第13話 公式トップ・オブ・ジョブ・ランキング第一位
そこからの展開は混迷を極めた。
体育館に集まった全員がこちらを気にしているのだ、もはやジョブ計測どころではなかった。
学園長に許可を求められたかと思ったら、白衣を着たいかにも研究者っぽい職員が何人も現れて俺のジョブ一覧の前に陣取り血眼になってメモを取りはじめる。
普通ならなんだこりゃ、となる光景だが俺も昔通った道なので一つ頷いただけだ。
ジョブは、名前を見つけるのがまず難しい。
検索するにも名前が分からなきゃ探すことすら出来ないし、名前さえ分かればそこから発現条件を逆算出来るかも知れない。
その存在があるかもないかも分からないジョブを探すより、その存在が確認されているジョブの発現条件を探す方がよっぽど有意義なんだ。
未発見のジョブが多いのか研究員たちの興奮した声が聞こえてくる。
少ししてメモを取り終わった研究員たちが聴取を取ろうとしてきたが、さすがに学園長が止めた。
今はジョブ計測の時間なのでまた改めて時間を作るということで、悔し涙を流しながら研究員たちは退出していった。
うんうん、良いのが居るじゃないか。
【筋肉戦士】にうつつを抜かしているもんだからジョブの条件探しに積極的じゃないのかとも思ったが
全部をタダで教えてやる義理は無いが、【
そうこうしている間に体育館は落ち着きを取り戻しつつあった。
いや、次に俺がなんのジョブを選択するのかに全員の視線が集中しているだけか、妙な空気が俺の一挙手一投足まで見逃すまいとしている気がする。
後ろのシエラも何故か見定めようみたいな視線だ。
……いいだろう。
「さてゼフィルス君。これだけのジョブだ、選択には時間が掛かるだろう、ここは一度持ち帰り、十分に精査してみてはどうだろう。もちろん未発見のジョブも多い、我々も協力を惜しまないが……」
そんな中学園長が保留を勧めてくる。その意見はもっともだ。
俺だって〈ダン活〉始めた当初はジョブの選択肢に悩みに悩んだものだ。最後はフィーリングで行ったけどな。
ここまで多ければ選択に時間が掛かるのも当たり前、学園側は現在ジョブ計測の時間でスケジュール的にこの問題を早急になんとかしたいに違いない。
じゃあ、そろそろ選ぶとしようか。
「ご安心を、すでにジョブは決めてありますので」
さすがに学園長相手には畏まる口調を意識しつつ、大量のジョブ群の中からこの世界にきた初日には決めていたジョブを選択する。
ここまで長かった。
ゲームならここまで10分ほどしか掛からないのにリアル〈ダン活〉では二週間近くも掛かった。
ようやくここから〈ダン活〉の本番が始まるのだ。
そして俺がリアル〈ダン活〉に選んだパートナーは、
―――【勇者】だ。
『ジョブ:〈【勇者】〉を獲得しました』
アナウンスが流れる。
そしてジョブ一覧がクローズアウトしていき【勇者】の名前がズームアップされた。
これで俺は【勇者】になった。
ざわ……。
体育館がざわめきで揺れた。
その場に居る全ての人が俺の選んだジョブに注目していた。
「【勇者】……」
誰かが呟いた一言が何故かざわめきに支配された体育館でよく聞こえた。
そう俺は【勇者】を選んだ。
出現条件:〈①モンスター1000匹倒す。②職業未取得。③剣と盾を装備している。④人の命を助ける(クエストで達成)。⑤「主人公」のみ。〉
〈ダン活〉で最初に選べるジョブの中で【筋肉戦士】には及ばなくても
公式
本物の優良職っていうのはこういう物を言うんだぜ、と言わんばかりに。
衆人環視の中、数多くのジョブに目もくれず、躊躇も無く【勇者】を選択した。
「ありがとうございました。無事
「え、あ、はい。
呆然と動かない女性職員に先に礼を言うと、慌てて姿勢を正して祝いの言葉を送ってくれた。
心なしかハンナの時より言葉が丁寧な気がする。
フ、早速【勇者】の威光が耀いてしまったようだ。
強ジョブって素晴らしいな!
勇者と言えば昨今のラノベブームに押されてむしろ悪役という風潮がある。
しかし、ゲームでは未だ根強い人気を誇っている。
〈ダン活〉も大人気ゲームの需要にお答えして、当然のように1021職という大量の
むしろ【勇者】以上に何を置くのと言わんばかりに強力な性能を誇っているのが、この【勇者】だ。
別に使いたくなければ別の
何しろ〈ダン活〉には1021職も
しかし、最強を目指したいのならば、これ以上の適役はいない。
昔も今も。ゲームでの勇者は人気で強くて、1番だ!
だから俺は【勇者】を使う。
この、リアル〈ダン活〉の世界を【勇者】で楽しみ尽くしてやる!
そう、決意をした。
すると学園長が話しかけてきた。
「ワシからもお祝いをさせてくれ。
なんと!
学園長にまで祝いの言葉を貰えるとは、しかも困ったことがあれば相談にのってくれるというのはすごくありがたい。
学園長の発言に女性職員やシエラもびっくりし、体育館のざわめきがまた大きくなった。
「お心遣いありがとうございます。その時は是非頼らせていただきます」
「はは、うむ。精進したまえ」
学園長はそう満足そうに言うと移動し、壇上に上がると体育館全体にジョブ計測の再開を宣言した。
それにより、ようやく停止していたジョブ計測が動き出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます