第37話 ハイテクな古代のアーティファクト
「ほへぇ。兄さんどんな手を使ったんや?」
ダンジョンから帰り、その足で〈ワッペンシールステッカー〉を訪ねてマリー先輩に、レアドロップ以外の今日の戦果を見せたら、そんな言葉が返ってきた。
「ま、そこは企業秘密ってやつで。それで買い取りは出来ます?」
「全部はさすがに無理やなぁ。依頼しとった分は貰うとして、あとボス素材は全部欲しいわぁ。他はギルメンに聞いてって形やね」
「あいよ。あ、〈クマアリクイの大毛皮〉だけはこっちで使うから」
「えー、
「他の素材は全部売るんだからそれで我慢してくれ。その代わり量はあるだろ?」
「そーやけど、継ぎ接ぎって防御力低くなるんよぉ、一枚布の方が品質も上がるし耐久力も、それに見た目もよーなるんや。兄さん、売ってくれへんかぁ?」
「うーん、じゃあその素材で俺んとこのパーティメンバーの体防具作ってくれ。それならどうだ?」
「そんならうちらの
いやぁ、マリー先輩ってやっぱ話せるわ。
トントンと話が進んでいく。
交渉の末、ハンナの体装備作成はマリー先輩のギルドに全部任せることになった。
〈ワッペンシールステッカー〉にも【裁縫師】はいるとのことで一からのオーダーメイドも受け付けているらしい。
こんなことならさっきハンナと解散しなければ良かったな。
「夕食作らなきゃだから、後で持っていくね」と言ってハンナは寮に帰っていた。
明日の朝ハンナを連れてきて寸法やデザインを決めるということで話がついたので、後で会ったら話しておこう。
その後、今日集めた素材は一旦全部預けることになった。
明日には査定が出来るだろうとの事なので任せる。
そして今日の朝に預けた素材の査定を聞いた。
「これが査定額の一覧な。値段も精一杯勉強させてもろうたで。でこっちは引き取れない分のリストな」
マリー先輩が書類を二枚渡してきたので受け取る。
「…なるほど、思っていた以上に買い取ってもらえてるなぁ」
依頼の品を引いたら3割も売れれば良い方かと思っていたけれど、実際には8割強を買わせてもらいますと書かれていて驚く。
「うちらの横の繋がりでなぁ。誰から聞いたのか、【勇者】くんがうちのギルドに素材卸してるって話を聞きつけたみたいで3件くらい他のギルドからの打診も入っとるんや」
ああ、そういうことか。料理の素材とか鍛治系の素材なんかが軒並み買い手がついていた理由が分かった。
「仲介は〈ワッペンシールステッカー〉が?」
「ま、これはお近づきのしるしにってことでな、サービスや」
「そりゃありがたいなぁ」
「今後もうちを利用してくれるんなら今後の仲介もしたるで? これからは有料やけどな」
うれしい提案だ。
金額を聞くと、本当に手間賃程度の額だったのですぐに了承した。
他のところに売りに行く手間はリアルの方が大きい。ゲーム時代より時間管理が必要になるリアルだと時間の節約というのは大きな課題になると思われた。
これくらいの金額ならダンジョン行っていればすぐに取り返せるので問題はない。
「ほな、これが買い取り額。今回12万ミールな。例の装備のオーダーメイドの前金は引かせてもらってるで」
査定額に問題はなさそうなので了承するとすぐにマリー先輩がミールを入金してくれた。
ちなみに言い忘れていたが、学園ではミールのやり取りは電子マネーみたいなキャッシュレスの形で行なっている。外だと普通に硬貨なのだが、ダンジョン都市とも言われる学園だとやり取りする金額が大きくなりすぎるため〈学生手帳〉の機能でマネー精算ができるようになっているのだ。
また〈学生手帳〉は制服なんかと一緒に支給されていたものだ。見た目は電子化された生徒手帳。つまりまんまスマホだ。通称も〈スマホ〉と呼ばれていた。
基本、迷宮学園でのミールのやり取りは
少し話は脱線するが〈
学園の詳細から始まり、注意事項などの項目や学園でのルールなど普通の学生手帳の一面も持っているが、本命は別。
ミールのキャッシュレスから、学園のインフォメーションの通知、学園で起こった様々なニュースや時間割なども見れる。情報端末としての側面でも役に立つな。
あと、ゲーム内の学生がチャットをしている項目なんかもある。そこはヘルプのようなものだ。大体が会話を通じた補足説明みたいな感じなので俺はあまり見ていない。
またサブクエスト掲示板も整備されていて、ここから依頼を受注する事も出来るようになっている。
この〈
迷宮学園内でしか使えない設定だけどな。
迷宮学園にはこういったアーティファクトが使われた技法が数多くある、ダンジョンとかな。しかし、それはまたいつか紹介しよう。
閑話休題。
「こっちが買い取れなかった分な」
「おう、さんきゅ」
「ほな、まいどおおきになぁ。また明日来てな」
返却された余った素材を、ハンナから預かっている〈
寮に戻るとシャワーを浴びて、余った素材を整理しているとハンナが来たのでそのまま夕食にする。
なんだか最近、ハンナがここに入り浸っているのが普通の光景に思えてきたよ。
今日のご飯も大変美味しいです。
「ほい、昨日の稼ぎ、12万ミールだったから半分の6万ミールがハンナの取り分な」
「そんなに貰っちゃって良いの? ほとんどゼフィルス君が倒してたけど…」
「なんだ、いらないのなら俺が――」
「え? い、いるよ? いるから。うん。ありがとうゼフィルス君!」
食後、報酬を山分けするとハンナが多く貰いすぎ、みたいな事を言い出したのでお言葉に甘えて回収しようとしたら慌てて学生手帳を出してきた。な、いるだろ?
何故引いたよ、て…あ~……なんだっけ、こういうとき一度引くのが慎ましいんだっけ? いや、ちゃんと山分けはするからな?
ハンナの学生手帳に俺の手帳をタッチすると入金が完了した「ピロリン♪」という音が鳴る。
ずいぶんとハイテクな学生手帳だ。さすがは古代のアーティファクト。
明日ハンナをマリー先輩の店に連れていく事を話して、今日はお開きになった。
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