【そしてまた、愛が音を立てて壊れて行く…】

3月3日・晴れ


この日、アタシはより強力な決断を下した。


3月中に挙げる予定であった挙式披露宴をやめることにした。


カレと別れる理由は、アタシの一身上の都合である。


もうすぐ39歳になるアタシにとって、結婚なんかしんどい…


ひらたく言えば、アタシ自身の精神的な負担がより大きくなったから結婚やめると言うこと…


その元凶は、カレのギャンブル癖と金銭的なトラブルを抱えていることにあった。


この日の昼前であった。


工場の従業員さんがアタシに『この間、阪急園田の競馬場であんたのカレとよくにた男性を見かけたわ。』とチクった。


チクられたアタシは、その場に座り込んで頭を抱えた。


カレは、住之江競艇場や岸和田競輪場に加えて、大阪市内のパチンコ屋さんに出入りしていたことも発覚した。


カレは、どうしようもないヤドロクになってもうた。


さらにそのまた上に、頭の痛い問題があった。


アタシが自販機のコーナーでドリンクをのんでいた時に、男性従業員さんから凄まれた。


男性従業員さんは、アタシに『あんたのカレに貸したアイチューン(音楽プレイヤー)が質屋に入っていた…端末代の支払がまだ残っているのに、どないしてくれるねん!?』と怒鳴りつけた。


その後、アタシはボコボコにいて回されて顔に傷を負った。


もうダメ…


これ以上カレとドーセーしていたら…


危ないかもしれへん…


そして、その日の夕方のことであった。


顔に大きなバンソウコウを貼っているアタシは、キッチンでキムチ鍋を作りながら居間にいるカレを怒鳴りつけた。


「あんたね、次から次へと金銭トラブルを起こさないでよ!!アタシは思い切りブチ切れているのよ!!」


アタシに怒鳴られたカレは『悪かったよぉ…』と女々しい声で言うたあと、札束入りの茶封筒をアタシに差し出した。


「ぼくのことがキライならキライでかまんねん…これ…お別れ…胎内の赤ちゃんの養育費込みで5000万円…」

「ふざけるな!!あんたのせいで、アタシは(男性従業員さん)からボコボコにいで回されたのよ!!」

「分かってるよぅ…別れると言うけん、受け取ってほしいねん…」

「カネはろたらこらえてくれると思わないでよ!!アタシの胎内に赤ちゃんがいるのよ!!アタシの身体をグチョグチョに汚して、こぉはらませた罪は重いわよ!!」


アタシは、近くにあった調理器具でカレの頭を激しい力でいて回した。


カレとの同棲生活は、サイアクな形で破綻した。


最後に、カレがアタシに差し出した5000万円は受け取った。


けれど、アタシはカレを一生涯うらみ通すと決意したと記しておく。

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