ミッドサマー
【作品情報】2019年 アメリカ 監督:アリ・アスター
【あらすじ】
大学生のダニーは妹が両親を道連れに無理心中をしたことがトラウマとなり苦しんでいた。恋人クリスチャンの誘いで、友人マーク、ジョシュとスウェーデン留学生ペレと友にスウェーデンへ旅行へ行くことになる。ペレの故郷ホルガ村では90年に一度の夏至祭が開催されることになっていた。
遠路到着したホルガ村は森の中の草原という現実離れした風景が広がる。そこで白い服に身を包んだ温和な村人たちに迎えられ、滞在することになった。
土着の奇妙な風習に戸惑いながらも、ホルガ村の生活を共にするダニーたち。ある日、村の年長者の男女2人が崖の上から飛び降りる儀式に立ち会う。女性は即死、足を骨折して息のある男性は杵のようなもので顔をたたき割られ、息絶えた。長老はこれはホルガ村の死生観に基づく昔から続く文化だと説明する。
マークは文化人類学の論文を書く必要があるので、ダニーたちは村に残ることにした。しかし、イギリスからやってきたサイモンとコニーは異様な風習に恐れをなして帰ることにする。サイモンが一人で先に駅へ向かったという村人に、コニーは錯乱し、その後姿が見えなくなってしまった。
村の大切な木に立ち小便をしたマーク、村に伝わるルーン文字の聖書をこそり撮影しようとしたジョシュの姿が消えていく。
夏至祭のメイクィーンを決めるダンスに誘われ、参加したダニーは見事クイーンに選ばれ、祝福される。馬車で運ばれ記念の儀式を終えて村に戻ると、恋人クリスチャンが村娘と交配の儀式を行う様子を目撃し、ショックを受ける。
祭のクライマックスである9人の生け贄を火にかける儀式で、村人はクイーンとなったダニーに最後の一人を選ぶよう迫る。ダニーが選ぶのは誰なのか。
【見どころ】
スウェーデンの白夜の牧歌的な目映いばかりの情景は美しくも狂気を感じる。野原で遊ぶ白い民族衣装の村人たちは平和的にみえるが、どこか異様で、明るい映像の中で行われる凄惨な殺人がとてもシュールだ。恐ろしい方向へ淡々と進んで行く物語に、目が離せなくなることだろう。
ホルガ村の様々な場所で見られる宗教的な絵画がこれから起きることを示唆しているので注目して欲しい。当たり前に行われる奇妙な儀式の数々に、次は何が起きるのだろうと楽しみになってくる。
美しい情景の中に突然飛び込んでくるグロテスクなシーンに、ドキッとさせられる。遠景や上空からの独特なカメラワークは、視聴者が遠巻きに村の様子を見ているような気分にさせられる。この不思議な感覚を抱かせるカメラワークが見事だ。
【感想】※ネタバレ含
話題になっていたことは知っていたが、狂気の村のホラー体験というありふれた題材でもありずっと観ていなかった作品。観始めたら面白くて、長時間ながら飽きることなく一気に観終わった。
閉鎖的な村なのに、白夜と牧歌的な風景で明るい光の降り注ぐ世界というギャップが不気味さを強調している。公開自殺のような儀式、他人の感情に共鳴して叫ぶトリップした村人たち、何が原料か分からない飲みものや食べ物、消えていく友人たち。恐怖が迫っているのに戸惑いながら村に残り続け、ついには村の風習に染まり狂気に堕ちたダニーの笑顔が恐ろしかった。ダニーは村人から崇められ、悲しみに共鳴してもらえることが快感になってしまったのだろうか。
フォークロアを斜め読みしたような不思議なアイテムがなんともユニークだ。特に、メイクイーンになったダニーがラストシーンで着せられた花満載の衣装はもはやギャグのようだ。花をまとって呻くダニーの姿は滑稽ですらあった。また、村にやってきた異邦人たちの殺害方法も儀式的で面白い。
一番怖いのは、こんな異様な村の出身であるペレがアメリカで普通の生活を営んでいたということだろう。
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