第51話 魔除け石と転移陣
土龍が落とした
遺憾なく身体強化を発揮したふたりが掘り起こし、ウェドとリムが発掘された土龍の
「あと三個で終わりよ。頑張って」
もちろんソアラと小真希は、結界を張った安全地帯で昼食の準備だ。
腰が痛いやら何やらと、ぶつくさ言う元気も無くなったウェドとリムには、いい薬になっただろうか。。
無茶な過剰攻撃をやめて、ちょっとは落ち着けと言いたい。
「おっしゃぁ……終わりだ……」
全身脱力で、魔石の入った袋を引きずるリムとウェド。
土龍の
深い琥珀色の鱗は透き通って、そのままでも美しい。
両膝を着くように座り込んだ
薄い金属製のマグカップに露が浮いて、良い感じだ。
「ありがと……はぁ〜 キツかった〜」
よほど喉が渇いたのか、一気に飲んでお代わりを差し出してくる。
あんまり水ばかり飲むと、お昼ご飯が入らないかも。。
ホアンとミズリィは、汲んでおいた桶の水で泥だらけの手を洗っている。
お疲れ様と、ソアラが聖霊水を渡していた。
「これに懲りたら、過剰攻撃は控えなさいよね」
飛んで行ったソアラの注意に、
自覚があって、何よりだ。
作り置きのサンドパンを、各自に用意した携帯瓶の薬草茶で流し込む。
だいぶん温くなっているが、まぁまぁいける。
張り巡らした【探索マップ】に敵影は無い。けれど時間がくれば、容赦なく
ひとつ所に長居はしたくない。
早々に切り上げて、小真希たちは奥を目指した。
土龍の居た空間を突っ切って、進行方向へ急ぐ。
いつも利用している通路は、土砂で埋まっているらしい。
ただその代わりと言うか、正面の何もなかった壁の一部から、光が漏れているとホアンが促した。
近づくにつれて、嗅ぎ慣れた匂いに顔を顰める。
「モルネリ草? 」
魔除け草独特のきつい臭いで、息が詰まる。口呼吸でもひどい臭いだ。
慎重に近づいた細い岩の裂け目から、石畳の小部屋が見えた。
さっきの過剰攻撃で、隠し部屋への壁が割れたのだろうか。。
「……うぅ……気持ち悪い」
ますますキツくなる臭いに、ソアラがうずくまった。
「こんな所に隠し部屋? 嘘だろぉ……」
呟くミズリィの後ろから隠し部屋を覗いても、モルネリ草が生えている様子はない。
どうしてこんなに臭いのだろうと、タオルで鼻を押さえながら思う。
「あれ……魔除け石じゃないか? 」
薄緑の床を指して、リムが促す。
つるりとしたタイル敷きだ。
それよりも気になるのは、正面の壁いっぱいに描かれた複雑な紋様が、なぜだか蠢いていることで。。
線と絵文字のようなものが、白く光っている。
『モルネリ草の群生場所で、稀に生成される植物石を、敷き詰めています。強力な魔物除け石です。モルネリ草の根が密集した辺りで、吸収しきれなかった
ひとりだけ理解不能な小真希に、タイミング良くおまけのアナウンスが聞こえた。
大気中やら土の中に含まれる
それにしても、臭い。
「入れるように、岩を削るよ」
鼻を摘んで前へ出るウェド。
胡散臭い半眼で流し見る小真希に、ムッと口を曲げた。
「わ 分かってるよ。もぉ、コマキィはひつこい」
「あんたねぇ、加減しなさいよ。二度は無いからね」
横合いから入ったソアラの指摘に、ウェドは素直に頷く。
(相手によって、ものすごく態度が違わない? まぁね、ソアラは怖いけど)
半分は納得し、半分は不満な小真希だ。
ウェドの構えた長杖の
「消滅せしめよ【
ふわりと離れた竜巻が、勢いづいて壁を削り始めた。
削り取られた欠片は渦に吸い込まれ、クルクルと回転し一塊になる。
「おぉ、器用ね」
大技しかぶっ放せないお子様かと思っていたが、案外器用だ。
広がった隙間は、人ひとりが充分通れる幅になっていた。
当然のこと先頭はミズリィで、殿はホアンが固める。
入り込んだ隠し部屋の床全体を、魔物除け石のタイルが覆っていた。
「ここまで厳重に防御して、何を隠しているんだ? 」
ミズリィの呟きに、小真希も頷く。
背後の割れた壁と左右の壁には、なんの装飾もない。
用心して身を寄せ合い、よくよく正面の蠢く紋様を見れば、紋様自体が壁から浮いて細かく振動していた。
「……転移陣だな」
位置を変えてまじまじと観察するミズリィの横で、憂鬱そうにホアンが口にした。
「あれと、そっくりだね。どう思う? ウェド」
触れないで観察していたリムが、確かめるように声を上げた。
「……いや、あれほど長距離ではないよ。これは一方通行じゃなくて、双方向に転移できるはずだ」
ウェドが指差した壁の下。
床になった部分に、複雑な文字が刻まれている。
「古代文字より古い、精霊語文字だ。読めない部分が多いけど、前後の文字から考えて、二点間の距離短縮転移陣だと思う」
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