第154話 〈姫職〉組LV40到達! 3段階目ツリー解放!




「〈銀箱〉!」


 まずハンナが反応した。もはやお馴染みになりつつあるな。


 確率的に本来2割程度でしかドロップしない〈銀箱〉だが俺たちには〈幸猫様〉の恩恵がある。お高いお肉さえあれば〈銀箱〉なんてもはや見慣れた物に早変わりだ。

 さーて、今回のレアドロップはなんだろうな。っとその前にやることがあったな。


 〈銀箱〉から目を離し、集まるメンバーたち。


「ゼフィルス君お疲れ様~。ついに初級上位ダンジョン、クリアしたね」


「ああ。ハンナもお疲れ様。やっとこれでEランク試験を受けられるな」


 手を上げるハンナとハイタッチする。


 いやあ、まさかハンナがここまで付いてこられるとは思わなかった。


 生産職のハンナ。戦闘ステータス皆無なのに武器の性能と〈マホリタンR〉だけでモンスターを無双する希代のロリッ子。

 なんでこんな風に育っちゃったんだろうな? まだ【錬金術師】、本職生産の方は全然出来てないのに戦闘だけはこんなに立派になってしまって…。俺は意味が分からないよ。こんな風に育てたのは俺だけど。


 たまに思うんだけど。ハンナ、取得する職業ジョブを間違えたんじゃないかって…。


「? どうしたの?」


「いやなんでも無い」


 まあ、言わないけどさ。いつも優しいハンナでいてください。


「お疲れ様。ついに最後の証ね」


 シエラが感慨深そうに初級ダンジョン最後の証を見つめる。

 これで初級の証はコンプリートだな。後で胸に付けて自慢しないと。

 あれ? そういえばスクショ機能ってどう使うんだ?

 どこかにカメラとか売ってたっけか?


「シエラさん、お疲れ様です」


「ハンナもね。杖の能力には慣れたかしら?」


「いえ、まだ戸惑ってばかりです。さっきの『ダークジャベリン』の換装もすごく時間が掛かって――」


 俺がスクショ機能について悩んでいるうちにハンナとシエラが〈マナライトの杖〉について話し出す。


 しまった。話の輪に入りそびれてしまった。

 まあいい。こちらに向かってくるラナたちの方に混ぜてもらおう。


「あ! ねえゼフィルス、ボス全部倒したわね! これで〈エデン〉もEランクかしら!」


「お疲れ様ですゼフィルス殿」


「二人ともお疲れ。初級ダンジョンはクリアしたけどEランクにはなっていないな。この証を全て付けているギルドマスターが試練をクリア出来たら、無事〈エデン〉もEランクになれるぞ」


 そうラナの発言を訂正しながら胸にある証を指さす。手に入れた瞬間逸早いちはやく証を付けたので俺の胸の部分には9つの初級ダンジョンの証が耀いていた。

 うーむ。こうコンプリートした証を見ると気分が良いな!


「良いわねそれ! かっこいいじゃない、私もやりたいわ! エステル付けて付けて」


「はい。動かないでくださいねラナ様」


 ラナも同様にドレス型聖女服に輝かしい攻略者の証を取り付けていく。


「付けましたラナ様」


「どうかしらゼフィルス! 私もカッコいいんじゃないかしら!」


「いいね!」


 ラナの耀く証たちを見て俺は親指を上げた。

 やっぱ攻略者の証は胸にびっしり付けるのが格好いいよな。

 ラナも見た目だけなら出来る女の雰囲気を放っていてかなり良い感じに見える。

 でもラナの場合、格好よくはないのでとりあえず「いいね」だけしておいた。

 どちらかというと、萌える。




 その後、初級ダンジョン全制覇で皆盛り上がり、皆でハイタッチを交わしたのち一度救済場所セーフティエリアに戻ることとなった。

 今回の〈マザーマッシュ〉戦でついに〈姫職〉組の職業ジョブLVが40に到達し、3段階目のツリーを取得出来るようになったのだ。


 出来れば一度帰還し、ゆっくりと伝授していきたいところではあるが、俺の『ライトニングバースト』のように格好いい〈スキル〉〈魔法〉はすぐにでも使いたいだろう。特にシエラとエステルは初の〈ユニーク〉を取得出来るようになったのだからなおさらだ。

 なんだか三人ともそわそわと落ち着かないように見える。


「軽くSPを振って使用可能アクティベートしておくか」


「さすがゼフィルス、話が分かるわね! 私もちょうど提案しようと思っていたところだったのよ!」


「頼めるかしら。せっかくダンジョンの最奥に来ているのだし、時間を効率的に使うならすぐにでもボス周回をした方が良いとは分かっているのだけど…」


「シエラ様のお気持ちも分かります。しかし、これはなんと言いますか、自制が利きませんね」


 うむうむ。3段階目のツリー解放というものはそういうものだよシエラ君、エステル君。

 ツリーが解放されて飛びつかない人間はいない。

 普段冷静沈着な人物でもツリーが解放されればSPを振らざるを得ないのは自然の摂理だ。

 しかも、今日のためにずっとSPを貯めてきたのだから振りたくて振りたくて仕方が無いだろう。俺もそうだった。


 ということで、軽くだがSPを振ってしまうとする。

 使用可能アクティベートするだけなのですぐに終わる。

 しかし、時間が押しているからと言ってこの3段階目ツリーのSP振りを即終わらせてしまうなんて勿体ない事はしない。

 故に少しだけ、ゆっくりと、ニヤけながら、3つだけそれぞれSPを振って使用可能アクティベートさせておき、残りは帰ってからじっくりと行う事にする。


 こんな場所で全部振ってしまうなんてソレこそ勿体ない。

 SP振りというものは神聖なものなのだ。


「はぁ。できたわぁ」


 ラナが感慨かんがいふけるようなため息を吐いた。


 うむ。その感覚、俺にも覚えがある。いいよね、3段階目ツリー取得って。


「こちらもよ」


「本当に欲がき立てられます。ここまでしか振れないのが口惜しいような」


 エステルの戸惑ったような表情がなかなかに素敵だ。

 大丈夫。後でちゃんと振らせてやるさ。

 まずはボス周回優先だな。職業ジョブLVを上げれば振れるSPだって増えるぞ。


 さあ、今使用可能アクティベートした〈スキル〉〈魔法〉のお披露目と行こうじゃないか!



 あ、ちなみに〈銀箱〉からは〈燃えるキノコソード〉というネタ武器が出たよ。


 いらんわ!




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