第70話 初ダンジョン攻略。〈姫職〉組のステータス。
シエラの活躍で俺の出番は消え去った。
いや、それで良いんだ。俺の出番なんて無い方が彼女たちのためだ。
でも少しくらい欲しかった。
「『挑発』!」
「ナイスですシエラ様! はっ『ロングスラスト』!」
シエラが大活躍している。
ヘイトが無事取れたのでエステルが槍を突き刺し、ボスのHPを大きく奪った。
「グ、ル、ル、ゥゥゥ!」
ダウンから立ち直った〈クマアリクイ〉が二足歩行で立ち上がり両手を振るってシエラを攻撃する。
それをシエラはパッシブスキル『受盾技』『流盾技』を駆使して捌いた。
上手いなぁ。
「『挑発』!」
隙を見てまたヘイトを稼ぐシエラの腕前は、つい先日
〈クマアリクイ〉の目は完全にシエラに釘付けなのでエステルは安心して攻撃できる。
「『ロングスラスト』!」
通常攻撃に加えクールタイムが終わったタイミングで再びスキルで攻撃、がっつりとHPを奪う。
やはり敵が1体だけだと安定していると感じるな。
あっちは大丈夫そうだ。
問題は先ほどやらかしてしまったラナだな。
「うぅ、どうしたらいいの……」
やはり経験不足が尾を引き、さっきやらかしたのも
気持ちだけ前に行き過ぎて見事にこんがらがっている。
活躍したい、支援したい、回復してあげたい。そう思っているのに、またやってしまったらと考えて腰が引けているのが手に取るようにわかった。
俺は安心させるように、ラナの若干震えて硬くなっている手を取る。
「あ」
「安心しろ。また失敗しても俺がフォローしてやるから。落ち着いて深呼吸するんだ」
「わ。わかったわ。すー…、はー…」
ボスの姿を俺の身体で遮って隠し、ラナの張り詰めた気を抜かせていく。
深呼吸させると、少しずつ肩から力が抜けてきたようだ。
「良し。上手いぞ。そしたら今まで覚えてきたことを少しずつ思い出すんだ。シエラがボスの攻撃を受けてHPにダメージを負っている。ラナのやることはなんだ?」
「……回復」
「そうだ。ならやってみるぞ。タリスマンを持て」
俺の声がだんだん理解できてきたのかラナに落ち着きが戻ってくる。
ラナは胸元にある翼が付いた形の〈慈愛のタリスマン〉を手に取ると目を瞑った。
「パーティメンバーを思い浮かべるんだ。その中でもシエラを想像しろ。HPが減り、傷ついている。癒せるのは【聖女】のラナしかいない。ラナの回復魔法で癒すんだ。やってみろ」
「うん! 『回復の祈り』!」
ラナがタリスマンを握りしめて祈ると魔法が発動した。
『回復の祈り』は小回復のみしかない魔法だ。だが【聖女】が使えば『継続』が付与されるため非常に優秀な魔法に化ける。
「よし、成功だ。目を開けてみろラナ。シエラに継続回復が掛かってるぞ」
「本当っ!」
ラナが目を開けてみた先には微弱に身体を発光させるシエラがいた。
シエラの傍に見えるHPバーには継続回復のアイコンがしっかりと表示され、シエラのHPは完全回復している。ボスの攻撃を受けて少しHPが減ってもすぐまた満タンになった。
「す、すごいわ…」
やっと【聖女】の力を実感したラナが感嘆する。そうだ、すんげぇんだよ【聖女】って。
もう後先考えず殴るだけで勝てちゃうんだぜ。(なんかすごそうだけど意味不明)
「だが油断しているとすぐ効果が消えるからな。アイコンが消えた瞬間かけ直す事。ほら、消えるぞ」
「うん! 『回復の祈り』!」
タリスマンを握って祈る【聖女】ラナの魔法が、またシエラを包んでいく。
よし、いいぞ。
ラナには今の感覚を忘れないように、ただ祈らせた。
今回はバフは無くてもいいだろう。一つずつ慣らしていけば良い。いきなりあれもこれもやらせると、さっきみたいに混乱するからな。
特に、前から勉強していたと思われる二人とは違い、ラナは本当に素人だ。
ゆっくりやっていこう。
前線は非常に安定していた。
連携という面ではまだまだだが、シエラが突出して実力が高いおかげでエステルが慣れない両手槍を使っていてもカバー出来ている。
エステルは元々長剣を使っていたが、一念発起して得物を大きな両刃の槍に変えたためにまだまだ慣れていないし使いづらそうだ。
そのため俺が『
エステルは馬上で使うため片手で扱う槍も練習した事があると言っていた。しかし、両手槍は勝手がかなり違うらしい。
フィリス先生に【両手槍士】や【大槍士】の先生を紹介して欲しいと昨日相談したと言っていた。
