第41話 招集命令
それは査定大会から6日後のことだった。
「馬の足音が近づいてくる」ヴォンが耳をピクピク動かしながらいった。
「ロンドルじゃないの?」キトの言葉に首を横に振った。
「違う。山道の方から聞こえるしモココはあんな精悍な足音は出せない。姫、一旦ここを離れよう」
言い終わると同時にヴォンは鼬熊に化けて背中にキトを乗せると、茂みの中に入っていった。
それと入れ違いで巨大な馬が姿を現した。背中に軍服姿の男が乗っている。向こうもワネを認識したようだ。
目の前まで来て馬がいななきながら止まった。ワネは片膝を着いて上官への敬意を示した。
「ワネか!」馬に乗った男が尊大な口調で訊いてきた。
「はい、ワネであります」
「お前にベッチャ大尉直々の招集命令が来ておる!しかと受け取れ!」
そう言って兵士は一枚の封筒を差し出した。かしこまった態度のままワネは受け取り、その場で封を開けた。
男が言った通りの内容だったが、驚いたのはこの招集状を読み終わり次第すぐに城に来るように、と記されていたことだった。
「読んだか?ならば私の後ろに乗れ!」兵士も招集状の内容を知っているようだ。
「え、いや、まだ準備が・・・」
「早くしろ!」兵士が有無を言わさぬ口調で言った。
ワネは兵士の後ろに乗り、クドラ山を下りていった。
◆◇◆◇◆◇
「ロンドル、今日は来るかな?」
キトが不安気にヴォンに話しかけたが、何も言えない。
ワネが姿を消してからもう5日経過していた。クドラ山の中はくまなく捜した見つからない。
ロンドルも「何か情報がないか、城に行ってくる」と山を下りてから2日経っている。
「ヴォン、我たちも山を下りてみるか?」
「ワタシ達が町に行ったところでどうすることも出来ないだろう」
その時、ヴォンの耳がピクピクと動いた。
「馬がこっちに向かってくる!これは、モココの足音だ!」
「ロンドルが帰ってきたんだ」キトが弾んだ声を出した。
ヴォンの言ったとおり、ロンドルが戻ってきた。しかしその顔は青ざめているのが遠目からも分かる。
「ロンドル、どうした、何があった?ワネは?」
モココから下りるロンドルにキトが矢継ぎ早に質問をした。
ロンドルは二人を交互に見てから口を開いた。
「ワネが捕まった。罪状は国王の暗殺未遂らしい」
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