第38話、ハダカの王様
さて、浴場をどのように作るか。
責任者は土木局長だが、名乗り出て相談役におさまった以上、妥協はしたくない。
特に女性用はこだわりたい。
それと、ミルクスタンドだ。
「萌、浴場の出口にミルクスタンドを作ろうと思うんだけど、いいアイデアないか」
「そうですね。イチゴ牛乳は作れそうですが、コーヒー牛乳は無理そうですね」
「私、フルーツ牛乳!」
「いいぞ、自分達でレシピを考えてくれよな」
「萌、任せたわよ!」
「あと、美白効果のある植物知ってるか?」
「美白で有名なのは、ローズヒップかアーモンドオイルですね」
「やっぱりバラを栽培するのか……」
「ちょっと待ってよ、ローズヒップオイルって、種を集めてもほんのちょっとしか採れないのよ。
だから高いんじゃない」
「まさか、お風呂に入れようとしてたんですか?」
「ああ、みんなが喜ぶかなって……」
「保湿剤とブレンドして、貴族に売りつけたほうが儲かると思うけど」
「風呂は保湿剤だけで十分か……」
「そんなことするくらいなら、有料でマッサージでもつけたら。
同時にムダ毛の処理とかもするの」
「ムダ毛?」
「足とか襟足の毛よ。
実はね、孤児の子供たちができる仕事を探してるのよ」
「浴場の周りをバラ園にしてみるか」
「そこの世話とマッサージに子供たちを使ってよ。
子供っていっても10才以上よ」
「風呂の掃除とかも任せていいのか?」
「もちろんよ」
「美白オイルと、それを使ったマッサージを高額にすれば、子供の人件費くらいは確保できそうだな」
こうして、バラの花に囲まれた公衆浴場がオープンした。
プレオープンは、貴族と平民を分けて行ない、無料のオイルマッサージも公開し、宰相の娘さん他数名に体験してもらった。
美白オイルはまだ少し先である。
マッサージの指導は智代梨である。
経験者が智代梨しかいないのだ……
脱衣場には、この企画に賛同して、恩給の一割を提供した貴族の名前が列挙してある。
「あれ?王様の名前がないじゃないか」
「わしは、出す側じゃからな。
それでも、支出を減らすために、酒もやめたし質素に暮らしておるぞ」
「王様だったら、こんなところに来ないで、専用の風呂をつくりゃあいいじゃねえか」
「最初は、わしもそう思っておったよ。
じゃがな、どうせ作るなら、国民が全員で使えるような風呂を作れと申した馬鹿がおってな……」
「そのバカのおかげで、こうして王様と裸で向き合えるんだ。
そいつに感謝だな、あはは」
男湯はにぎやかだった。
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