第27話 のんびりサバイバル

 リーアンがこの島を去って15日が経過したけど、未だに帝国の調査隊はやってきていない。

彼らは船で来るのだから時間がかかるのは仕方がない。

空を飛ぶワイバーンのようにはいかないのだ。

のんびりと島の開発をしながら、創造魔法に明け暮れる毎日を過ごしたおかげでレベルはだいぶ上がった。


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創造魔法 Lv.9

MP 776/776

食料作製Lv.5 食料作製時間9%減少

道具作製Lv.5 道具作成時間9%減少

武器作製Lv.2 武器作成時間3%減少

素材作製Lv.5 素材作製時間9%減少

ゴーレム作製Lv.4 ゴーレム作製時間7%減少

薬品作製Lv.2 薬品作製時間3%減少

その他――


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創造魔法全体のレベルは9に、素材作製とゴーレム作製も上がった。

インフラ整備のための建設資材と作業員であるゴーレムを増やした結果だな。

今やイワオは5号まで、ゴクウは4号まで、シルバーも2号までいる。

新しく猟犬型のゴーレムも作製できるようになった。


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作製品目:メタルゴーレム 犬型(小)(Lv.1)

カテゴリ:ゴーレム作製(Lv.5)

消費MP 320

説明:ハウンド型のメタルゴーレム。狩猟特化型のゴーレム。俊敏な動きと鋭い牙で獲物に襲い掛かる。 番犬としても役に立つ。

作製時間:49時間

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 このゴーレムを作れるようになった瞬間に作製を開始した。

戦闘力という点では他の三体を上回るからだ。

ボディーガードとしても役立つし、肉だって獲ってきてくれる一石二鳥のゴーレムなのだ。

見た目はメタルでできたジャーマンシェパードという犬みたいな感じだった。

きっと役に立ってくれると思うぞ。

もっとも、戦闘力は高いけど作業とかは全然できない。

せいぜい前足で小さな穴を掘るくらいだ。

ほとんど犬と変わらなかった。

名前はワンダーにした。

ワンダーはすでに2号まで作製済みだ。

常に一頭は側にいてもらいたいからね。

 薬品作製も2にレベルアップした結果、造血剤と痛み止めを作製できるようになった。

畑のジャガイモも育ってきて、もう少しで収穫ができそうだ。

ナス、キュウリ、ピーマンもいい感じに実り始めた。

特にピーマンは育ちが早くて、もう収穫は始まっている。

味も上々だ。

ただ、トマトだけは雨に当たったら実が割れてしまった。

育ちも悪い気がするな。

この土地には向いていないのかもしれない。


「ワン! ワン!」


 猟に出ていたワンダー1号の声が微かに聞こえてきた。

ワンダー型は他のゴーレムと違って声を出すことができるのだ。

そうは言っても人の言葉を喋れるわけじゃなくて犬の鳴き声が出せるだけだ。

きっと猟や番をする時に、威嚇や伝達の手段としてついている機能なのだろう。


「何かあったのかな?」


 ワンダー1号にはシカやヤギなどを狙うように言いつけておいたけど、ひょっとして手ごわいイノシシなどと交戦中なのかもしれない。

ワンダー2号、ゴクウ1号~3号までについてくるように言いつけて、シルバー1号の背中に飛び乗った。

俺の乗馬の腕も随分上達したのだ。


「ワンダー2号、先に行って1号を手伝ってやれ!」


 命令を聞くと2号は駆け出していく。

その背中を追いかけて俺たちも急いだ。



「ガウウウウ!」

「ワン!」


 ワンダーたちの威嚇の声が響いている。

まさか、モンスターが現れたわけじゃないよな? 

