第35話、風呂を作れって……やなこった

「ふう、何とか終わった。

みんなお疲れさん」


「無事、終わりましたね」


「今日の分、特別手当支給しますから、楽しみにしていてくださいね」


「「「ヤッターッ!」」」


「お取込み中のところ失礼いたします」


「なんだ、もう用はすんだはずだが」


王様の使いだった……


「そ、それが、城に風呂を作るようにとの勅命がございまして……」


「断る」


「国王陛下からの指示でございますので……」


「そう何度も、無理が通ると思ったのか?」


「しかし、貴族は国のために……」


「だから、こうして国民の生活が豊かになるよう、寝る間も惜しんで働いている。

ほかの暇な貴族にやらせればよかろう」


「全員が尻込みをしてしまいまして……」


「それじゃあナニか、魔王相手に死に物狂いで戦って、これだけ国民のために尽くしているのに、まだ、足りないというのだな」


「いえ、決してそのようなことは……」


「俺にやらせればいいといったのは誰だ」


「それは……」


「ともかく、俺たちは自分のことで手一杯だ。他をあたってくれ」


「そんな……」


ところが、後日、宰相から呼び出しを受けた。



「城の風呂づくりを断ったそうだが」


「ええ」


「貴族たるものが王家の要請を断るとは、どういうつもりなのだ」


「これを受けることにより、国民の声に応えることができなくなってしまいます。

国民の暮らしを守ってこその貴族だと俺は考えていますので」


「うぐ……」


「おれなんかよりも、もっと時間のある人が大勢いますよね」


「うぐぐぐぐぅ」


「あっ、宰相が受ければいいじゃないですか。

建築局を総動員してやりましょうよ。

相談役程度なら喜んでお手伝いさせていただきますよ」


「調子に乗りおって」


「調子に乗ってんのはどっちだ。

人んちの風呂に、ぞろぞろと入りに来ておいて。

それが気に入ったから城にも作れ……

冗談じゃない。ノウハウは提供しますから、自分たちで作ったらどうなんです」


「お前らは、国の支援金で食べているのだろう」


「支援金なんて、とっくに断ってますよ。

今は、あの家を借りてるだけ。

それも出て行けというなら出ていきますよ。

その代わり、魔王が現れても俺たちは関知しない。

それでいきましょう」


「何をいうか!」


「魔王は、城ごと吹き飛ばしましたが、あの程度で死んだとは思えない。

だからこそ、兵士たちとも連携をとってるんだ。

城が俺たちと縁を切るというなら喜んで出ていきますよ。

さあ、どうするのか返事を聞かせてもらいましょうか」

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