第111話 レアボスのユニークスキル『爆炎尻尾薙ぎ』!
「バウッ!」
「ッ! 『ガードスタンス』!」
戦闘開始直後、今まで見たことあるモンスターの中で最も速い瞬発力で俺に接近する〈バトルウルフ〉第二形態にシエラの反応が少し遅れた。
レアボスはダンジョンランクで一つ上の
今まで
しかし、さすがシエラ、多少の動揺ですぐに気持ちを切り替えた。
「『守護の加護』!」
〈バトルウルフ〉がタゲを変えてシエラに突撃するのとラナのバフが掛かったのはほぼ同時だった。ギリギリ間に合った形だな。
「ガウッ!」
「くっ。重いわね」
今まで受けたことの無い衝撃に、シエラが苦い顔をする。
そう、レアボスって強いんだよなぁ。迫力もある。
俺も〈エンペラーゴブリン〉とやりあったとき、ガンガンやられたし。
おっと、見ている場合じゃなかったな。
俺も参戦しようっと!
シエラが『受盾技』で受け止めたところに俺はユニークスキルを使ってデバフを狙う。
「『
「ガウッ!」
狙い
『
「次は私が行きます。『プレシャス―――」
「ガウガウガウ!!」
「あ、待てエステル下がれ!」
大技の直撃に大きくヘイトを稼いだのか、尻尾が一気に赤くなる。
ユニークスキル『バトルウルフ流・爆炎尻尾薙ぎ』が来る。
周囲型範囲攻撃だ!
しかし、エステルが前に出てしまう。声を掛けたが、スキルを使いかけた嫌なタイミングだ。あそこから回避に移るのは難しいか!
「シエラ! 『カバー』エステル!」
「『カバーシールド!』」
俺の指示に何の疑いも無く、シエラが反射的に『カバーシールド』を使った。
素早い割り込みからの防御スキルだ。
『バトルウルフ流・爆炎尻尾薙ぎ』が来る直前、ギリギリのタイミングでシエラがエステルの前に割り込んだ。
「バウッ!!!」
「『ディフェンス』!」
直後、〈バトルウルフ〉が横一回転。
〈バトルウルフ〉を中心として膨れ上がった大きな尻尾がなぎ払い、ついでに爆炎が襲った。
俺は『ディフェンス』を使って防御の構えだ。
パリィするにはタイミングと熟練度が足りてないので出来ないが、狙いは別。
「きゃ!」
エステルの悲鳴が聞こえたが爆炎で視界が利かない。
だがエステルも高いVIT値と中級装備に身を包んでいる。たとえ直撃しても一撃でやられることなんてないだろう。ラナのバフもあるしな。
俺の〈天空の盾〉にも大きな衝撃が襲った。しかし、スキルのおかげで問題ない。ノックバックも無しだ。不思議と熱くも無い。サウナ程度の感覚。行ける!
このタイミングで仕掛けるぞ!
「『ソニックソード』!」
「バウ!?」
ユニークスキル発動後の硬直中は、クリティカルが入りやすい。
〈エンペラーゴブリン〉との対戦の手ごたえが、まだ俺の手に残っている。
あの時の感覚を思い出しながら、俺は爆炎を掻い潜って〈バトルウルフ〉に厳しい一撃を食らわせた。
俺が『ディフェンス』で耐えたのはこれが理由。耐えて〈ユニークスキル〉後の硬直中を狙うのが目的だった。カウンターだ!
最高の一撃、あの〈エンペラーゴブリン〉戦を思い出す手ごたえが手に響く。
クリティカルヒット! ダウンだ!
