第139話 マリー先輩の隠し球? ガチの金箱産アイテム
「兄さんたち、今のは滑ってもうたけど次のはネタでもノリでもないガチやから安心してや」
「お、おう」
マリー先輩がガチだと?
何それ、すごく興味ある。
「これがうちのギルドのとっておきや!」
ドン、と擬音が付きそうな勢いでマリー先輩が取り出したのは、丸い水晶を抱えた竜のアイテム。俺はそれにとても見覚えがあった。
「〈幼若竜〉じゃねぇか!」
「ほほう。さすが兄さん。これを知ってたか!」
先ほどの汚点を払拭するかのように出されたそれ。
『レシピ解読』は、『鑑定』の時と同じくアイテムを使って行われる。
本来なら専門の『レシピ解読』用アイテムを用いて行われるそれだが、マリー先輩はなんと、複数の解析系スキルが付いた激レアアイテムを取り出した。
これ一つで『解析』『看破』『解読』『
アイテム名〈
………直訳すると〈よう分かる〉だ。
うん。さすがのネーミングセンスだぜ開発陣。
しかし、そのちょっとアレな名前とは違い性能は抜群。
『レシピ解読』も『解読』スキルで代用可能だ。
俺も是非欲しいぜ。中級上位ダンジョンの〈金箱〉産だから当分先だけどな。
「マリー先輩。そんな激レアアイテム持ってたんだな」
「ま、これはうちのギルドが代々引き継いできた大事な大事なアイテムやから、持ってるというのも違うけどなぁ。もちろん非売品やで?」
だろうな。
ま、買えたとしても俺はドロップを狙うけどな。
破産しちゃう。
「ちょっと、二人だけで盛り上がらないで私たちも交ぜなさいよ。寂しいじゃない」
「おっと、悪いな」
激レアアイテムを見るとつい盛り上がってしまう。
灰なゲーマーの宿命が辛い。
すっかり置いてきぼりにしてしまったラナたちにも〈幼若竜〉の性能を説明すると、みんな
「『解読』一つとっても『レシピ解読』『本解読』『暗号解読』『古代文字解読』などのスキルが含まれた複合スキルだ。それが4つも付いた破格のアイテムといえば〈幼若竜〉の価値が分かるか?」
「ちょっと、それすごいじゃない!」
そう、すんごいんだよこれ。名前はアレだけど。
「ま、堅苦しい説明はここまでにして早速始めよかぁ。兄さんレシピ出してぇ」
「あいよ」
〈小狼の浅森ダンジョン〉でドロップしたレシピを取り出してマリー先輩に渡すと。
マリー先輩はそれを〈幼若竜〉の前に持っていく。
すると、
「あ、目が光った」
「レシピが読めるようになっていきますね」
ハンナとセレスタンが言うとおり、今までよく分からない波線みたいな文字で書いてあったレシピが、普通の日本語になって読めるようになった。
おお! ただの紙に書かれた文字が変わるだなんてファンタジーだぜ。どこかの魔法魔術学校のようだ。少し感動。
この不思議な光景を、俺は感動と共に見つめていたが、この世界の住民はただ珍しいなぁとばかりの反応だ。なんということだ。この感動を共に分かち合える人がいないとは!
少しだけ寂しい。
「これは、〈ダッシュブーツ〉の製作方法、と書いてあるわね」
「おお! 〈ダッシュブーツ〉か!」
〈ダッシュブーツ〉、スキル『移動速度上昇LV5』が付いた足装備だ。主に【服飾師】系のレシピに分類される。
レアボス〈銀箱〉産のレアドロップということもあって装備自体はかなり良い物だ。俺もゲーム時代はよく使った。中々の当たりだぞ。
レシピアイテムの利点は量産できるという点にある。
レシピを素材として使用するなんて事はないので永久的に使えるのだ。
装備がドロップすると一個で終わってしまうので、レシピがドロップした方が量産的な意味では良い。
ただ、作製するのに素材が掛かるので、装備の方が良いと言う声もある。その辺人によりけりだな。俺はどちらも有り派だ。
「マリー先輩、このレシピ使って作ってくれるか? あ、もう持ってたりする?」
「いんや初めて見たわぁ。もちろんやるで、任せてや。レシピはどないすんの?」
「ん~。学園に売ってもいいが、マリー先輩は?」
「初めての装備やから品が出来てその性能を見てからやけど、良い物なら買い取るで!」
「はは、了解。じゃあマリー先輩が買い取りだな。預けておくから査定しておいてくれ」
〈ダッシュブーツ〉は移動速度上昇。つまりギルドバトルで非常に有効だ。良い物確定であるからマリー先輩に高値で買ってもらおう。
「わかったで。しかし必要素材がほとんど〈バトルウルフ〉第一形態の素材やなぁ。在庫過多でどうしよか思ってたんで助かるわぁ」
ま、その〈バトルウルフ〉からドロップしたレシピだからな。レシピはドロップしたダンジョンの素材が使われることがほとんどだし。
ということで、マリー先輩に〈ダッシュブーツ〉の注文をした。
個数はとりあえずギルドメンバー全員分。
足のサイズもその場で測った。この場にいないメンバーのカルアとリカに関しては、カルアは以前測ったので問題なし。リカは後で来るように言っておこう。
「みんなの身体のサイズはうちがしっかり保管しておくから心配せんでええよ」
今後も装備を作ってもらう事もあるため、全員に体のサイズも測っておくよう指示したところ、マリー先輩からなにやらイヤラシー答えが返ってきた。
そんなこと言われたら困ります。気になってしまうじゃないですか!
俺が真剣な顔でマリー先輩を見つめると、ニヒニヒといった笑顔が返ってきた。
今日もマリー先輩はノリがいい。
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