まりなの日記・5【悲しみの中で】

3月24日・晴れ


三度目のカレと別れたアタシは、再びキャリーバッグひとつを持って旅に出た。


アタシとカレの間にできた赤ちゃんは、生まれてから数時間後に力尽きた。


旅に出る前に、宝塚のお寺さんへ行った。


アタシは、赤ちゃんの遺骨を祭壇に静かにおさめたあと、手を合わせていのりをささげた。


亡くなった赤ちゃんは女の子で、名前はまりよと命名した。


まりよ…


ごめんね…


こななやさぐれたママを許してね…


まりよ…


お寺さんにまりよの遺骨を預けた後、アタシはキャリーバッグひとつを持って再び旅に出た。


アタシは、JR宝塚線の電車に乗って三田駅へ向かった。


三田駅から神戸電鉄の電車に乗り換えて新開地駅まで下った。


夕方5時前に、神戸に到着した。


アタシは、カレとの思い出の場所・ハーバーランドに到着した。


港は、夕暮れの色に染まっていた。


モザイクガーデンでショッピングを楽しんだこと…


三ノ宮のおしゃれなカフェレストランで食べたあの人気メニューのこと…


など…


思い出すだけでも、切ない…


夜7時頃、JR神戸駅から山陽本線の電車に乗って、再び旅に出た。


電車が須磨海浜公園駅に到着した。


この時、あの夏の日のことを想い出した…


明石海峡に沈む夕日を背に、カレがアタシを抱きしめてキスをした。


カレは、力強くアタシを抱きしめた…


その時…


胎内にまりよを宿していた…


挙式披露宴・新婚旅行・新居が決まって、これからだと言うときに…


愛は…


あっけなく壊れたのね…


ねえ…


あの夏の日…


どうして、キスしたの?


ねえ…


お願い…


ホンマのことを言うてよ…


アタシは…


カレのことを…


本気で…


愛していたのよ…


まりよ…


ごめんね…


こんなやさぐれたママを…


許して…


座席に座っているアタシは、両手で顔を隠してくすんくすんと泣いた…


アタシは、震える声で研ナオコさんの歌で『夏をあきらめて』を歌った…

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