「今だ! 一斉攻撃!」
「『回復の――』。わ、ちょっと待ちなさい! ひ、『光の刃』! 『光の柱』!」
「『ファイヤーボール』! 『フレアランス』! 『アイスランス』!」
爆炎が晴れたかと思ったらバトルウルフがぶっ倒れてダウン中だった。
ラナは戸惑ったように回復しようとしていた手を止めて攻撃に切り替えた。
ハンナは最初から隙を窺っていたため即対応だ。
ハンナはこの周回で〈ウルフ〉相手に攻撃を当てるタイミングを計ることを覚えた。前のように無駄に当てようと連発せずしっかりと当てに行く技術を身につけつつあった。
魔法組の攻撃がダウン中の〈バトルウルフ〉第二形態に降り注ぎ、大きくダメージを稼ぐ。
俺も通常攻撃で出来るだけダメージを与えた。
〈ダン活〉では大きな弱点ヒットやクリティカルヒット、その他複数の理由でダウンが取れる仕様だった。するとワンモアタイム、つまりこちらのターンだ。
このダウン中でさらにクリティカルを決めると、気絶耐性の無い相手ならスタンが取れる。〈ダン活〉でのフィニッシュパターンの一つだ。
だが、ボスは大抵『気絶耐性』を持っているのでダウン中のクリティカルが入りにくいのが残念。
ダウン中だったボスがのそりと起き上がる。ダウン復活だな。
「シエラ、ヘイト取れるか!」
「ええ。大丈夫よ。『挑発』! 『ガードスタンス』!」
『バトルウルフ流・爆炎尻尾薙ぎ』を防御スキル『カバーシールド』で防いだシエラだったが、体勢が悪かったらしくエステルと折り重なるように倒れていた。こっちもダウンだな。スリップダウンだ。
本来なら仲間がダウンしたら即フォローが大切だ。ダウンするとボスの挙動が変わり、タゲがダウンしている仲間に向かうことがある。そうなると続けざまの追撃で戦闘不能になることが多い。こっちは逆フィニッシュパターンだな。
しかし、今回は〈バトルウルフ〉第二形態もダウンしていたのでピンチにならずに済んだ形だ。
シエラとエステルもダウンから復帰して戦線に帰ってきた。
今回大ダメージでヘイトを大きく稼ぎ、タゲがシエラから俺に移ってしまったので再びシエラにヘイトを稼いでもらう。
〈バトルウルフ〉の
「す、すみませんでしたゼフィルス殿」
「ドンマイ! 今は気にするな、戦闘に集中しろ」
「は、はい!」
ダウンしたのが堪えたのかエステルが気にしているが、反省は戦闘後でも出来る。
俺としては初めてのレアボス戦、初めてのユニークスキル受ける側だったのだから仕方ないと思う。あんまり気にしないでくれ。
「『全体回復の祈り』! これ一度使ってみたかったのよね! やっと使えたわ! あ、あとこれもついでに使おうかしら、『生命の雨』!」
ラナが全体回復を使う機会が
だが楽しそうだ。いい感じにハジケてる。
エステルもあれくらいでいいんだぞ?
俺たちのHPが全回復したし、再び〈バトルウルフ〉がシエラに飛びかかった、戦闘再開だな!
「ラナ、『獅子』! エステル、攻撃連打!」
「任せて! 『獅子の加護』!」
「はい! 『ロングスラスト』! 『プレシャススラスト』! 『レギオンスラスト』ぉ!」
もうかなりダメージを稼いでいる。〈バトルウルフ〉のHPは残り半分も無い。
しかし、俺のデバフアイコンが消えかかっている。そろそろ効果が終わりそうだ。
ラナにバフを掛けてもらってエステルにデバフが消える前に畳み掛けてもらう。
一番ヘイトを稼いでいないのはエステルなのでガンガン行っても大丈夫だ。
「『シールドスマイト』!」
シエラも隙を見て攻撃を重ねてきた。タンクでもダメージが稼げるなら稼ぎに行く。上級者ならば当然のことだが、シエラは早くもそちらに足を踏み入れようとしているな。
俺も負けていられない。
「『
「ガウッ!」
タイミングを見計らっての一撃が綺麗に決まる。
デバフアイコンが再び発生し、大きなダメージに〈バトルウルフ〉がノックバックした。
足が止まり、若干ながら攻撃チャンス!
「『フレアランス』! 『アイスランス』! 『ファイヤーボール』!」
「いきなりね! 『光の刃』! 『光の柱』!」
「『シャインライトニング』!」
「ガガウ!」
いい感じだ! ラナもバフと回復を回しながらチャンスを窺っていたらしい、しっかり攻撃を放っている。文句も言っているがこれはスルーだ。
俺もついでに魔法で追撃しダメージを稼ぐ。
その後は〈ユニークスキル〉を放ってこなかった〈バトルウルフ〉第二形態。
あの必殺技さえなければ安定して戦える。
噛み付き、切り裂き、通常尻尾薙ぎ、突撃など多くの攻撃を仕掛けてきたがシエラの硬いステータスを突破できず、ヘイトも上手い具合に稼いで終始シエラが抑えていた。
もうそろそろ〈ユニーク〉が来るか? と警戒したままそれが続き、気が付けば〈バトルウルフ〉のHPは危険域に突入していた。
「エステル。トドメ行っていいぞ」
「はっ! 行きます、『ロングスラスト』!」
「ガゥ…ウゥ……」
先ほどの汚名返上とばかりにトドメの『ロングスラスト』をエステルが放つと、とうとうHPは0になり、〈バトルウルフ〉第二形態は膨大なエフェクトを発生させて沈んで消えた。
そしてその
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