GO!GO!マイロード!

雪見なつ

第1話

 ブロロロロロ……。

 荒野を一つのバイクが走っている。サイドカーにはぐったりとペットボトルの水を飲む女性が座っている。運転しているのは平均的な体躯の男。ゴーグルをつけてた風から目を守っている。

 彼らはラスベガスへと向かっている道中だ。

 道はヒビ一つないコンクリートだが、周りは自然に囲まれている。自然というのは森というわけではない。人の手がつけられていない景色のことだった。何もない岩岩と枯れた大地が広がっている。所々に草が生えているが、その草達も元気が見えずなんとか生きている状態なように見える。

 そんな道を彼らは二時間近くバイクを走らせている。

「まだなの〜?」

「まだまださ」

 女が駄々を捏ね始めるが、男は軽く流す。男もこの何もない大地に飽きを感じ女と同じ感情を持っている。でも、女の我が儘っぷりに腹を少し立てた。

 二人はこれが初めてのラスベガスだった。初めは気合を入れて早朝の四時に家を出たのだが、お昼が近くになるにつれ気温が上がって今の状態になった。

 出る時は綺麗に着飾っていたドレスやタキシードも道中で脱いで、鞄に詰めサイドカーの後ろに積んでいる。今の二人はほぼ下着姿。男はシャツとパンツだけ、女はTシャツとパンツ。この二人がラスベガスに向かっていると、今の外見でわかる人はいないだろう。

 道中、通り過ぎるトラックの運転手は二人を見て苦笑いをしたり、大笑いをしたりとたくさんの反応をしたが、二人はすれ違う車の運転手など見ていないので気づいていたいない。なんと滑稽な様子なのだろうか。

「早くカジノに行きたい〜」

「そんなん言っても道は短くはならないだろー」

 二人の前には端の見えない道が続いている。地平線をこんなに長く見続けているのは人生で初めてのことだった。それは二人の気力を奪っていった。

「なんか面白いこと言ってよ、ダーリン」

「おいおい、そんな無茶振りはよしてくれハニー。ここまで来るのに全て話してしまったぜ」

「もー、ダーリンの意地悪。もう知らない」

「そんなことを言わないでくれよ、ハニー」

 男は心の中で大きな溜息をついた。それを表に出すと女が本当にヘソを曲げてしまうので隠さないと行けないのだ。男はそんなことを考えてまた隠れて溜息をついた。

「ダーリン。早くラスベガスに行きたい」

「今向かっているでしょ」

 ムーっと頬を膨らめせる女。女の顔は悪くないのでそこそこ可愛い。

 男は仕方なく、優しく返す。

「なら、スピード上げるか」

「わーい。やったー」

 露骨に喜ぶ女に、男の機嫌も上々だ。

 男は一度減速をした後、クラッチを踏んでギアを変えた。

「飛ばすぞー」

 男は右ハンドルをグイッと捻って、エンジンを蒸した。

 バイクはどんどんスピードを上げて、荒野のコンクリートロードを真っ直ぐに駆けていった。

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