話が逸れたが、初のボスとの戦いは最初こそ危ない場面もあったが、それ以降はシエラのカバーと活躍によって非常に安定して〈クマアリクイ〉を追い詰めていった。
「『シールドバッシュ』!」
シエラの放った『シールドバッシュ』、盾による突撃が〈クマアリクイ〉に決まる。
「グアァァァ…!」
「今よ、エステル!」
「はい! 『ロングスラスト』ォ!」
『シールドバッシュ』によってノックバックして隙をさらした〈クマアリクイ〉を見てシエラが容赦なく叫ぶと、後ろから両手槍を振りかぶったエステルが渾身の一撃を放った。
『ロングスラスト』は見事にクリティカルを取り、〈クマアリクイ〉はボス特有の爆発したようなエフェクトに包まれ、銀箱とドロップだけ残して消える。
「私たち、勝ったの!?」
「ああ。見事な勝利だ!」
ラナがバッと振り向いて確認してきたので親指を立てた。
「やったわね」
「やりました!」
俺のセリフを聞いたシエラとエステルがその場でハイタッチを決めた。二人とも満面の笑みだ。
そこに俺とハンナ、ラナも合流する。しかし、ラナはいまいち踏み込もうとしない。
普段は気が大きいくせに、さっきの失敗を気にしているようだ。
「ふふ、ラナ殿下もどうぞ」
「良いのかしら?」
「当然です。これはパーティで掴んだ勝利なのですから!」
「あ、そうね。ありがとうエステル。シエラも」
「どういたしまして」
問題ないと言わんばかりに手を上げる二人にラナは笑顔でお礼を言った。
そのままハイタッチする彼女たちを眺めていると、その動きが突然ピタッと止まる。
「「「あ」」」
そして三人が何かに気づいたように声を上げた。
その様子に俺も察した。アレが来たか。
そのまま三人は視線を合わせ、右手を出した。
「いい? せーので行くわよ?」
ラナの言葉に二人が頷くと、ラナが一瞬のタメを入れる。
「すぅ、せーの!」
「「せっ!」」
そして同時に開いた三人の掌には〈熱帯の森林ダンジョン〉攻略者の証がキラリと煌めいていた。
それを見て彼女たちに、また笑顔が咲く。
彼女たちにお祝いの言葉を捧げたい。
ダンジョン初攻略、おめでとう。
――――――――――
制限:〈INT+5 or RES+5〉
【HP 30/30→90/90】
【MP 20/20→210/210】
【STR 10】
【VIT 10】
【INT 10→60】
【RES 10→110】
【AGI 10→20】
【DEX 10→22】
【SUP 252P→0P】
【SP 17P→0P】
《スキル》
『幸運』
《魔法》
『回復の祈りLV1』『回復の願いLV1』
『獅子の加護LV1』『聖魔の加護LV1』
『守護の加護LV1』『耐魔の加護LV1』
『迅速の加護LV1』
《ユニークスキル》
『守り続ける聖女の祈りLV10』
《装備》
〈慈愛のタリスマン〉両手
『回復強化LV5』
〈聖女装備一式〉頭、体①、体②、腕、足
――――――――――
――――――――――
制限:〈STR+5〉
【HP 30/30→126/126】
【MP 20/20→80/80】
【STR 10→100】
【VIT 10→40】
【INT 10】
【RES 10→40】
【AGI 10→40】(+15)
【DEX 10→20】
【SUP 240P→0P】
【SP 17P→6P】
《スキル》
『ロングスラストLV5』『騎乗LV1』
『両手槍の心得LV5』
『幸運』
《魔法》
無し
《ユニークスキル》
未取得
《装備》
〈リーフジャベリン〉両手
『AGI+15』
〈姫騎士装備一式〉頭、体①、体②、腕、足
――――――――――
――――――――――
制限:〈VIT+5 or RES+5〉
【HP 30/30→228/228】
【MP 20/20→110/110】
【STR 10→20】
【VIT 10→100】
【INT 10】
【RES 10→40】
【AGI 10→20】
【DEX 10→20】
【SUP 240P→0P】
【SP 17P→0P】
《スキル》
『挑発LV5』『シールドバッシュLV1』
『カバーシールドLV1』
『受盾技LV5』『流盾技LV5』
『幸運』
《魔法》
無し
《ユニークスキル》
未取得
《装備》
〈鋼華メイス〉右手
『通常攻撃威力上昇LV5』
〈盾姫カイトシールド〉左手
〈盾姫装備一式〉頭、体①、体②、腕、足
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