら俺に止める権利は無い。快く最強育成論を伝授してあげた。
「あ、エステルお姉さんです!」
入口近くで話し込んでいると、ドロップを収納し終えたのだろう、全員が戻ってきた。
ルルが真っ先に走り寄ってくる。
「聞いて聞いて! ルルすっごく強くなったんです! くるっと回ってスパンです! クルクル回ってスパスパです!」
「そうですか。頑張りましたねルル」
「えへへです」
小動物っぽく自慢するルルにホッコリした顔のエステルが頭を撫でている。
ホッコリ空間の完成だ。お互い、なでなでする側とされる側で癒やされてる。俺もしてみたい。
「ところでゼフィルス殿。ルルがクルクル言っているのは、まさかゼフィルス殿とクルクル踊ったということではないですよね?」
「エステル、何故そんな顔を向ける?」
「??」
何故だかエステルにくわっとした目で見られた。エステルにこんな顔で見つめられるのは初めてだ。ちょっとハンナっぽい目だったぞ?
ほら、ルルもハテナを浮かべている。
「クルクルはルルのスキルです! すっごく強いのですよ!」
「あ、そうなのですか。少し誤解がありました」
「ちなみに言っておくが、ルルとのスキンシップはシェリアの方が多かったぞ。さっきは抱っことかしていたし」
「…そうですか」
エステルの視線がシェリアに向いた。どうやら羨ましいらしい。
先ほどの一人旅は思いのほか寂しかったようだ。
そこへシェリアたちが到着する。
「どうしたのですかエステル? 見た事も無いような顔をしていますよ?」
「いえ、なんでもありません。シェリアはダンジョン楽しめましたか?」
「すごく知識欲が刺激されて面白いですよ。ゼフィルス殿のアドバイスは的確ですし非常に効率的です。のんびり屋のエルフには刺激に満ち満ちています。できればお持ち帰りしたいくらいです」
「ラナ様が悲しまれるので絶対にやめてくださいね?」
「シェリアは俺の前でそういう事言うのは抑えようか」
俺をお持ち帰りして何をするつもりだろうか? 話のニュアンスから監禁して〈ダン活〉知識を全部吸い上げる図が見えたぞ?
もしシェリアに自宅などに誘われても絶対行かないようにしようと心に決めた。
「ゼフィルス様、よろしいでしょうか?」
「お、おうセレスタン。どうした?」
今話を変えてくれるのは大歓迎だ。スッとセレスタンの方へ向かう。
「はい。ドロップでこちらが出たのですがいかが致しますか?」
「って〈優しいピッケル〉じゃん!? 何、〈金箱〉出てたの!?」
どうやらエステルと話していて気が付かなかったが今回の〈ナイトゴブリン〉で〈金箱〉をドロップしていたらしい。
セレスタンが見せてきたのは〈金箱〉産〈優しい採集シリーズ〉の一つ、『発掘』の付いた〈優しいピッケル〉だった。
マリー先輩から買い取った〈優しいスコップ〉の『発掘』版だ。ちゃんと『量倍』スキルも付いている。『発掘LV3』なので
「当然売らん! 使い道はいくらでもあるからな。――皆、〈金箱〉は大当たりだったぞ、おめでとう!」
「当たりでしたか!? 良かったです! ありがとうです!」
俺の大当たり宣言にルルが両手を挙げてぴょんぴょん喜ぶ。何コレ可愛い。
見ればエステルとシェリアも金箱アイテムより喜びのルルを見つめていた。すごくよくわかる。
「よっし、じゃあ帰還するか! 最後のドロップも超良かったし、今日も良い日だった!」
「はい。お疲れ様でした」
「お疲れ様~」
全員で労いの言葉を掛け合いダンジョンから帰還する。
うーん。今日も気分が良い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます