第27話 夜守、下っ端の知識量
今夜は静かだ。
『穢れ』の気配も感じない。
いかに都会は『穢れ』が集まって来るからって、毎晩毎晩出没はしない。大きいのが月一回くらい・・・それでも、田舎の居土に比べれば格段に多い。
「今夜は暇ねー」
夜守の女、壬屋子はあくびを噛み殺しながら呟く。
「・・・」
四冥は、当たり前の様に自分に話しかけてくる存在を無視して通り過ぎようとするが、
「待ちなさいよ、六畳の弟子!・・・私にあんたの剣術を教えなさい!」
壬屋子は、逃してくれなそうだ。
こいつ、この間、上司っぽい人に怒られた件忘れたんだろうか?
「私は、死んだ先輩の分まで強くなって、皆んなを守らなきゃいけないの!」
彼女は泣きそうな顔で、そう語る。
(死んだ先輩か・・・)
『祓い屋』家業やってると、いつ死んでもおかしく無いよな・・・
四冥とて、同業者の死は多少同情する。
「その先輩の死体・・・ちゃんと焼いたか?」
「?・・・どういう事?」
何言ってるんだこいつという目で、四冥は見られる。
むしろ、こっちもびっくりした。
「なぁ・・・『擬態』って知ってるか?」
「・・・なにそれ?」
(知らない!?)
四冥は驚く。壬屋子はそれは何かと食いついて来るが、適当に話をはぐらかす。
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人間を喰った『穢れ』が、その人物に成り代わるのが、『擬態』だ。
そして、穢れに喰われる可能性が高いのは、より穢れに接触する機会の多い者である。
よって、祓い屋というのは『擬態』になりやすい。
だが、死体を燃やした場合、それを防げる。死体を燃やしたか聞くのは、『擬態』になる可能性が無いという証明のための祓い屋の常識だと思っていたんだが・・・
・・・知らない
“それ、四冥君だけの脳内設定ちゃうの?”
“ワイもその情報初耳やねんけど”
米どもが邪悪に騒ぎ立てている。
まぁ、何か意図があって、下っ端には、情報を伏せているんだろう。
四冥は頭を切り替えて、深く考えない事にした。
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