槍は持ってきているけど、いざ戦闘になっても俺は役には立たないと思う。

もしもモンスターがいたらシルバーに乗ったまま走って逃げようと考えた。


 俺たちが到着すると、ワンダーたちは1頭のヤギと戦闘中だった。

かなりでかい個体だ。

そばにはもう一頭ヤギが倒れていてこちらはすでに絶命しているようだった。

喉笛から出血していることから見てワンダーが倒したのだろう。

戦っているヤギも右後足から出血していたけど、一生懸命角をふるって応戦している。

モンスターではなかったことに一安心して、俺はヤギをよく観察した。

角は生えているけどどうやら雌みたいだ。

パンパンに膨らんだ乳が揺れていた。

近くに子ヤギを探したけれども、もう逃げてしまったようだ。

多分、子ヤギを逃がすためにワンダーと戦ったのだろう……。


「ワンダー、殺すなよ!」


 別に憐憫(れんびん)の情が動いたわけではない。

生け捕りにしたかっただけなのだ。


「ゴクウたち、これでヤギを取り押さえろ」


 3体のゴクウにロープを渡して、自分は高見の見物を決め込んだ。

ワンダーとゴクウは数の力でヤギを追い込んでいく。

やがて、疲労困憊したヤギの背中にゴクウ2号が飛び乗り、首にロープをかけた。

不思議なものでロープで首を縛り上げるとヤギはおとなしくなってしまった。


「よしよし、ゴクウたちヤギの脚をしっかり押さえつけておいてくれよ」


 収納袋から肌身離さず持ち歩いている傷薬と包帯を取り出した。

動物実験をするのにはちょうどいい。

おっかなびっくりヤギの脚に薬を塗ってやり、包帯を巻いていく。

ヤギには魔力がないから、人間に使うほどには効き目はないだろうが、それでもかなりの効果は期待できる。

治療している間、ヤギはおとなしくされるがままになっていた。

可愛い顔とは言えなかったけど、真っ白でどこか愛嬌はある。


「お前の名前はコユキにしよう。どうだ、歩けるか?」


 ロープを引くと抵抗もせずにヒョコヒョコと傷めた足をかばいながら歩き出すではないか。


「大丈夫みたいだな。無理をさせないように、ゆっくりと岩屋まで連れてきてくれ」


コユキのことはゴクウに任せて俺は一足先に戻った。


 岩屋へ戻った俺は道路整備をしていたイワオたちを呼び戻して、適当な場所に杭を打たせた。

コユキを囲うための柵を設置しなくてはならないからだ。

こうした力仕事はイワオたちにやらせて、細かい大工仕事はゴクウたちが請け負う。

コユキが住む家畜小屋の基礎工事もその日の内に終わらせた。

今後は動物の世話をするゴーレムも必要だな。

ゴクウたちは畑仕事もしているのでフル稼働だ。

調査隊が来る前にもう2体くらい作製しておいた方がよさそうだ。

ヤギの肉だけでなく、ミルクも取れるし、畑の野菜も収穫が上がりつつあるから食料は十分に確保できている。

今週はゴーレム強化週間にしようと考えた。



 コユキを捕獲してから食料事情が劇的に良くなった。

定期的にミルクが取れるのがでかい。

自分一人では飲みきれないほどの量が搾れるのだ。

乳しぼりは最初こそ楽しかったのだが一日で飽きて、次の日からはゴクウ3号の仕事になった。

クリス様やセシリーのだったら飽きないのにな……。

ミルクは低温殺菌してから密閉容器に入れて川に沈めてあるのだけど、早く飲まないと傷んでしまう。

魔法を使ってチーズにしたり料理に使ったりしているけど、使いきれていないのが現状だ。

保存をよくするために砂糖を入れて煮詰め、練乳を作ったりもした。

これは飲み物やかき氷を食べる際に役立つ。



 ゴーレム強化週間にゴクウタイプはさらに数を増やし、今では6体になった。

手先が器用なので一番汎用性が高いのだ。


 その日は、ランチの後に水だしコーヒーとヤギのミルクで作ったアイスカフェオレを飲んでいた。

創造魔法を使えば氷も作り出せるので飲み物はよく冷えている。

モンテ・クリス島は暑いので氷の需要は高く、しょっちゅう作っているのだ。

おかげで氷作製の個別レベルは3にアップしている。

パンのLv.5、ご飯のLv.4に続く作製練度で、レベルが上がった分だけ作製時間は減少している。

今やパンにかかる消費コストはMP2、作製時間も25%減少した。

食料作製のレベル補正も合わせると作製時間は34%も減少されるのだ。

かつては1時間かけて作っていたパンも、今では40分弱で作れるようになったわけだ。

この調子でガンガンいくぜ!


 ヤシの葉の間から南国の太陽が強い光を投げかけている。

こんな暑い午後は怠惰に過ごすに限る。

木製のリクライニングチェアに寝そべりながら飲むアイスカフェオレは最高だった。

練乳を使ってかなり甘めに仕上げてあるのだが、これが実に美味い。

ゴクウ4号に大団扇(おおうちわ)で風を送らせながら、南国リゾートを満喫していると、どこからかワンダーの吠える声が聞こえてきた。


「ワン! ワン!」


 また獲物を見つけたのか? 

乱獲は食料を減らしてしまうので禁止してあるはずなんだけどな。

ん? 

声は海岸の方から聞こえてくるな……。

はっ! もしかして、調査団の船が着いたのか?

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