【あの日・1~大阪北畠銀行猟銃立てこもり事件前夜】

昭和54年1月25日・晴れ


その日の夜のことだった。


明日は、学校の参観日であった。


学校の参観日があるごとに両親はひどい大ゲンカをしていた。


この日に限って言えば、両親の怒鳴り方がひどかった。


この日、父は夜の11時57分頃に帰宅した。


母は、イライラしながら父が帰ってくるのを待っていた。


帰宅した父が『ああ、疲れたしんどい。』と泣きそうな声で言うたけん、母がブチ切れた。


「あんたね!!こんな夜遅くまでどこへ行っていたのよ!!明日はまりなの学校の参観日よ!!こなな時間までどこでなにしていたのよ!?」

「何だよぉ…オレは東京の出張を終えて帰ってきたばかりでしんどいねん…」

「あんたね!!まりなの学校の行事ごとに逃げ回るのもたいがいにしてよ!!」

「あのな!!明日、本店の頭取が会議で来阪するのだよ!!上の人から頭取のお供をしなさいと命令されたのだよ!!頭取のお供ができたら本店勤務でええ役職もらえるのだよ!!まりなの学校の参観日はお前が行けよ!!」

「アタシはね!!上から明日朝イチに得意先の会社に行けと命令されとんよ!!部下が勝手なことしたけん、ドゲザしに行くのよ!!せやけん、まりなの学校の参観日には行けんのよ!!」


母は、プンとした表情で口をつむじ曲げにしてひねていた。


父は、母に背中を向けて座りこんだあと、いじけた声でブツブツといよった。


「何だよ!!何だよぉ…ここの家の家族はよってたかってオレを悪者にする気か!?…疲れて帰って来た亭主に『お帰りなさい。』と言えんのか!!フザケルな!!」


なんなのよあんたら…


ふたりとも、サイテー…


この時アタシは、ホンマは病院で間違えられたのでは…と思うようになった。

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