ハゲタカ(映画版)

【作品情報】2009年 日本 監督:大友 啓史


【あらすじ】

中国系投資ファンド「ブルーウォールパートナーズ」の劉一華が日本を代表する大手自動車メーカー、アカマ自動車の株式公開買付に名乗りを上げる。劉は記者会見でアカマ自動車への熱い思いを語り、一見友好的な取引に見えた。


アカマ自動車役員の芝野に諭され、日本に戻ったファンドマネージャー鷲津はブルーウォールのアカマ自動車買収に立ち向かうことを決意する。


劉の背後には中国政府系ファンドの強大な資金力があった。また中国政府には日本の技術力を自国に取り込みたいという思惑があった。

資金調達で圧倒的に不利な鷲津は劉にどう立ち向かうのか。


【見どころ】

NHKドラマ「ハゲタカ」の映画化。ドラマの四年後が舞台。原作は小説。専門用語が飛び交うごりごりの社会派ドラマだが、今どういう状況か、何が起きたらまずいのか、非常に分かりやすく演出されており、まったくの無知でも面白く観ることができた。

焦点は劉と鷲津の戦い、そして彼らを取り巻く人々の人間ドラマであり、キャラクターが魅力的で見応えがある。難しいと毛嫌いせずにぜひ観て欲しい作品。


【感想】※ネタバレ含

話題になった当時ははまったく知らなかった作品。

『烏鵲堂シリーズ』キャラデザ・イラストを担当くださっている長崎さんからスーツに眼鏡のイケメンがいるよ、と教えてもらい配信で視聴したのがきっかけだった。


投資や株やなんてまったく知らないのに、展開がわかりやすく演出されており、始終面白く観られたことに制作の創意工夫が感じられた。


一番魅力を感じたのは残留孤児三世の劉一華。玉山鉄二さんの端正な顔立ちとスーツに似合う長身、スリムなスタイル、中国人みのあるイケイケな態度と裏腹な子供じみたところのギャップがとても良かった。とにかくカッコいい。敵役の中国人をこんなにカッコ良く描いていることに驚きすらあった。名前の響きも良いね。

工場にやってきたときの黒いハーフコートに赤いマフラー、煙草を吸うシーンは最高にカッコ良くて何度も観てしまった。定番のストライプの派手目なスーツもいい。


劉は悪賢く人を利用するが、言ってることは案外間違っていなくて、残された人たちに影響を与えている。また、冒頭に登場する中国の寒村の風景とアカマGTに憧れを抱く劉少年の姿にグッときた。ちなみにあの風景は関東地方の某所らしい。自然な中国みがあって驚いた。


急にスラム街(設定では大手町あたりらしい?)で殺されるなんて・・・・・・もう言葉にならない。刺してきたのは中国政府の差し金なのか、物盗りもあんなに群がるのか。死にそうなのに誰も助けてくれないのか。いろいろびっくりしながらもあの場面は号泣した。

最期に電話したのが救急車じゃなくて鷲津だし。本当に純粋な男だった。

いやもうなんで死んだのかわからない。劉が活躍するスピンオフが観たいよ。


コメンタリーを聴いていると鷲津の深いキャラクターも理解できて、彼も好きになった。男の戦いの世界、ハードボイルドな映画だ。


しかし、今観ると、公開当時の日本はまだ勢いがあったのだろうなと切ない気持ちになってしまう。世界情勢がこれほど変化するとは思ってもみなかった。

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