好きだったんだけど・・・何か?

ひろきち

第1話 え?好きな人?

「なぁ萌」

「なに?」

「僕さ好きな子が出来たんだ」

「へ?」


高校生になって1年と少々。

いつもの様に部活終わりに待ち合わせしての帰り道。

私、石橋萌は幼馴染の日吉雄二と歩いていた。

見方によっては仲の良いカップルに見えたかもしれない。


私と雄二は家も隣同士で保育園から小中高と一緒に通ってきた所謂幼馴染という関係だ。

親同士も仲は良く家族ぐるみの付き合いで当然のことながら私と雄二も仲は良かった・・・いや、もしかしたら仲が良すぎたのかもしれない。


「だ 誰なのかな?好きになった子って?私も知ってる子?」


私は平静を装いながら雄二に訊ねた。

私はずっと雄二の事が好きだった。

いつも雄二だけを見ていた。

高校も雄二が川野辺高校を受験するって言うから頑張って受験した。

(本当は森下学園の方が近いし制服も可愛かったんだけど・・)

雄二も私に優しかったし、ずっと一緒に居たから気持ちは伝わっていると思っていた。

だから"好きなのは萌だよ"とか言って欲しいところだけど・・・違うよね雰囲気的に・・・誰なの好きな人って?


「2年から同じクラスの下北さんだよ。明るくて可愛くていいなぁ~って」

「そ そうなんだ。佐和なんだ・・・。それで・・・なんで私に?」


そうよ。なんでわざわざ私の報告するのよ。

まぁ彼女が出来たって事後報告されるよりは・・・いいかもだけど。


でも佐和・・・なんだ。

あの子は確かに明るくて可愛いし私よりもスタイル良いし(特に胸とか・・・)私も男なら惚れちゃうかもだよね。


「萌って下北さんと同じバレー部で仲もいいだろ?今度さ告白しようかと思ってるんだけどどうやって告白しようかなと思ってな」

「・・・それで私に相談を?」

「あぁどうすればいいかな?あ、下北さんって彼氏とかいないよな?」


多分居ないとは思うけど・・・それを私に聞くの?

でも私に聞くって・・・やっぱり雄二は私の事を異性として・・・恋愛対象には見てないってことだよね。

仲の良い遊び友達?それとも家族?


私はこんなに好きなのに・・・


「なぁどうかな?」

「・・・そ そうね。多分居ないと思うよ」

「そうか!よかった」

「う うん・・・」


何よ嬉しそうな顔して。

人の気も知らないで!


その後の会話は正直あんまり覚えてないけど多分・・・私の対応は素っ気なかったんじゃないかと思う。





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「はぁ・・・・・」


帰宅した私は制服のままベッドに寝転び雄二の事を考えていた。


"好きな子が出来たんだ" か・・・・


佐和は・・・確かにいい子だよ。

高校に入ってからの友達だけど、裏表ないしちょっとおバカなところはあるけど誰にでも優しいし、舌足らずな感じも可愛い感じしちゃうのよね。


顔が可愛いだけの嫌な感じの子だったら邪魔してやるところだけど・・・佐和なら・・・


「・・・辛いな」


でも・・・どうして私じゃないの?

いつも一緒だったのに・・・私じゃ駄目なの?

あいつがショートカットが好きだっていうから髪だって短くしたのに・・・

もうイライラする!!


「あぁ!!もう!!雄二のバカ!!!」


「誰がバカだって?」

「ふぇ?雄二?何でここに居るのよ?それに人の部屋にノックもしないで」


部屋の入り口に雄二が居た。

何?ここ私の部屋なんだけど?


「ノックはしただろ。まぁ返事が無いからって入ってきたのは悪かったけどさ。

 いきなり人の事を大声でバカ呼ばわりしてたら気になるだろ」

「・・・そ そう(そんな大声で言ってたの私)。そ それよりなんの用事よ」


高校生になってから私の部屋に来ることなんてなかったじゃない。

まぁ私が雄二の部屋に上がり込んでゲームしたりすることはあったけどさ。


なんて思って雄二を見ると何やら物珍しそうに私の部屋の中を見ている。

こら!女子の部屋の中をジロジロ見ない!


「こ この間借りた漫画を返しに来たんだよ。おばさんに渡して帰ろうかと思ったら部屋に居るから上がってきなさいって」

「そ そう・・・」


多分、私の気持ちを察してくれているお母さんが気を利かせてくれたんだろうけど、雄二は私じゃなくて"他"に好きな子が居るんだからもういいのよ。

そう・・・もういいの。


「あ、漫画ね・・・うん。ありがと。そこ置いといて」


そう言いながら机の上を指さすと雄二は持っていた袋から本を取り出し机に置いた。

そして、私から視線を外す様にしながら雄二が話しかけてきた。


「あぁ。それから・・・」

「なに?」

「その・・・何だか悪かったな」


ん?何の謝罪?


「何?悪かったって」

「さっき下北さんの話しをした後、何だか機嫌悪そうにしてたからさ。何か僕が気に障るような事言ったんだろ?」


間違いじゃないけど・・・どうして私が機嫌悪そうにしていたかは・・・気が付いてないんだよね。

"バカ雄二"

本当、鈍感なんだから。


つい雄二を睨んでしまった。

私の視線に居心地が悪くなったのか部屋を出て行こうとする雄二。


「待って」

「な なんだよ」

「佐和との仲・・・取り持ってあげるよ」

「え?」

「ほ ほら雄二も言ってたでしょ。私、佐和とは仲いいし」

「いいのか?」


うん。仲が良いから余計に辛いんだけどね。

でもそれで雄二が喜んでくれるなら。幸せになってくれるんなら。


「今度、佐和とデート出来る様にしてあげるからさ。萌様に任せときなさい!」

「あ あぁありがとう。よろしく・・・頼むな」


そう言いながら雄二は何とも言えないような表情で部屋を出て行った。


・・・お人好しだな私。

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