第35話 格上の相手



廃ビルの廊下を走る。




足元を走る斬撃で、足場が崩れていく。


「どっわ」


咄嗟に受け身を取って、下の階に滑り込む。


(なんて威力・・・)



“ちっ、当たんねーのかよ”

“ひゃっはー”

“これ喰らったら、四/冥君になっちゃうん?”




「逃げたきゃ、逃げても良いぜ?・・・追いはしない」



しっかりと四冥を捕捉しながら、笠峰は話しかける。



「・・・俺個人は逃げたいが、使命なんでね」



使命?



「・・・ははは・・・ああ、お前もそんな『下らない物』に囚われているんだな」



「・・・自由・・・」



人間は自由に生きるべきなんだ。生まれも出自も縁故もしがらみも全て捨て去ってそう生きるべきだったと・・・死んでから後悔している。




「人間は自由に・・・か、お前は人間じゃあ無いだろ?」



・・・お前は『穢れ』、人間のふりをした偽物だ。



一閃、四冥の頬を掠める。



「黙れ」



笠峰誠司

怒りながらも、距離は詰めてこない。冷静に自分の距離のアドバンテージを理解している。


(はぁ、厄介)



どう考えても相手は自分よりも格上。ならば、頼るのは六畳家の『己起おこ』しかない。


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